同僚と安心して働ける本当の理由

私の会社はリモートワークを推奨しており、週に1度だけ決められた日に出社すればいいだけで、それ以外の4日間は自宅で仕事をするようになった。すると、業務のこと以外でコミュニケーションを取る機会がほぼなくなる。文字だけのやりとりが多くなると、相手が何を考えているのかわからなくなり、依頼が遠慮しがちになったりとか躊躇するようになったりとか、心理的な距離ができてしまい、かえって仕事のしづらさを感じることが多くなった。

リモートワークが導入されてから一緒に働き始めたメンバーも複数名増えたのだが、話を聞いてみると「顔と名前が一致しない」「声がわからないので、Zoomで会議をすると誰が話しているのかわからない」といった仕事のしづらさを感じているようだった。私は今の会社で勤めはじめてから長いし、見知った方も多いのだけど、たしかに顔と名前が一致しない人たちと一緒に業務をこなしていくのは想像するとかなりやりづらそうではある。

出社できていた頃は、廊下ですれ違う同僚と雑談をしたりとか、忘年会をしたりとか、面倒であるのだが、その何気ないやりとりに自分が救われていたんだなと改めて思う。相手がどんな話し方をして、何が好きで、どんな風に休日を過ごしていて、仕事に対してどんな価値観を持っているのか、業務上での最低限のやりとりだけでは見えてこない面を何気ない雑談や意味がないと思っていた飲み会などから窺い知れていたからこそ、私は今までこの会社で仕事を続けてこれたし、安心して業務をこなせたんだなと実感する。

それは私が人とのやりとりがかなり多く発生する職種だからであり、元々人と話すことに対して苦手意識がないからしれない。でも、「飲み会に意味がない」とか「会社の人と仲良くなる必要はない」なんて、全く思わなくなった。少なくとも、私には大きな意味がある。業務がうまくいかずに悩んでいるとき、同僚のどうでもいい話に救われた。会社の人の悩みを聞いて「こんなに仕事ができる人でも、似たような悩みを抱えているんだ」と思った。些細なことかもしれないが、気持ちが軽くなる。決して自分ひとりでは得られなかっただろうし、プライベートでは解決できなかっただろう。

会社の人とのコミュニケーションや飲み会は、たしかに面倒臭いし無駄な面もある。価値観も趣味も合わない。でも、ひとつの人間関係であって、自分の人生に大きな影響を及ぼすものの一つで、助けられたことは何度だってある。家に籠って人間関係が希薄になってから一層実感するようになった。

私は、人に救われる。だからこそ、面倒臭いな~行くの辞めたいな~無駄なんじゃないかな~と思いながらも、あらゆる人間関係を大切にしたい。それは私があまり仕事ができなくて、コミュニケーションに頼っているだけなのかもしれないが……。

Text/あたそ

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