ソープに行って驚いたこと

まず最初に通されたのは、待合室でした。「ゴージャス!」当時、わたしが働いていたSMクラブにもプレイルームはありましたが、学生が独り暮らしするようなアパートの一室でした。室内にはX型の磔台が置かれて、壁の一面鏡張りにはなっていたものの、床は普通のフローリングだし窓に掛かっているのもオフィスにあるようなブラインドで、“それらしさ”はまったくなかった。事務所に至ってはもっと殺風景で、壁に渡されたポールにはコスプレ衣装がわちゃっと吊してあり、棚は一応は整理されているものの、ローションとバイブに装着する用のコンドームが大量に置かれていて、猥雑な生活感を帯びている。それに比べると、ソープランドの内装は、まぁ確かに古びてはいて昭和っぽくはあるもののそれなりに豪華な雰囲気。なによりも目を引いたのは、繊細見事な螺鈿細工のタバコ入れでした。中には、びっしりとタバコが入っている。

じっと見ていたわたしの視線に気が付いたのか、スタッフが「それはお客さんへのサービス用」と勝手に吸うなとばかりに釘を刺してきたのですが、なんとソープランドはタバコが無料で吸い放題とな――妙に印象に残ったそのことを、アラブ料理が食べ放題のドバイの砂漠上レストランでふと思い出したという、千夜一夜物語でございました。

Text/大泉りか