最終回:リアルな男女関係よりナンパ実況への承認を重視する男たち(5)

 社会学者・宮台真司さんへ「脱いいね!」に関するインタビューを行いました。
第1回の「自分はイケてるぞアピールからは腐臭がただよう…“見るに耐えない”コミュニケーション 」から、「クソアピールをやめることができないクレージークレーマー層の“認められていない”感」「濃密な対面関係を妨げる疑心暗鬼のコミュニケーション」「“なぜ知ってる?”疑心暗鬼を生み出すネットの危険」とご紹介させていただきました。

 第5回は「リアルな男女関係よりナンパ実況への承認を重視する男たち」について迫ります。
脱いいね! から、現在の男女が抱える性愛の問題までと盛りだくさんの内容です!

リアルな男女関係よりポジションを重要視する男たち
ナンパを実況しては瞬間恋愛も何もない!

宮台真司 脱いいね! Facebook フェイスブック 腐臭 アピール

―男女関係についての質問をしたいのですが、たとえばfacebookを使ってリアルの活動をより充実させている人たちはいいとします。
しかし、そうではなく、ネットの中だけで活動したり、たくさんいいね! されて嬉しいだけなど、リアルな男女関係や付き合いに結びつかないよいう人がたくさんいるように見受けられます。それについてはいかがでしょう?

宮台:リアルな男女関係に意味があるのかどうかが、そもそも問題です。
 たとえば、僕がナンパのスキルを教えた若い男の子の中に、ツイッターで「ナンパ実況」をする者がいます。

 実況といってもむろん多少ラグ(遅れ)があるのですが、さきほどこういう風にナンパして、耳元でこうささやいたら、こう反応して、今はホテルにいて…みたいなもの。これは、僕の教えをまったく理解していない例です。

 僕は、女性にアプローチしてバンゲ(番号ゲット)からセックスに至る過程を、ナンパの〈前半プロセス〉、セックスに至ってから(至らずとも)関係を構築する過程を〈後半プロセス〉と呼ぶことにしています。
かねて〈前半プロセス〉に問題を抱える男性が多く、ナンパ塾やナンパマニュアルは主にここに照準してきました。
その場合暗黙の前提として、そこに問題を抱えなければ特に問題ないという理解がありました。

 ところが、この15年ほど、〈後半プロセス〉に問題を抱える男性が次第に増えてきました。
その流れで最近では〈後半プロセス〉に問題を抱えない若い男性がむしろ珍しくなりました。
 それに呼応して、若い女性の「性愛への期待値」が下がるという現象が拡がってきています。結果として、男女を問わず、セックス後の関係に踏み込む際に、過剰に自己本位的・自己防衛的になっています。

 僕は〈行きずりナンパ(内在系)から、瞬間恋愛(超越系)へ〉という理念を伝えようとしてきました。
行きずりナンパに実りはありません。友人だったライターの故・東ノボル氏のいう〈瞬間恋愛〉がなければ〈輝きに満ちた眩暈〉はありません。

 そのことを僕があれだけ伝えても、弟子たちがナンパ実況をしてしまう。これは良くないことです。
だって、それを見た女の子がいい気持ちになれるわけないじゃないですか。女の子を心から思いやる気持ちがなければ〈瞬間恋愛〉はあり得ません。

 ここに見られるのは、昨今ありがちな本末転倒です。
ナンパ自体を濃密にするために心を砕くのではなくて、ナンパを実況することが濃密なんですね。同性集団の中でボジションを保つためのアピールのほうが、彼らにとって重要になっています。
 あるいは、そうやって仲間に承認され、リスペクトされる自分というものを調達することが、達成感を与えるようになっている。
でも、そんな世俗的なものごとに囚われるような意識のあり方では、性愛の〈輝きに満ちた眩暈〉は得られません。

 僕は「ここへの拘泥」ないし「可能性への拘泥」の構えを〈内在系〉、「ここではないどこかへの憧憬」ないし「不可能性への憧憬」の構えを〈超越系〉と呼びます。
〈行きずりナンパから、瞬間恋愛へ〉は〈内在系から、超越系へ〉とも言えます。