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  • 2013.02.14

失恋者の心に優しいとんかつ(2)

 私の心をこわしたのは果たして愛だっただろうか。

 失恋直後の混乱が落ち着くと、時間経過とともに冷静になる。
すると妙に冴え渡った頭で今回の失恋について分析をし始めるのが我々という生き物だ。
別れの原因は何だったか?  別れる以外の方法は無かったか?  修復できるか?  できるなら何をすれば良いか?
できないなら何をすれば良いか?
過去の恋愛経験とも照らし合わせながら、様々な場面を思い返し検証し尽くすにはある程度のパワーが要る。

 ここで単に肉を食べるだけでは満足いかない諸君であろう。
精力をつけるには肉だ肉しかない肉さえ食べればすべて上手くいくという考えは間違っていないが、
肉塊かなんか買ってきて焼いて食らいつけば良いというわけでないのが失恋者である。

たとえば高田馬場にある成蔵は至高のとんかつを食べさせるだけでなく、
男前のシェフが揃っている。

失恋レストラン とんかつ 成蔵 高田馬場
失恋レストラン とんかつ 成蔵 高田馬場

 しかも高田馬場駅前付近の雑多なイメージと反し、店内は小綺麗なレストランという風情。
地下に位置するにもかかわらず清潔感というか清涼感というか
店員たちの醸し出す澄んだ空気感が訪れた客を気持ち良くさせるようなところがある。

仏像や歴史的建築物あるいは広大な自然を見ると心が洗われるような気持ちになるのと同様に、
とんかつを食べに来ただけで心身の罪や汚れが除去されるような、
いわば浄化作用のあるお店なのだ。

失恋レストラン とんかつ 成蔵 高田馬場
失恋レストラン とんかつ 成蔵 高田馬場

 肝心のとんかつは想像の味を軽々と超えていく抜きん出た美味しさ。
薄く軽い衣で包まれたやわらかな肉はソースや塩を付けてもなお主張してくるほどの甘みを持つから
ひとくち食べただけで「ああここへ来て良かった」と思う。

また添えられたキャベツの尋常ならぬ味の濃さとみずみずしさに「ああまた来よう」と思う。
ロース、上ロース、特ロース、ヒレ、特ヒレとそれぞれ大きさが異なるが、
基本のロース/ヒレでも充分に成蔵の凄さが味わえるので少食の女子も安心するといい。

 さらに全ての定食メニューには日替わり小鉢、ポテトサラダ、香の物、豚汁がつき、
ご飯は1度おかわりできるのだから手頃な価格帯にもまた驚く。
他にも海老フライや牡蠣フライ、数量限定メニュー、そして名物のシャ豚ブリアン(ヒレの中でも最上級のヒレ)などもあり、
単品で肉と酒という組み合わせなども当然可能である。

失恋レストラン とんかつ 成蔵 高田馬場

 失恋を分析しようと大袈裟に構えたところで
結局の原因は「ただなんとなく気持ち悪く思えただけ」などとそれ以上掘り下げようのない場合もある。
誰にも非が無い別れがあったりするから、自分も相手も責めきれない混沌をとんかつで浄化し、マイナスをゼロに戻すわけだ。

来週につづきます。

【つづく】

Text/村井食斎

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