• special
  • 2013.12.25

「女の敵は女」と思ってる自分が敵だ!


 AMライターのみなさんに今月の特集「女の敵は女」について、コラムを書いていただきました。
第4回は、連載「密かに磨く、エロしぐさ」の鈴木みのりさん。
女は敵ばかり!と思っている、あなたは、ぜひ鈴木さん流の女を敵視しない方法を読んでみてください。

依存関係を描く、山岸凉子の傑作マンガ『メディア』
男と幸せになりたい女は別の女を敵視してしまうのか?

鈴木みのり エロしぐさ
Astraete


 今月の特集「女の敵は女」へのコラムを依頼していただいたとき、すぐに思い浮かんだのが、山岸凉子さんの短編『メディア』(『押し入れ』(講談社) 所収、現在は絶版のようです)。
今はなき『amie』という少女マンガ雑誌に掲載されていたのを読んだのは高校1年生のころですが、今読み返しても、現代の女性問題に通じるテーマが示されています。

『メディア』の主人公・有村ひとみは短大生で、背が高くボーイッシュなため男の子にまちがわれるのが悩み。
実家暮らしのひとみに母親はべったり依存していて、誕生日にデートしてくれる娘を誇らしく思い、毎日無農薬の野菜を使ってバランスを考えたお弁当を作って持たせ、浮気している夫や姑の愚痴を言っては「スペシャリストになるのよ」と自分の果たせなかった夢を託す。
ひとみは、学校での女性学の講義を通してそんな母親に違和感を持ちはじめ、自立するために得意の英語を使ってアメリカへの留学を考えはじめる……。

 原宿カウンセリングセンターの所長として、『愛情という名の支配』、『ザ・ママの研究』といった著作で家族の形を臨床心理士の視点で研究してきた信田さよ子さんや、タレントやエッセイストとして活躍される小島慶子さんが過干渉から生まれた母との確執を告白されたことで、近ごろ母親との決別による自立と自信獲得についての話題をよく耳にします。この『メディア』はその走りとも言えそう。

 タイトルの引用はエウリピデスによるギリシャ神話から。
尽くした男・イアーソンが若い女に心変わりしたので、復讐のため王女メディアはふたりのあいだの子どもを殺害する、というお話。
作中では、この神話を聞いて「あたしなら心変わりした男のほうを殺すなあ」と言うひとみに対して、友人の石田は、男女女の三角関係においては損得勘定が働いて男ではなく相手の女を殺すことの方が多い、という指摘をします。
「男と幸せになりたいのにその男のほうを殺したら元も子もないからさ」と。

ありがちなモテオンナ VS 非モテの対立!
自分を誰かと比べてもしかたがない


 殺意とは言わずとも誰かを蹴落とそうという思いに駆られたり、ライバル視したりする構図は、恋愛シーンにおいてよく見られませんか?
恋人のいない自分はカレシのいる友人より下、意中の彼の恋人より自分の方がいいオンナなのに! 、彼のタイプはグラマーなひとらしいけど自分はBカップ……、などなど。

 あるいは、最近よく耳にするのは、わたしも連載コラムでたびたび揶揄してきたモテ/非モテの二項対立
モテオンナなのに非モテテリトリーのせんべろ焼き鳥屋に来るな! とか、フェイスブックにリア充写真載せてキラキラしてる……あたしキメ顔持ってない……とか、WECKの保存容器ってありがちだよね私はKILNER使ってるし〜とか、妙なところで女同士のけなし合い競い合いのメビウスの輪! こわいよ!

 先日、わたしの今の恋愛関係についてともだちに話していたときのこと。
わたしの意中のひとには気になる存在がいるという話を耳にしていたんですが、ほんの数週間前に、その女性なんじゃないかというひととたまたま知り合ったんです!
彼女を見て、知的だけど素朴な彼が惹かれる可能性はありそうだなと、妄想で勝手にライバル認定。

 これはわたしの悪いくせなんですが、男性との恋愛関係において、「子どもを生せない自分」に強い劣等感を抱いて、上手くいかないんじゃと早々に不安に思ってしまうんですよね。
子どもが作れるひとの方が選ばれるんじゃないかと、彼女とわたし自身を比較して、不安要素を勝手に拡張しはじめる。どうせ自分なんて……思考がはじまるわけです。

 そこで友人が言ってくれたのは、「たとえ、みのりちゃんの想い人がその彼女のことが気になってたとしても、そのひとのことを考えちゃダメ! 結局は人間関係は一対一なんだから」と。
そう、誰かを敵視してもしょうがない。
誰かを見下したりけなしたところで、自分がみじめになるだけと言うか、そんなことで恋愛関係が成就するなら誰も苦労しませんよ。

自身がない=自信を持てない恋愛関係を望んでいるのか?
自分の希望に向き合うしかない!


 わたしにも相手の期待に合わせて動いていた時期があります。
家庭的な子がいいとか言うひとに対して料理作って媚びたり、仕事帰りで疲れたと言うひとにビールとタバコ買っておいてあげるとか、プルオーバーのパーカーをラフに着てるとかわいいよねと聞くと次の日にはRoganとKITSUNEを買いに走ったり、なにこれ我ながら自分がなさすぎ! ひどい! 恥ずかしい!

 生まれながらの女性ではないということを劣等感の理由にして、男に認められたい、関係を破綻させたくないと思うあまり、都合のいい存在に成り下がっていたわけです。
相手をすべて是として合わせる関係を続けていると、嫌われたくないことがいちばんの目的になってしまう。
自身がないと、自信を確立することなんてできません。

 髪長い子が好きと言われたからってショートカットにエクステ付けるのか!?
彼がおっぱい大きい方がいいって言うからシリコンバッグ入れるのか!?
板野友美をかわいいと聞いたら目頭切開して鼻とアゴにプロテーゼ入れるのか!?

 恋愛の渦中にあると、劣等感に苛まれたり不安になって、自身=自信がなくなりやすい。
だから別の女性と比べて、そこからズレてしまったら嫌われてしまうのでは? 変に見られるんじゃないか? などとおびえて自分の欲求を抑圧してしまう、または、「あの子はかわい子ぶって男に媚びてる」「あざとい」とか誰かを敵視したり嫌らしい目で見てしまう。
そういう自分の内面を掘り下げてみると、問題の焦点がクリアになりそうです。

 劣等感に気づけたことを成長する機会ととらえて、「自分はこうなりたい!」と楽しくやってる方が魅力的に見えるんじゃないでしょうか。

 なあんてきれいにまとまったね! 自分が聖人みたいに思えてきたよ! わたしこんなに強くなんてないのに!

 先述の『メディア』でも、娘に期待をかけながら母親役にしがみついて依存する自分の母を前にして、ひとみはたびたび、くだんの女性学の講師の「“大人”とは自分が今何に対してイエスであり何に対してノーと思っているかがはっきり言える人間のことをさすのです」という発言をリフレインして、自立しようとします。
表面的には仲が良く、「幸せそう」に見える母親との関係を現状維持するのではなく、苦渋の決断で親元を離れよう、と。しかし……その後の衝撃のラストはぜひみなさんの目で確認していただきたいです。
山岸凉子はやっぱりすごい! きれいごとだけでは済まないなんて展開は、往々にしてあるものですよね。


Text/鈴木みのり

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