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  • 2013.01.29

恋愛とセックスが切り離せない理由(3)/二村ヒトシ×大泉りか

AV監督でありながら著書多数の二村ヒトシさんに、SM嬢の経験を持つ大泉りかさんがインタビュー。“恋愛、結婚、生活”と“セックス”はまったく別物のはずなのに、なぜかそれを切り離して考えることのできない私たち。愛している人とでないとセックスをしてはいけない、そんな凝り固まった考えを持っていませんか?

 AV監督でありながら、『恋とセックスで幸せになる秘密』、『すべてはモテるためである』などの恋愛書の著作を持つ二村ヒトシさん。女性が積極的なアダルトビデオの先駆者であり、撮影現場で多くの女優の性を見つめてきた氏に今回の特集「セックスセンス」について語っていただきました。
第1回「セックスと恋の呪いにかかった女たち」第2回「セックスを餌にしても幸せにはなれない」も合わせてお読みください。 (インタビュアー:大泉りか)

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ろくろを回す、大泉りかさんと二村ヒトシさん

『恋愛、結婚、生活』をセックスから切り離せないワケ

大泉:“恋愛、結婚、生活”と“セックス”をなぜ一緒にしてしまうのかという話ですが、私の友達にものすごーくヤリマンの子がいるんです。その子に「どういう基準でエッチするのか」と聞いたら「最初に声をかけてきた人」だと言うんです。
例えば、用事を済ませて駅まで歩く、その時に一番初めて声をかけてきた人には、眠いだとか、体調が悪いだとかの気持ちがいいセックスをできない状態にいない限り、ついていく、と。
恋愛感情の有無どころか、男の優劣でさえも関係がない。先着順だと(笑)。

二村:その女性と知りあいたい(笑)。

大泉:まぁこれは極端な例ですから(笑)。でもセックスから“愛”や“恋”をきっぱりと切り離すと、一種の潔さというか……清々しささえも感じて。なるほど、セックスを楽しむためには、こういう方法もあるな、と。
でも、それが自分にできるかというと……。

二村:無理だよね。僕は個人的には、避妊と性病に細心の注意を払えば、大いにやってくださいと思うけど、おそらく多くの人は聞いた瞬間に「それは異常だ」と感じるでしょう
でも、なぜ異常だと感じるのか。逆に言うと、なぜ「セックスは好きな人としなければいけない」ってことになっているのか?

大泉:それは、親から「セックスは好きな人とするもの」って言われて育ってきたせいじゃないですかね。

二村:そうだろうね。両親がセックスをした結果、自分が産まれた。今ここに僕がいるということは、僕の両親が愛しあったということ

社会を維持するために「セックスとは特別に大切な、愛の行為だ」という社会的な常識が必要になっているんでしょう

僕も「愛しあえている相手とのセックスの方が、気持ちいい」とは思うけど、そこでいう「愛」ってのは「肯定しあえている」って意味で、ヤリマンの女性でも相手を全員ちゃんと肯定できているなら心は病まないと思うんだよね。
もちろん、肯定できない男、彼女を愛さない男をわざわざ選んでやりまくっている人は、自傷行為としてヤリマンをやっているんだと思うけど。

大泉:なるほど。

二村:たとえば別の社会制度、別の文化でさ、もしも完全な母系社会だったら、かならずしも「夫婦のセックスで、愛の結晶として子供は産まれる」と決めなくてもいい、そもそも人生設計と恋愛とが、関係なくなるんじゃないの?

中国の奥地の少数民族で、“結婚”どころか“父親”という概念すらない人たちがいたんだって。女の子が恋愛をしてセックスして妊娠したら、自分の家に帰って、家長であるお母さん(赤ちゃんのお祖母さん)に守られながら産んで、赤ちゃんを育てる。一家が生活していく経済は彼女の兄や弟(赤ちゃんの伯父さんや叔父さん)が稼いでくる。赤ちゃんの父親の男は彼女との恋愛は続けるけど夫婦ではなく、自分の母親の家に住んで、自分の姉や妹が産んだ子供を食べさせるために働く。

男は種をつけっぱなし。よその家にいってセックスだけしてきて、自分の母や姉や妹のいるところに帰ってくる。つまり生物学上の父親はいるけど「家族としての父」という概念が最初から、ない。

大泉:愛の醒めた妻のためよりも、母親や姉妹のためならって男も働くかもしれませんね(笑)。

二村:このシステムって、ラクだし、平和な社会だって気がしない?
たぶん男は恋愛のその後に対して徹底的に無責任になるだろうし、現代の日本以上のマザコン社会だろうけど、女性も男の収入とか気にせず好きになった男の子供を産めるし、大家族で助けあって生きていて、でも男が威張ってないと思うんだ。父親が男の子に財産を継承できないから、男の権力はどんどん弱くなっていくし。

大泉:うーん、でもなぁ。私は無理です。独立していたいと思っているので。一族に囚われるのはキツイい。

二村:そうだね。自分のお母さん、自分のお母さんのお母さん……っていうふうにずっと続いていく話だから、“独立しなきゃいけない”という考え方からするとキツい話かも。

大泉:それに、もしも私が子供を産んで実家に帰って、弟に私と母親のために働けっていったら、ものすごい毒親と毒姉ですよ(笑)。

二村:話がセックスから離れてしまったけど、この話をしたのは「なぜ、いちばん愛してる異性とセックスしなければならないことになっているのか?」「なぜ私は、この人とセックスしたいのか?」ということを、社会的な常識とか利害関係に縛られないで、もっとみんな真剣に考えた方がいいと思うから

景気が良かったころは、セックスはもっとカジュアルだったよね。江戸時代はバブルの頃以上に奔放だったって説もあるし。歴史的にみると女の力が強くなっていく中でフェミニズムが生まれて「セックスは、結婚から切り離されてもいいんじゃないか」という考え方が世界中で流行した時代もあった。「人間のセックスはもっと自由になるべきだ」という動きがね。
でも、景気が悪くなるに従って、それじゃあダメだと。
やっぱり一夫一婦制がいいという保守に対する揺り戻しが起こってきている。

編集部: 二村さんは一夫一婦制についてはどのように感じられますか?

二村:これは一言では語れない問題なんで、あらためて時間をかけて話しながら考えたいし、いろんな立場の人の話を僕も聞きたいんだけど、間違いなく言えることは「苦しいのは良くない、がまんは良くない」ってことだよね。
『恋とセックスで幸せになる秘密』に書いたけど、結婚すれば幸せになれるなんてウソです。

自己肯定する気がない人は、結婚相手をバカにしたまま、自分もどんどん苦しくなっていく。もちろん結婚することで、いい意味で“あきらめ”がついて、相手を愛することで自分を肯定できるようになる人もいます。そういう人にとっては家庭を持つことはいいことだと思う。

あと、恋をしている間に結婚までしちゃうと、ろくなことがないよね。結婚するのは恋が冷めて「愛」になってからのほうが、いいんじゃないかなと思います。

「わたしに魅力がないのかしら」と思ってしまうことが心の穴を広げている

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大泉:パートナーとはセックスについてもきちんと話し合って関係を築いていきたいと思うんですけど。関係が深まっていくほど、だんだんと男の人のテンションが下がっていって「そういう話はしたくない」と耳を塞ぐと思うんです。逆に女性は「なんでしてくれないの!」ってなっちゃう。それはなんとかならないんですか?

二村:昔から「男は狩りをする生き物だから、しかたがない」とか「釣った魚に餌はやらない」とか言うよね。精神分析医の斎藤環さんが『関係する女 所有する男』(講談社現代新書)という本で書かれてるけど、セックスする関係になれたらそれで「所有できた」「彼女は俺のもの」と思いこんで、関係性のメンテナンスっていうかアップデートをできない男が悪い

ただ女性の側も「こういう人と付き合ったら上手くいく」という社会的な常識とか恋愛の先入観にとらわれて、セックスについて、よく突き詰めて考えないうちにパートナーになってしまうのがいけない

セックスこそ、お互いの好みが色濃く反映されるところでしょう。
だって、セックスってその人の“心の穴”だもの。その人の「親との関係」に関係あるし、その人がどういう人生を送りたいかに関わってくる。
それをなぜ互いが分かりあわないうちに結婚してしまったりとか、一緒に住んでしまったりするのか。

大泉:セックスって大切なことなのに、そこに対してあんまり貪欲になるのは「はしたない」という考え方があるのかもしれません。あと、男のセックスに対して、ああだこうだと文句をつける女は男側からして都合が悪いというか。

二村:どうしてもセックスについての考えが合わないな、と思ったら別れればいいんです。
セックスが合わないことに不満があるけど「一緒にいないといけない」、「体面があって別れられない」っていうことが間違っている。それくらいセックスは大事。
セックスが好きな人だけじゃなく、嫌いな人も、“セックスが嫌い”という、その人の心の穴を理解してもらわないといけない。

理解してもらった上で、相手も同じくらいセックスに興味がないなら上手くいくし、「自分はセックスが好きじゃないけど、相手はセックスに興味を持っている」ということを理解すれば、もしかして相手が他の人とセックスしすることも許せるかもしれない。

それは男も女もだよ。男だって、セックスが嫌いな人はいっぱいいるし。一番の問題は相互理解ができていないこと。
「あたしはセックスがしたいのに相手はセックスをしてくれない。それはわたしに魅力がないからかしら」と思ってしまうことが、心の穴を広げているんです
不安になれば不安になるほど心の穴は広がるから。

大泉:セックスが嫌いな人っていますよね。なんで嫌いなんだろう。私は大好きなんですけど(笑)。

二村:僕も大好きなんだけど(笑)、なぜ僕がセックスが好きかというと、肯定してもらいたいからです。
ほとんどの「セックスがしたい」という感情は、自分が「いい」と思った相手に、自分を肉体的に肯定してもらいたいからなんじゃないかな。

だから一般論で言うと、恋をしている方はどんどん「セックスをしてくれ」と追いかける、セックスしてもらえないと不安になるだろうし、恋されてるほうは肉体的な欲望以外には特にセックスしなければならない理由はないわけだから、要求されればされるほど逃げる。
そういう不均衡なカップルは、どんどんセックスレスになっていくに決まっているよね。メカニズムからして、そうなるべくしてなっている。

「自分がなぜセックスをしたいのか」、「向こうがなぜしたくないか」を考えなさすぎるから、そうなってしまう。じゃあ、どうしたらいいか、というと、相手と話し合うしかない。

大泉:話し合いねぇ……男の人って話し合い、苦手ですよね。

二村:こと、セックスのことに関してはね。苦手でしょう。男に限らず女だって。

大泉:そうですね…、男女の話し合いは上手くいかないですよね。
長年付き合っていた彼とセックスレスになって泣いて訴えたら「泣きながらセックスしてくれって言われて、セックスする気になるわけがない」って怒鳴られたことがありますもん。
結果、「泣くくらいセックスがしたいのにわかってくれない男なんて、もう知らない!」と思って、別の男としたわけですが(笑)。

二村:そういう時は、ぼくのビデオを使ってくれればいいんですよ。

大泉:「一緒に観よ!」って言って、二村さんの痴女AVはいきなりハードルが高すぎると思います(笑)。

二村:そりゃそうだ(笑)。

フェラチオをしている時に心が苦しくないか

大泉:せっかくなので、セックスのテクニックについても伺いたいな、と思うのですが。

二村:セックスが上手い女になりたいってことですか? 皆さん、セックスが上手い女になりたいの?

大泉:下手よりはいいですよね。なんであっても、スキルは高いほうが。

二村:まずは、オナニーをたくさんして「自分は、どうされると気持ちいいのか」を肉体的にも精神的にも、よく知ること。そしてセックスの最中には相手の反応を、ちゃんと見ることです。

大泉:そういえば、二村さんはセックス中に目を開けろ、とよくおっしゃっていますよね。

二村:キスをする時も相手を見ながらしたほうがいい。つぶった方が皮膚感覚が鋭敏になるならつぶるのもいいけど、それでも自分一人の快感に没入するんじゃなくて、でも「相手が楽しんでるかを心配しながら」するんじゃなくて、相手を味わう
そして、フェラチオなんかは、嫌いな人はしなくていいし、好きな人はいっぱいすればいい。

ただ、これも、する時に「このフェラチオで喜んでくれてるかな?」と心配しながらするんじゃなくって、自分が楽しいからする。で、相手が喜んでくれたらもっと嬉しい、という考え方でしないと、心が病んでいきます。

大泉:でも、フェラチオって、嫌いな人と好きな人だけじゃなくって、その中間、好きでも嫌いでもないけど求められるならしてもいいという人が一番多いと思うんです。
自分から押し倒して「しゃぶらせろ」っていうまで好きな人はなかなかいないと。あと、求められるからしているけど、実はすごく傷ついていた、とかいろんなパターンがあると思うんです。

二村:フェラチオしながら傷ついている女の人は、いっぱいいるだろうね。相手に恋をしてしまっているけど、もしかしたら愛すべき男ではないのかもしれない。
それを推し量るときにセックスはひとつのバロメーターになる。
フェラチオをしている時に、なんだか心が苦しくないか。苦しかったら、その恋愛はやめたほうがいい。

【次回は、男と女の不均衡についてお送りします】

Text/大泉りか

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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