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  • 2012.10.31

『スラムダンク』の赤木晴子は“カメレオン女”予備軍!?(3)

今回のテーマはご存知『スラムダンク』!

By Parker Michael Knight
©By buckeyekes

 “フツウ”すぎるがゆえに、マンガやアニメの中で不毛な扱いを強いられている登場人物たちを“フツコさん”と名付け、その恋愛パターンを勝手に想像するこの短期連載。

 第1回では『ヱヴァンゲリヲン』の伊吹マヤ、第2回では『魔法少女まどか☆マギカ』の美樹さやかを取り上げたわけですが、ワタクシ、とても反省しています。

 恋する女性をターゲットにしたwebマガジンでこのラインナップは、明らかに暴挙だったなって。
張り切ってボートを漕いだら沖に出すぎて、振り返ったら誰もいねえ! みたいな気分です。

 そりゃあツイッターで「邪道マーケティング」とか言われるよ!
その結果、女性読者もアニメ好きも取り逃がしたムードでいっぱいです。

 そこで、今回は心をあらためて、みんな知ってる国民的少年漫画『スラムダンク』を題材にチョイス。
赤木晴子が実は“カメレオン女”予備軍だったのではないか? という疑惑を考察してみたいと思います(“カメレオン女”の定義についてはこちらをご覧ください→ http://am-our.com/love/79/3848/

存在感の薄いハルコさんも実は“フツコ”だった?

 赤木晴子といえば、「バスケットはお好きですか?」と最初に桜木花道に声をかけ、すべての物語が動き出すきっかけを作ったキーパーソン。
花道が片思いをする“マドンナ”役として華々しく登場した……はずでした。

 ところが、圧倒的な白熱と感動を呼んだ物語全体を振り返ってみると、実は彼女の存在感はきわめて希薄です。

 ニブくてトロい天然癒し系でありながら、芯が強くて花道をそっと励ます猛禽キャラ。
『タッチ』なら浅倉南に匹敵するほどヒロインとしてのポテンシャルを持っていたにもかかわらず、次第にストーリーの本筋からはフェードアウト。
最終的にはとんだ凡女どまりの“フツコさん”で終わってしまうのです。

 これは、“恋愛”と“家庭”がほとんど描かれず、ホモソーシャルの美学を徹底して貫いた本作の構造のせい。
だからこそ『スラムダンク』は傑作になりえたとも言えます。

 しかし、ハルコが本作の実質的なヒロインになれなかったのは、彼女自身に“カメレオン女”としてのフツコ体質がしみついていたからではないでしょうか。

「流川楓親衛隊」は典型的な“カメレオン女”!             

By buckeyekes
©By buckeyekes

 『スラムダンク』に出てくる典型的な“カメレオン女”タイプといえば、「流川楓親衛隊」と呼ばれた流川ファンの女子生徒でしょう。

 初期メンバーだった3人をはじめ、最後まで名前すら与えられなかった彼女たちは、まさに生粋のモブキャラ。ナチュラル・ボーン・ザコです。

 その原因は、「流川命」の旗印のもと、誰かひとりが名前を名乗って抜け駆けしたり、キャラ立ちすることを許さない、メンバー内の同調圧力があったからに違いありません。

「アタシのこと、もっと流川クンに見てほしいけど……ヘタに動いてこいつらにハブられたら怖いしな」
「ホントは花道ってけっこうカッコイイかも……でもみんなの手前、アタシも嫌いなフリしちゃった」
「一応“流川推し”ってことにしてるけど、実はアタシ、木暮センパイが……」


 親衛隊の中にも、本当はこんな気持ちの子だっていたはず。
でも、“カメレオン女”は周りの目を気にして、こうした自分の欲求をおさえこんでしまいます。
それがデフォルトになっていると、いつしか自分の本当に好きな人さえ見失い、幸せを逃してしまうハメになるでしょう。


流川への気持ちは単なるミーハー心!?

 そう考えると、流川のファンを公言していたハルコもまた、周囲の“流川LOVE”なムードに流され、花道への気持ちを自覚できずにいる“カメレオン女”予備軍だった可能性があります。

 そう、“カメレオン女”は、周囲の評価に流されて、自分が本当に惹かれている男性を“恋愛対象”として自覚できないケースがあるからやっかいなのです。

 花道は当初、赤毛のリーゼントで、周りからも不良扱いされて怖がられていました。
そんな男に自分から話しかけるくらいですから、ハルコはもともと花道に対して“メスがうずいた”部分があったのではないでしょうか。

 でも、思春期の女子ってまだまだ自分の中の性欲やフェチズムに無自覚。
とりあえず、周りがキャーキャー言ってる“わかりやすいイケメン”を手っ取り早く好きになったりするじゃないですか。
ハルコも、半ばそういった“カメレオン女のミーハー心”から流川に片思いしていただけだったのではないかと思うのです。

無自覚なカメレオン体質は、さまざまな誤解を招く

 その一方で、花道に対する感情が“恋”だと自覚できていない彼女は、「バスケをがんばる花道クンを応援してあげる」という回りくどい方法で、自分の中のモヤモヤを満たそうとします。

 これ、ハルコが“花道の気持ちには気付いていない超ド天然”という設定だからいいようなものの、ですよ?
もしもあなたがハルコと同じ立場だったら、花道からの好意に気付かないわけありませんよね?
そのうえで花道にあんな態度を取っていたら、“バスケ部のために、自分への好意を利用して花道をやる気にさせている超絶猛禽”だと思われても仕方ないでしょう。

 それにもし、同じバスケ部の中にハルコのことを好きな男子部員や、花道のことが好きな女子マネがいたら、どうなるでしょうか。
思わせぶりなハルコの言動は周囲をやきもきさせ、下手をすればサークルクラッシャーにもなりかねません。

恋かなYES! 恋じゃないYES!

 さらに最悪なのは、たとえ花道が正面切ってハルコに告白していたとしても、彼女は「ごめん、そういうつもりじゃなかったんだ……」とか言って彼をフッてしまう可能性すらあるということです。

「花道クンへの気持ちは、別に“恋”とかじゃないし……」
そうやって自分に言い訳をして、本当の気持ちに無自覚で無頓着なままいると、周囲を不幸にするばかりか、ハルコ自身の幸せすら逃してしまうでしょう。

 彼女はそれでいいかもしれませんが、煮え湯をゴクゴク飲まされた花道や、周囲の人間は浮かばれないですよね。
「無知は罪なり」という言葉がありますが、無用のさや当てや生殺し、嫉妬を生むという意味で、恋愛においては「無自覚もまた罪なり」なのです。


 そうならないためにも、周りの色をうかがって自分の気持ちに嘘をつく“カメレオン女”になってはいけません。
あなたが放ったらかしにしているその気持ち、恋かな? それとも、恋じゃない?

Text/Fukusuke Fukuda

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ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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