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  • 2016.03.01

借り物の価値基準に振り回されないで/漫画家・鳥飼茜さん30代からの恋愛インタビュー(1)

30代の恋愛ってなんか20代の時より楽しくない……。そう感じる女性、多くないですか? 今回は「30代からの恋愛」特集のために、女性の生き方を鋭く見つめてきた漫画家・鳥飼茜さんにスペシャルインタビュー! ここに、30歳からの生き方のヒントが詰まっています。

男女のジェンダー差がはらむ支配と暴力をショッキングに告発する『先生の白い嘘』をはじめ、『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』など女性の生き方を鋭く見つめた作風で話題の漫画家・鳥飼茜さん。今、最注目の彼女に、規範にとらわれない「30代からの恋愛」のあり方を全4回で伺いました。
第1回は、「年齢の壁」って本当にあるの? というお話です。

「30代になったら需要がない」は思い込み?

鳥飼茜 30代からの恋愛
鳥飼茜さん

――今日は、鳥飼さんに「30代からの恋愛」についてお伺いしたいのですが……。

鳥飼茜さん(以下、鳥飼) 私はいま34歳なんですけど、自分ではまだ32歳くらいの気持ちでいて。30代の先輩からは「32歳までは“30代の1年生”だから、逆に若いよ」と言われていたので、まさにそんな感じの気分なんです。でも、今年もう35歳になるという事実に少し焦るというか、時間の経つ早さに驚きますね。

『AM』編集M(以下、編集M) 私は今30代に入ったところなんですが、「30代になる焦り」って28歳くらいの頃が一番やばかったです。29歳の時点では、30歳になる心の準備を完全に整えておかないとまずいんじゃないかとバタバタしていました。

鳥飼 実年齢に感覚が追いつかないですよね。28歳くらいから、年を取るのが倍々で早くなっていきませんか? 気が付けば36、38、40となっていって、その頃ぐらいならやっと「30代の恋愛とは」というのが語れる気がする。だから今日は、みんなで座談会みたいにやれたら嬉しいです。

――実際のところ、30代になって自分の意識や、周りの扱いが変わったと実感することはありましたか?

鳥飼 ちょっと薄暗い飲み屋とかで会った20歳くらいの男の子と、それまで仲良く話していたのに、年齢を言った途端スッと引かれる感覚を味わったこともなくはないですね。ただそれは、「女としてナシ」というほどの意味ではなくて、単に年功序列による遠慮だった、ということはあるかもしれません。(編集部の男性カメラマンに)この中では一番若そうですよね。

カメラマン氏 22歳です。

鳥飼 えー、若い! どうですか? そういうとき、ちょっとギョッとします?

カメラマン氏 あー、若干あるかもしれないです。

鳥飼 やっぱりあるんだ……(笑)。見た目は同じくらいだと思ってたのに、年齢という数字だけで引いちゃうってことですか?

カメラマン氏 そうですね、ちょっと距離感は感じてしまうかも……。

――年齢は聞かなければわからないのに、数字として聞いた途端、扱いが変わる場面は、よく見かけますね。

鳥飼 そういう風に接し方を変えられることで、身構えちゃうことはあります。だけど、「30代になったら需要がない」と自分で勝手に決めつけてしまっているところもあるのかなって。

「男は40代、50代になっても、20代の若い女の子がいいんでしょ?」とか思っちゃいますけど、実際そんな人ばかりなのかというと、それもイメージや風説に惑わされている気もするんです。

「激しい恋愛」=「楽しい」も錯覚かもしれない

編集M これももしかしたら思い込みかもしれませんが、30代になるとなかなか楽しい恋愛ができなくなってきたんです。

鳥飼 楽しい恋愛ってどういうことですか? 深夜2時とか3時に「会いにきて!」って呼びつけるみたいな?(笑)

編集M そうですそうです(笑)。好きだと思ったら突っ走っちゃうような恋愛が、できなくなってるなって。20代の頃は、そういう浮き沈みも含めて楽しかったんですけど、最近はしんどくて。

鳥飼 それは、単純に体力が落ちたんですよ!(笑) 私も、深夜までケンカすると翌日の仕事に響くからできなくなってきて。「0時過ぎたら要らんことは言わないようにしよう」とかセーブするようになりました。だから、そういう激しい恋愛を続けたい人は、ジムに通って基礎体力を付けることをオススメします(笑)。

ただ、それが「楽しい恋愛」かというとまた別問題ですよね。だんだん自分がどういう人間かが見えてきて、これが恋愛だと思ってやってきたことが、年を重ねるうちに「板に付いてないな」と思ったら、やめたほうがいいです。大人になるって「自分の板に付いてないことはしない」ってことなのかも。

あなたの価値観は、必ず誰かからの借り物

鳥飼茜 30代からの恋愛
鳥飼茜さん

――恋愛の楽しみ方もそうですが、どうしても年を重ねると周囲の声や社会の規範を重視してしまうことが増えそうですね。

小学館『This!』担当編集S(以下、S) 鳥飼さんの作品を読むと、私は「社会の規範よりも“個”を大事にしろ」と言われている気がして、気持ちがラクになるんですよ。

鳥飼 私は、よく女性どうしの分断や抑圧について聞かれるけど、気にしなければいいだけの話だと思ってしまうところがあります。ただ、社会の規範を大事だと思ってる人からすると、そこから逃れるのは大変なことになりますよね。

たとえば、「結婚したら専業主婦になりたい」という願望がなかなか叶わずにいて苦しいなら、それがいつどこで芽生えた価値観なのか、さかのぼってみたらいいんじゃないかと思います。

人が生まれつき持ってる考えなんてひとつもないはずで、世間で羨ましいと思われてることにのっかっているだけだったり、どこかで誰かにそう思わされてきたことを自分の考えにしているだけだと思うから。ぜんぶ借り物なんだから、入れ替え可能なはずなんです。案外、自分には必要ない価値観かもなって思ったら変えればいい。

――確かに、価値観って自分の知らない間にどんどん狭められていっている気がします。

鳥飼 もちろん、「お金持ちと結婚する」ことが自分の幸せだと思えば邁進すればいい。逆に、自分は結婚後も働きたいのに「奥さんも働かなきゃいけないなんてかわいそうだね」みたいなことを言ってくる人がいるかもしれない。

でも、それはその人の生き方であって、他人の生き方を恥だと思わせるようなことは言ってはいけないし、お互いに自分の問題と他人の問題を一緒にしなければいいだけの話なんです。

――なるほど、その通りですね。

鳥飼 みんなそういうことに意外と無意識ですね。私自身は逆にすごく執着しているんですよ。自由っぽく振る舞っているように見えるけど、自由でい続けることにすごく執着していて。

自分がありたい姿でいるのって、がんばり続けなきゃいけないので大変です。多勢が「こうあるべき」と生きている中で、「私はそうじゃない」と言い続けなきゃいけないし。周りに流されていたほうがラクだし。

でも、違う生き方の女どうし尊重しながら共闘して、女性の生き方をもっと解放させるには、しんどいけど考えることをやめちゃいけないんですよね。

第2回「他人の価値観にゆだねず、自分の心地よさを守ろう」に続く

鳥飼茜
1981年、大阪府生まれ。2004年『別冊少女フレンドDXジュリエット』でデビュー。少女漫画誌を経て、現在は『BE・LOVE』(講談社)に『おんなのいえ』、『月刊モーニング・ツー』(講談社)に『先生の白い嘘』、『FEEL YOUNG』(祥伝社)に『地獄のガールフレンド』と、3誌に連載を抱えている。『おんなのいえ』は2014年に『このマンガがすごい オンナ編』で9位にランクインして注目を集めた。

ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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