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  • 2016.03.08

面食いならそれでいい!他人の評価に自分をゆだねない/漫画家・鳥飼茜さんインタビュー(2)

女性の生き方を鋭く見つめてきた漫画家・鳥飼茜さんへのスペシャルインタビュー。二回目の今回はパートナーを選ぶ際の基準について。ついつい他人の価値観に当てはめて考えがちだけど、恋人との相性って相手が自分の肌に合うかどうかでしか判断できないもの。鳥飼さんが考える「面食い」も肯定できる素直な生き方とは?

男女のジェンダー差がはらむ支配と暴力をショッキングに告発する『先生の白い嘘』をはじめ、『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』など女性の生き方を鋭く見つめた作風で話題の漫画家・鳥飼茜さん。今、最注目の彼女に、規範にとらわれない「30代からの恋愛」のあり方を全4回で伺いました。
第2回は、「好き」の判断基準がブレがちな、大人の恋愛事情についてです。

■第1回「借り物の価値基準に振り回されないで」はこちら

面食いの自分を受け入れたらラクになった

鳥飼茜 30代からの恋愛
鳥飼茜さん

――「恋愛向きの相手と結婚向き相手は違う」とよく言われますが、みなさんはどう思いますか?

『AM』編集M(以下、編集M) 20代半ばまでは、結婚するなら優しくてまじめな人がいいと思っていたんです。でも最近、一生ともにする相手だったら、やっぱり顔もかっこよくなきゃずっと好きでいられないだろう……とか思いはじめてしまって(笑)

鳥飼茜さん(以下、鳥飼) 普通、逆ですよね(笑)。そこには目をつぶる人が多いのに。

編集M 性格も、まじめというより面白みがあって、映画や本の趣味も合う人じゃないと、絶対私が嫌になっちゃうだろうなって。年を重ねて余計にハードルが上がって、簡単には付き合えなくなってきちゃいました。

鳥飼 でも、それがMさんの本当の欲望なんじゃないですか? というのも、私も実はめちゃくちゃ面食いで。でも、昔、見た目がタイプで付き合っていた男性にこっぴどく振られたことを引きずって、「男性を顔で選んじゃいけない」「見た目が好みの人を選ぶと痛い目に遭う」と自分に呪いをかけていたんです。

――傷付かないように自分に嘘をついて、欲望にフタをしていた、と。

鳥飼 そうそう。すごく優しくていい人だけど、どうしても顔が好きになれない男性と付き合っていたときもありました。顔が理由で別れるなんて人としてやってはいけない、と自分に言い聞かせるんだけど、やっぱり気になる。

 でもあるとき、「私はかっこいい人が好きなんだ」ということを自分に許したら、ネットやら雑誌やらでイケメンの写真をガンガン見るようになって、「美しいって良いなー」って(笑)。無理して、自分の本当の欲望にブレーキをかけていたなと気付いちゃった。

 Mさんの場合も、年を重ねて理想やハードルが上がったんじゃなくて、これまでが、本来の好みではない判断基準に振り回されていたんじゃないですか?

編集M そうかもしれません……!

他人の評価にゆだねず、自分が心地いいかで決めよう

鳥飼茜 30代からの恋愛
鳥飼茜さん

小学館『This!』担当編集S(以下、S) 私は、初めて顔がかっこいいと思って付き合った男性を友人に紹介したら、「顔でかくない?」と言われたことがあって。「かっこいい」の先にはそんなジャッジもあるの!? と落ち込みました。「かっこいい」じゃなくて「顔でかい」なのかって……(笑)。

鳥飼 他人の評価に少しでもゆだねてしまうと、自分の価値観って案外すぐ崩壊しちゃうんですよね。「かっこいい人が好き」というのも、「自分にとってかっこいい人」ならそれでいい。その人といて、自分が楽しいか、自分が心地いいか、で決めることは意識した方がいいですよね。

 私の知り合いの男性は、割とかっこいいのに大学を出てから途端に出会いがなくなったらしくて。それで、お見合いコンみたいなのに行ったら、「女の人が全員経済的なスペックで俺を見てくる。人として見てくれない」とか言い出したんです。

 それからは「素人の女性は怖い」と風俗嬢複数人と続けて付き合っていたんですけど、でもそれって、わざわざそれぞれの価値観ではない、スペックで見られる場所に行くからよくないのでは……とも思ったんですよ。

――結婚を意識してしまうと、「本来の好み」や「本当に好きな人」という判断基準がブレてしまって、迷うのかもしれませんね。

鳥飼 友人に、夫とケンカばっかりしてる人がいて、話を聞いていても「そんなわがままな旦那のどこがいいんだろう」と思っていたんですけど、「結局、好きだから許しちゃうんだよね」と言っていて、案外それが真理なのかもなって。

「結婚向きの人か」「いい父親になってくれるか」みたいな判断基準って実はあんまり役に立たなくて、最終的に「好きだから、しゃあないか」と許せてしまう人かどうかが、夫婦の相性なんじゃないかと思ったんですよ。

「好きだから、しゃあないか」という“かわいげ”

――結婚相手を決めるうえで、スペックや生活能力は決め手にはならないということですか?

鳥飼 「面食い」って言っちゃうとバカみたいですけど(笑)、要するに顔が好みとか、声が好きとか、触り心地がいいとか、匂いが落ち着くとか、人って結局そういう感覚に抗えないのかな、とも思うんです。

 趣味や生活の価値観が合うことも大事だけど、靴下脱ぎっぱなしにしちゃうとか、風呂から上がった後に換気扇回してくれないとか、そういうことを相性が悪いと言い出しちゃったらキリがない。

 それよりも、いいタイミングで折れてくれるとか、不満を感じよく伝えてくれるとか、お互いに「好きだから、まあしゃあないか」という“かわいげ”みたいなものを感じ合えることが相性じゃないかなと。

編集S 寝顔がかわいいと許せちゃう、みたいな?

鳥飼 そうそう。自然な振る舞いや、素直な反応が、肌に合うことのほうが重要かなって。

第3回「自尊心は恋愛以外でキープしよう」に続く

鳥飼茜
1981年、大阪府生まれ。2004年『別冊少女フレンドDXジュリエット』でデビュー。少女漫画誌を経て、現在は『BE・LOVE』(講談社)に『おんなのいえ』、『月刊モーニング・ツー』(講談社)に『先生の白い嘘』、『FEEL YOUNG』(祥伝社)に『地獄のガールフレンド』と、3誌に連載を抱えている。『おんなのいえ』は2014年に『このマンガがすごい オンナ編』で9位にランクインして注目を集めた。

ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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