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  • 2016.10.31

支配されてるふりをして男を支配する女はかっこいい/作家・嶽本野ばらさんインタビュー

「支配されたい」という不思議な欲望、これは一体何なのか。代表作に『下妻物語』『ロリヰタ。』のある「乙女のカリスマ」として有名な小説家、嶽本野ばらさんにお話を伺ってきました。そもそも「支配」とは何なのか?支配・被支配の関係の逆転とは?最新刊『落花生』についても語っていただいています。

「彼に束縛されたい」「オナニーのオカズはレイプ妄想」などなど、実際にされたら嫌なのに(笑)、なぜか抱いてしまう「支配されたい」という欲望。

 私たちはなぜ「支配されたい」と思うのか。
「乙女のカリスマ」として私たち女性の生き様を描き続けている作家、嶽本野ばらさんにお話しをうかがいました。

女性の支配妄想は「支配」じゃない?

支配されたいの正体 嶽本野ばら 落花生

―「支配」って、そもそも何でしょう?

野ばら:「強制的な力」を行使すること。支配そのものは悪いものではありません。「強制的な力」とは「ルール」に置き換えてもいいのだし。従属させられる者がそのルールは不公平過ぎると怒る時、支配は悪になる。
ところが、女性は不利なルールで縛られるのを好む場合がある。その場合、支配・被支配の関係性が逆転する。

―女性がいう支配関係は、本来の支配関係とは違うんですね。

野ばら:陵辱されるのを妄想して楽しむのは、まさに支配・被支配の関係を反転させる現象です。ルールの盲点をついて、逆にルールを取り決めた相手を窮地に追い込む頭脳プレイ。一方的な「支配」を拒絶するのでなく利用する発想ですね。

 僕が考える「支配」妄想は全然違って。
僕が一番興奮するシチュエーションって、僕に何の興味もない、むしろ嫌悪感を抱いている女性のカバンの中に、彼女が知らない間に射精して知らんぷりをする…ってもの。

―一方的で、本来の「支配」に近いですね。なんだか男性的です。

野ばら:僕は、ゲイと間違われますが、性的にはストレートなんですよ(笑)。

支配したいから、支配されたい

支配されたいの正体 嶽本野ばら 落花生

野ばら:性ファンタジーは男性的だけど、女性の思考もよくわかります。

 もうこの年齢だから言ってもいいと思いますが、若い頃はすごくかわいかったんです。幼少期はおかっぱ頭だったし、男の子として見られることはまずなくて。中学高校に進んでも、私服が女性的だったこともあり、やっぱり女性に間違われていました。

 その当時は、ナンパブームで、ナンパして、ディスコとかに連れて行って、その後あわよくば…というのが若者のトレンド。そういう時代に街中に出ていくと、ナンパしようとしている男性の目にさらされるんですよ。

―野ばらさん自身が?

野ばら:そう。歩いていると、たくさんの男性たちが「あの子はヤレるかな?ヤレないかな?」と値踏みしていく。女性が男性を値踏みするときって、容姿だけじゃなくスペックや性格なども加味しますよね。対して、男性は「胸でかい!」「足細い!」などセックスに直結する視線を向けてくる。獣がターゲットを狙うような男性の視線に対する恐怖感や嫌悪感は、女性と同じように感じてきました。

 で、そういう視線にさらされている女性がどうするかというと、結局は居直るんです。

―居直る?

野ばら:性の対象として見てくれてもいい、その視線を逆手にとって生きていってやろう、という居直りです。
今は少し廃れてきましたが、すべての女子たちがアイドルになってやろうとするアイドルブームって、自分が性的対象として見られる状況を逆手にとって、おもしろおかしく楽しんでいこうっていう姿勢だと思うんです。

 つまりは、支配されているふりをして、男たちを支配する。
僕はそういう女性の生き方を、すごくかっこいいと思いますね。

「大麻に勝るものなし」

支配されたいの正体 嶽本野ばら 落花生

―では、最後に今回の書籍についてもお話しをうかがいたいと思います。

野ばら:最初、小説を出したいというお話しをもらっていたんですが、事情があってお断りさせていただいたんです。ただ、その後も「じゃあ、こういう企画で」と何度もご提案いただいて。
僕のほうでも、書き溜めたものがあったし、薬物依存に向き合わなければいけなかったので自分の考えをまとめておきたかったんです。だからエッセイとして出版することにしました。

―著書の「美しいものとして鑑賞されたい」って記述を読んで、野ばらさんも複雑な自意識を持たれてるなと思いました。

野ばら:他者を経由していますからね。でも、その「他者」って、「自分の外」にいる別の人間ではなく、結局は「自分の中」にいる人なんですよね。
だから実際に「美しい」と評判をたててほしいわけでなく、自分で自分を美しいと思いたいんですよ。

―では、野ばらさんが思う「美しさ」って何なのですか?著者のなかでは、危険ドラッグの使用を「美しくない行為」と書いてますよね。

野ばら:僕が考える「美しさ」って、絶対的な価値観、突き詰めると「黄金比」ですね。黄金比は絶対で、完璧なんですよ。
で、危険ドラッグの使用がなぜ美しくないかというと、本当は大麻が吸いたかったのに、危険ドラッグを使ったから。自分をごまかしてたんですよね。完璧なかたちではない。

 そこで自分をごまかさず、「やっぱり大麻に勝るものなし」って大麻を吸っていたら、それは美しい。

―整合性がありますもんね(笑)。
著書を読んで、野ばらさんは「なりたい理想の自分」がすごくはっきりしている方だなと思いました。

野ばら:若いころから「かわいいでいたい」とはずっと思っていますね。僕も40代後半になったのでそうは言ってられないんですが、かわいいと言われようと努力してしまいますね。カメラ向けられると、無意識にかわいく写ろうとしたりして(笑)。

―でも、今回の書籍のポスターは、かわいいというより、かっこいいですよね。

野ばら:ですよね。だから、あれちょっと嫌なんですよ。
ポスターは何パターンか候補があって、僕はかわいいポーズでお洋服がちゃんと映っているやつが良かったんですが、編集さんが今のポスターのほうがいいって言うから。

―野ばらさんは「かっこいい」になりたいとは思わないんですか?

野ばら:これが難しくてね、僕にとっての「かわいい」が「かっこいい」になるんですよ。
たとえば、AKBにハマッたとき、僕はぱるるに対して「かっこいい!こんな女の子になりたい!」と思ったんです。もうちょっと若かったら、ぱるるの下で踊りたかった。

―女子なのに「なりたい」と思うんですね。じゃあ、逆に男性アイドルに対してはどう思っているんですか?

野ばら:やっぱり、すこしいやらしい目で見てる。男性アイドルが好きな他の女性と同じように。

―いやらしいって、「キスしたい」とか?

野ばら:性的にはノーマルだから欲望はわいてきませんが、妄想はしますよ。ジャニーズの子とか、意味もなく脱ぐじゃないですか。ああいうの見てると、すごくムラムラします。
男性は女性アイドルをいやらしい目で見ているといいますが、女性も男性アイドルをいやらしい目で見てますよ、言わないだけで。

―たしかに見てます(笑)。野ばらさんは「かわいい」に自分がなりたいと思うタイプですが、恋愛対象には何を求めるんですか?

野ばら:張り合えることですかね。同じ価値観を共有できること。でも、興味が一致してるから、ラスト1着のお洋服をどちらが買うかでもめたりするんですよね。

 恋愛では自分にないものを求める、なんて人もいますが、僕は自分にあるものを求める。結局、自分しか愛してないんでしょうね。

 だから、自分に興味がない人のバッグに射精するって妄想に、一番興奮するのかもしれない(笑)。

嶽本野ばら
作家・エッセイスト。代表作は映画化もされた『下妻物語』。「乙女のカリスマ」としてロリータカルチャーを牽引。最新刊は『落花生』
ツイッター:@MILKPUNKSEX

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嶽本野ばら『落花生』

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