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  • 2014.02.05

セックスとは性行為ではなく相手を受け入れること/『官能教育』著者・植島啓司さんインタビュー(1)

『官能教育』の著者・植島啓司さんが語るセックス論。「生物学的に浮気に男女差はない」「女性は性に関して罪の意識を感じるように教育されている」など、人類学者ならではの言葉に注目です!


『官能教育』を出された植島啓司さんに女性の不倫、そして愛についてお聞きしました。
「女性は性に関して罪の意識を感じるように教育されている」、「生物学的に、浮気において男女に違いはないのかもしれない」など人類学者の植島さんならではのお話に注目です!

性に罪悪感がある?

植島啓司


─著書にも「女性は性に関して罪の意識を感じるように教育されている」と書かれていらっしゃったのですが、たしかにセックスに対して罪悪感がある女性は多いように見受けられます。
そういった女性たちに向けて、ただ単に「性に対してオープンに」と発信するだけでは問題を解決することは中々難しいです。
女性が感じる性への罪の意識を薄めるためには、性やセックスをどのように捉えて発信していけばいいのでしょうか?

植島啓司さん(以下、敬称略):セックスというと多くの人が「ベッドに入ってセックスして子どもができる」、というような古典的な形を思い描いていると思うんですね。
そうではなくて、相手を受け入れることがセックスなんだと思います。
だから、性行為をしなくても相手の身体を受け入れる、キスをする、抱きしめるということもすべてセックスだと思うんです。
そのくらいのスキンシップという気持ちで、幅広くつかまえたほうがいいと思うんですよね。

─たしかに古典的なセックスを思い描いている人のほうが多いですよね。
ハグするということもセックスだと広く捉えると、セックスへの敷居が低くなりそうです。

植島:もちろん嫌いな男性に触られるのは嫌でしょうけど、基本的にスキンシップが嫌いな女性というのはいないと思うんです。
それが一番訓練するところじゃないですか(笑)。

─なんかあんまりベタベタすると、周りの人に「ビッチ」とか思われて、あまりよくないというのをこれまで言われてきたんですけど…。

植島:でも、ちょっと触ったくらいでそんな風にいうのは過剰反応ですよね。

─そうですね。女だって触りたいという時はありますよね。

植島:確かに男性から女性へのスキンシップはなかなか難しいかもしれないけど、女性から男性のスキンシップはどんどんしたほうがいいですよ。
女性から触られてイヤな男性ってほとんどいないと思います。

キスフレを上手く作る方法


─植島さんが書かれているような、「キスフレ」(※キスをするだけの異性の友人)ができたらすごく楽しいと思うんですけど、そうすると周りからあまりよく思われない傾向があるようなんです。
うまくやる方法はありますか?

植島:これは男子の双肩にかかっていますね(笑)。男の方にそういう文化がないので。
ハグしたり、キスしたりすると、この次はベッドだと男は思うわけです。
そう考えてしまうのはとても残念ですよね。
これって本当に地域でいうと、東アジアだけのことで、アラブだろうとイスラムだろうとヒンドゥーだろうと、そんな考え方はないんです。
当然のようにスキンシップする国の方が多いですから。

 日本、中国、朝鮮半島などの人々は、儒教の教えっていうのもあるかもしれませんが、すごく潔癖主義だし、人を許さないところがあるでしょう。
こんなに堅苦しい国って世界を旅してもあまり見つからない。
ラテン系もアフリカの国々も、他のアジアの国々だってもっと自由ですからね。
好意のしるしのキスとかハグって素晴らしいことだから、もっともっと一般的になったらいいんですけどね。
まあ、キスはまだちょっと抵抗あると思うけど、ハグくらいは挨拶がわりにできるようになったらいいですね。

─推奨したいです。

植島:男女間の関係性って好意をもつからこそ築ける豊かな関係というのがあると思うんです。
でも僕らは、いったん好意を持つと、恋愛か否か、結婚か否かってという二択を迫られることになる。
恋愛には、セックス以外にもいろいろな幸せがいっぱい詰まっているのに、早くこの先の段階までいってセックスしたいとか考えてしまうのは、すごく貧しいんじゃないですか。
ハグしたり、キスしたり、一緒に肩くっつけあっているだけで幸せな状態というのは、本当は生きていくうえで一番大きな喜びなんじゃないかと思います。

 そこをいったんすっ飛ばしちゃうと、もう戻れないんですね。
一度セックスしちゃったあとでは、手をつないでも、以前のような喜びとはまた違ってくる。ハグしても同じ。
どうしても、またベッドに行こうかみたいな話になってしまう。
セックスの手前にある一つひとつの喜びは大切にしなきゃいけないと思うんですね。
だからキスとかハグとかも、もっと女性から積極的に仕かけてあげて、男性に大切なことだとわからせてあげたらと思います。

─なるほど、生きる喜びとして、自然に行っていったらいいんですね。
でもすぐに、あれどういうつもりだったの、とか意味を確認されることもありますよね。
その場が楽しかっただけというのが中々許されないというか。

植島:あはは(笑)。そうですね。
でも人間はずっと理性的でいるなんてことはできないですからね。
ちょっとお酒入ったりしたら、そりゃあ人間変わったりするし。
でも、色々変わっていいと思うんです。
自分は絶対こうだと、かたくなに考えない方がいいと思いますけどね。

─自分の一貫性をあんまり信用しない方がいいんですね。

植島:お酒はそのために飲むんですよ(笑)。

─お酒の失敗とかいいますけど、失敗と捉えないでもいいじゃないかってことですよね。
女性は比較的優等生な子が多くて、「お酒を飲んでヘラヘラしちゃったな」みたいな気分になっちゃうのかもしれません。
そこを自分も変わるもんだって思っていれば、楽になれそうです。

植島:女の人ってちょっと几帳面な人が多いから、あのときはちょっと私じゃなかったの、みたいになりますよね。

─言いがちですよね(笑)。それも全部自分だと認めて楽しむということですね。

植島:そのあたり、女の人は30過ぎくらいから少しずつよくなるんじゃないですか。

─20代の時が一番厳格ですね。価値を落としちゃいけないというような。

植島:「あのとき隣の男と手を握り合ってたじゃないか」って言われたりね。
「あれは私じゃ、ありません」みたいな(笑)。

女性は本能的に浮気しないの嘘


─生物学的に男性は浮気しても当たり前だというようなことが言われてきたなか、著書のなかで「浮気において男女に違いはないのかもしれない」と書かれていたのにとても共感しました。
女性は巣を守り子供を育てるから、浮気しないのが当たり前だというような話が広まりすぎていると思うのですが。

植島:本にも書いたんですけど、生物界では女性も男性と同じくらいたくさんの異性と交遊しているわけです。
おしどり夫婦と言われるほど、鳥類は一番相手に誠実だと言われてきたのに、巣の卵の遺伝子検査をしてみたら、夫ではないほかの異性のものがいっぱい見つかった。
昔は鳥の専門家たちでもなかなか不倫は見つけられなくて、最近遺伝子検査ができて初めてわかってきたことなんです。
最近また話題になっていますが、だいたい誰の子かなんて男には絶対わからない。
以前報道されていた調査では、夫婦間の子供の父親が異なる確率は10%ぐらいでしたね。

─そうでしたね。10人に1人も!
ということは、女性も不倫しているということですよね。

植島:男性は、たくさんの精子をまき散らして、たくさんの後継者を残していいといわれる。
一方、女性は、選別して素敵なオスを探しなさい、と教え込まれている。
だけど、それは昔の道徳の教科書みたいな話なんですよ。
実際にはそんなことはなくて、男女同じように、愛情に関してはとても豊かな感性をもっているということです。

─女性だけ一人の人を愛し続けるわけないですもんね。

植島:そうですね、やっとそういうことが言える世の中になりましたね。

─たしかに言いづらいです。男性が怒るんですかね。

植島:男性のほうが少し意識が遅れているからね。
これから、だんだんと女性にもそういう思いがあることが当たり前になっていくと思いますけどね。
60年代に雇均法(雇用機会均等法)ができたとき、「こんなものができたって穴だらけなんだから男女の間の溝は埋まらないよ!」といわれていました。
けれど、それから40年経って、確実に男女は、同じように働いたり同等な収入を持ったりして、やっぱり動きは変わってきたわけですから。
女は女だけ、男は男だけと思っていたこともなくなってきたし、時代とともに変化していくんです。

─そうですね。できれば早く変わってほしいです。
女性向けサイトで女性が奔放に性を楽しんでいるという記事を出すと、男性のネットユーザーから叩かれたりするので。
まだまだ保守的な男性はたくさんいるなと感じます。

植島:「女性には性欲がない」って、僕らが子供の頃は当たり前のように言われていましたが、今では女性のマスターベーションのあり方もきちんと言われるようになっていますものね。
男性といっても、まあ2ちゃんねるとかに投稿したりする場合は、ちょっと鬱屈した人が多いから、まともに取り合うとよくない気がしますけどね。
それに、男性の頭のなかはまだ50年くらい前のままだから、女だてらにって気持ちもあるんでしょうね。
口ではもう言えなくなっているけど、心のなかではまだみんな思っているんでしょうね。

【第二回 傷つかない不倫をするには?】につづきます。


Text/AM編集部

植島啓司
1947年東京都生まれ。宗教人類学者。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、M・エリアーデらのもとで研究を続ける。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ(人類学)客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。40年以上世界各国で宗教人類学の調査を続けている。

植島啓司 官能小説

『官能教育』
著者:植島啓司
発行:幻冬舎

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