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  • 2013.06.05

恋愛のドロ沼にはまる唯一の価値は”最も愚かな自分”に出会えること(2)

 今回は、小説家・コラムニストの中村うさぎさんに、ご自身の体験を踏まえて、「依存と甘え」についてのお話を伺いました。
第二回は、「依存」とは一体どんなことかを解き明かしていただいています。 依存を重ねてドロ沼状態になりがちなあなた、ぜひ読んでみてください。
第一回「甘え下手な優等生キャラは得しないが男に縁がない訳ではない」も合わせてどうぞ。

ホストクラブのエレベーターで
手首を切る女に出会う

中村うさぎ AM 恋愛 甘えと依存
©AM編集部

─気をつけたほうがいい依存例ってありますか?

中村うさぎさん(以下敬称略):やっぱり相手のことも自分のことも追い詰めてしまうのは、最悪だと思うんですよ。
ほとんどが狂言だけど、自殺未遂する人もいますよね。

そういえば、私、道端で手首切ってる女の人に会ったことがあって。

―えー!

中村:歌舞伎町のホストクラブに行こうとして、そのビルのエレベーターホールについたら、女の人が寝ていて。
最初は酔いつぶれて寝ているんだと思って、
「こんなところで寝てたら風邪引くよ」って声をかけたら、血だまりができていて、よく見たら手首切ってて。
私と連れの友達が、「大丈夫? 血が出てるじゃん、救急車呼ぼうか?」って言ったら、「あ、いいんです、助けに来てもらうので」っていって、メールを打ち始めたの

 まあ、ホストにハマっている女が振り向いてほしいあまりに、ホストクラブのエレベーターホールで手首を切るという暴挙に及び、何も知らない通行人をこんなにおびやかして…という状況だったんだよね(笑)。
出血量もドクドクドピューとかじゃないし、そもそも動脈切れてたら意識なんてないよね。
この人は私たちに助けられたくないんだろう、そのホストが来るまでほっといてほしいんだろうということがわかったので、「がんばってね」って通り過ぎてしまったんですけど(笑)。

 でも、そこまでいったら、やっぱりそれって病ですよね。

―本当に苦しいところまでいってしまっていますね。

自分を追い詰めずにはいられない人々

中村:でも、そういう人ってもう相手も自分も追い詰めずにはいられないと思うんだよね。
あと、男の人の場合は依存の先がDVになって、女の人は自傷になるんですよ。
手首切らないまでも、ものすごい自暴自棄で「私なんかどうせ」状態になったり、自己卑下がひどくなったり、自傷傾向が強い。
男の人の場合は相手を傷つける他罰傾向が強いですよね。
ここが男と女で、決定的に違う。
具体的にいえば、このDVとか自傷っていうのが最もだめな依存ですよね。

―そうですね。

中村:かわいそうだけど、周りにも迷惑かけちゃうしね…。
でも、自分の意思でやめようと思ってやめられるもんでもないから、セラピーが必要なレベルですね。

共依存もあるしね。
特にDVなんていうのは、殴っている男と、殴られている女の間にひとつの共犯関係みたいなのが成り立っちゃっているので、もうやめるのも大変ですよ。

ただ、そもそも恋愛は共依存なんですよ。
依存すると、「この人がいないと私はだめ」ってなるよね。
本当はだめじゃないんだよ? その人がいなくても全然生きていけるんだけど(笑)。
だめ、みたいな気持ちになるのが恋愛だから。
あの人がいないとだめー! ってお互いにライトに思い合っている、ハッピーな依存が一番楽しい共依存状態。
でもまあそんな期間なんて、半年続けばいいんじゃないかな。
そこからだんだん、依存が解除されるか、ダメな依存に陥ってしまうから。

依存によって最も醜い自分に出会うことは
いい経験になる

中村うさぎ AM 恋愛 甘えと依存
©AM編集部

―依存をしたことですごくいい体験をしたことはありますか?

中村:
恋愛で男に依存したことで、いい経験をしたことなんて一度もないと思う。
依存って執着なので、しすぎると苦しいからね…。
しいていうとしたら「私ってこんなにばかなんだなー」と最も醜い自分と出会ってしまう体験ができることかな。
そういうコントロールできない自分を発見していくことは、とても貴重だと思うんですよ。

 恋愛って最も自分を知るチャンスだと思うのね。
やっぱり人ってきれいごとをいってしまうし、きれいごとを言っている自分が本当の自分だと思ってしまう。


 心の中でドロドロしたことを思っていても、そんなことは口には出さないし態度にも出さず、
そんなこと思っちゃだめ! って自分に言い聞かせて、もっとポジティブに考えよう!  とかさ。
そんなことができる間は依存じゃないから。
でも恋愛でバカになって、私はこんなに愚かだし、こんなに醜いし、こんなに視野が狭くて、だめな人間なんだ、ということをちゃんと知らないといけないと思うんだよ。
自分をきれいにきれいに美化したままでいたら、「己を知らない」という理由でどっかでつまずくから。


 依存のせいで、恋愛がドロ沼になって、泥まみれの傷だらけで、それでもずるずる別れられなくて大騒ぎになっている人もいるよね。
でも、そこまでいってしまう人は、もうドロ沼の恋愛しかできないんだから、沼の底まで行っちゃえばいい。
そのせいで死ぬ人ってほとんどいないから。
その時は「死にたい」とか言っているけど、のど元過ぎればケロっとして次の恋愛をしているでしょう。

依存してしまう人は
もう「とことんまで行くしかない」

中村:私は買い物依存症だったので、それを経て言えるのは「とことんまで行くしかない」ということなんですよ。
依存状態のときに理性で自分をコントロールしようとするのは絶対ムリ。
そんなこと出来ていたら、最初からその病気になってないよね。

理性で押さえ込もうとして、クレジットカードを封印しても、夜中にはコッソリ出して財布に入れたりしているわけだから。

 それは男も同じだと思う。
もう絶対別れようと決意して男の家の鍵を捨てても、次の朝ゴミ箱から取り出すみたいな(笑)。
そういうときは理性に頼れる状態ではないので、とことん行ってしまって傷ついてしまえばいい。
傷つくことも重要なことなんですよね。傷つくことで、人って自分を知っていくから。


―考えてもたどり着けないところに、傷ついたら行けそうな気がしますね。

中村:そうですね。傷つくことを回避する防御システムはどうしても働いちゃうけど、傷つかない恋愛なんてほぼないですからね。
最初はラブラブで、この人が私の最後の相手だと思っていても、徐々に嫌なところが見えてきて、思っていた相手じゃないと気付くし、自分だって相手が思っていた人ではないので。
そこで、自分をぶつけて、傷つけて、傷つけられていって。
それの二回目、三回目ぐらいからだんだん自分が見えてくるから。

事前に「私はこういう傾向があるから、気を付けよう」と分かってくるようになる。
何度も傷ついたら、恋愛は上手くなっていくと思うんですよね。

 例えば、スキーやスノボでも転ぶのが怖くて最初からしない人は、上手くならないじゃないですか。
それは恋愛も一緒で、場数を踏まないと人の気持ちも分からないし、自分の気持ちすら分からないから、たくさん傷ついて、だんだん上手になっていけばいいと思う。

 依存だってそう。
恋愛下手な頃は、ひどい依存をして泥沼になってしまうかもしれないけど、何回かすると、少しは解消されていくはずなんですよね。

―何回かいくところまでいけば、依存との付き合い方もうまくなるのですね。

中村:何回やっても同じことに依存する人は、「病気」ですね(笑)。いわゆるメンヘラ。でも病気も治るからね。

 知り合いにリスカ癖の人がいるけど、やりすぎて腕がシマシマの人でもいつかは立ち直っていくんですよ。
人間ってそこが強いなって思う。
だから、今は手首切らないと生きていけないけど、その内これ終わるんだなと思って、今のうちに切っとけ! くらいの軽い気持ちで切っといていいと思うんだよね。
止めようと思うと止められないから。
切るだけ切ったら切らなくなるし。

ドロ沼からもいつかは抜けられる
恋愛でバカになる人を軽蔑することはできない

中村:恋愛だってドロ沼でのたうちまわって、この男のことで一生苦しむんじゃないかって思っていても、1年ぐらい経つと「いたね、そういう人!」みたいな感じになる。
いつかは抜けられるドロ沼だし、癒える傷なので、そこまで悲観しなくていいと思う。
そして、さらに何年か経つといい体験だったなくらいに思うんですよ。
あのときの私は熱かったな、てか、暑苦しかったなって(笑)。
いい思い出じゃなく嫌な思い出だけど、大切なステップだったと。

―恋愛でのたうちまわっている時は周囲が何も見えなくなりますもんね。

中村:恋愛ってバカになることだと思うから、恋愛でバカになっている人を軽蔑できないですね。
傍から見ると本当にバカなんだけど、傍の人は脳内麻薬が出てないから冷静に見られるだけで。
恋愛中はシャブ中と同じなんですよ、ラリってるバカに見えてもしょうがない(笑)。

 でも、バカになれることって人生において恋愛でしかないから、恋愛のときにバカになっている人を見ると、「どうぞ、それが醍醐味なので」って思うんです。
依存もね、そういう風に軽く考えていいんじゃないかなって思いますね。

第三回は引き続き、依存との付き合い方についてお送りします。お楽しみに!

中村うさぎ
1958年生まれ。福岡県出身。同志社大学英文科卒業後、OL、コピーライター、ゲーム誌のライターを経て、1991年にライトノベル作家としてデビュー。『ゴクドーくん漫遊記』がベストセラーになる。
その後、自身の壮絶な買い物依存症を赤裸々に綴ったエッセイシリーズで大ブレイク。
以降も、ホストクラブ通い、美容整形、デリヘル嬢体験を通じた、女の生き方や女の自意識に関する著述で多くの支持を集め続ける。

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