『オラオラ女子論』で“フツウ”からの脱却を目指せ!(3)

“女子力”という名の強迫観念に押しつぶされていませんか?

オラオラ女子論 蜷川実花 祥伝社 Marcelle Lucena

 蜷川実花さんといえば、色鮮やかな花や金魚をモチーフにしたガーリーな世界観が特徴の写真家。
その作品はさまざまな場所でファッションアイコンとして使われ、女性から絶大な支持を集めています。 近年では、映画『ヘルタースケルター』や、AKB48『ヘビーローテーション』のPVなど、映像監督としても活躍の場を広げました。

 そんな彼女、実はバツ3で子持ちのシングルマザー。
今年で40歳を迎え、写真家として、女として、母としてさらに精力的に活動する彼女が、仕事、恋愛、子育てなどに関する持論を語ったエッセイ集が『オラオラ女子論』です。

「人生の大きなメインテーマは“いつまで現役女子でいけるのか”」だという実花さん。 本書ではのっけから「キレイにしないのは女として怠慢」だと言い切ります。

「せっかく女に生まれたんだから、女の部分でも勝負しないと」 「女だから出来ないこともあるけど、それを嘆くより女だから出来ることを考えたい」 「女であることを諦めた瞬間に女は終わります。ポイントは諦めないこと」 ……などなど、女性誌が喜びそうなフレーズが盛りだくさん。

 でも、“フツウでいいじゃん?”と思っている女性からすると、彼女のような生き方は少し息苦しく感じるのも事実です。
最近では“オトナかわいい”“美魔女”など、40代、50代になっても“女を下りる”ことを許されない風潮が世間に蔓延。
旧来の古くさい“女らしさ”を“女子力”と巧妙に言い換えただけの“女子力礼賛”ムードが強迫観念のようにまかり通っています。

「仕事と子育てはともかく、女性の部分までなぜちゃんと両立できているかというと、血反吐が出るほど努力しているから」

こうした実花さんの言い方は、ただでさえ負担の大きい女性の社会進出にさらなるハードルを課し、“それができない人は努力不足”という余計な重圧を生む危険も否定できません。

 しかし、今回はあえてこの本を、“フツウ”の恋愛を脱却するための「脱!フツウ」推薦課題図書として、みなさんにご紹介したいと思います。

最大公約数は狙わない! 蜷川実花も実はニッチな市場を狙っている!?

 もちろん、実花さんが本書の中で目指している“女子”とは、決して“男に欲情される女になる”ということではありません。
彼女のリードするファッションやトレンドが、男性よりもむしろ女性に支持されていることからもそれは明らかです。

 「絶対に媚は売らない。だって媚びてるのって格好悪いじゃん」という彼女は、むしろ王道モテの猛禽にはなりたくないタイプ。
男子ウケする服装を研究した結果、「やってらんねーよ、こんなダサい格好!」という結論に達したと言います(笑)。
「自意識が過剰すぎて、小悪魔的なワザは恥ずかしくて全然出来ない」という意味では、彼女もある意味で“邪道モテ”の人なのです。

 その証拠に彼女は、男子ウケという観点では本来0点であるはずの「金髪」をトレードマークにしています。
「子持ちだし、バツ3だし、蜷川実花だし、父は蜷川幸雄だし、経済力もネームバリューもある。モテるという角度から見たらそもそものマイナスポイントが多すぎる」とハッキリ自己分析をしている彼女は、“自分が最大公約数のモテを狙っても全然響かない”ことを自覚しています。
その結果、「私を受け入れてくれる人の市場では金髪が正解」という結論を導き出すのです。

「ないものをねだるより強いところを伸ばそう」
これってつまり、“自分のモテる漁場を自覚する”というテクニックそのものですよね。
“フツウ”とは、最大公約数の男ウケを目指すことにあらず!
真の女子力は、“なりたい自分を自覚して、そこに近付く”ことなのだと、実花さんは教えてくれているのです。