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  • 2013.01.23

セックスを餌にしても幸せにはなれない(2)/二村ヒトシ×大泉りか

AV監督でありながら著書多数の二村ヒトシさんに、SM嬢の経験を持つ大泉りかさんがインタビュー。女性はもっとオープンになったほうがいいという思想がしっかりと広まったからこそ、オープンになれない女子の悩みは寄り深いものになってしまっているのでは?という大泉さんに対し、二村さんの回答は?

 AV監督でありながら、『恋とセックスで幸せになる秘密』、『すべてはモテるためである』などの恋愛書の著作を持つ二村ヒトシさん。女性が積極的なアダルトビデオの先駆者であり、撮影現場で多くの女優の性を見つめてきた氏に今回の特集「セックスセンス」について語っていただきました。
第1回「セックスと恋の呪いにかかった女たち」も合わせてお読みください。 (インタビュアー:大泉りか)

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愛はあまり性欲とは結びつかない

大泉:女性のセックスについて、「もっとこうしたら」というアドバイスはありますか?

二村:「女性はもっとオープンになったほうがいい」っていうのはもう、十分に行き渡ったよね(笑)。むしろ、行き渡りすぎている。

大泉:でも、そういった情報が皆に行き渡っているからこそ、オープンになれない女性の悩みはさらに深まると思うんです。
「オープンになったらいいっていうのはわかっているけど、なれないのはどうしたらいいの?」って。

二村:うーむ。実際に、AM編集部宛に、そういう悩みとかって寄せられていますか? 
奔放になれないっていう相談や、逆に奔放になったら男が逃げていっちゃったんですけど、どうしたらいいですかっていうクレームとか(笑)。

編集部:「素直に奔放したほうがいいと頭ではわかっているけど、でも、できない」というような「でも」が多いという印象です。臆病な女性が多いなと思うんです。

二村:臆病だっていうのは、自分が恋をしている相手から嫌われたくないからですよね。
でも、嫌われたくない、という気持ちがそもそも自己肯定感のなさ。
そういうことを思わなくて済む相手とヤレばいいって思うんだけど。
でも、そういうことを思わなくてすむ相手というのは、愛の関係にあるわけで。
そうすると、性欲が沸かなくなってきて、それでセックスレスになっていくんですよね(笑)。
セックスレスって相手が嫌になってセックスをしなくなることもあるんですけど、男にとっては、〝恋"が〝愛"になってしまって、もう今更セックスはしなくていいよっていうことも多いんです。 つまり、愛はあまり性欲とは結びつかない。

大泉:家族とはセックスをしない、と。

二村:でも、女の人は、一緒に長く暮らしていてもスキンシップは求める。
旦那に今更ときめきたいっていうのとはまた違った話で、「触っていてもらいたい」とか「抱きしめていてもらいたい」とかあるじゃないですか。だから、セックスレスの問題は避けられないと思うんだけど、でも、AMの読者は独身の女性が多いと思うので、また違うよね。
自分が恋をして、ドキドキしている相手と楽しくセックスがしたい、というのが望みなのかな。

“めくるめくセックス”が本物で、“自分のやってるセックス”のほうが嘘なんじゃないか

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編集部:20代後半から30代の独身女性は、「できたら結婚したい」というのが本音だと思うんです。

二村:恋にときめいている相手もいるけど、自分の人生についても落ち着きたくもあると。

編集部:そう。揺れているんです。しかも、できたらセックスを通して幸せになりたい、と。

大泉:満足のいくセックスがしたいんですよね。

二村:本にも書いたんだけど、女の人の多くは、世の中に“めくるめくセックス”というものがあると夢見ていたりするよね。

大泉:そうですね。世の中にはもっと気持ちがいいことがあるんじゃないか、と密かに思っています。

二村:一方で、自分が彼氏と普段している生活としてのセックスやマスターベーションとは、それを結びつけてなくて、自分の身体のメカニズムもよくわかってない。そもそも“めくるめくセックス”と、“自分にとって本当にいいセックス”というのはかけ離れていていることを知らないといけない

大泉:うーん……、“めくるめくセックス”を想像してみると……私の脳内には「3人のイケメンにかしずかれて……」みたいな絵が浮かんでくるんですが(笑)。

二村:叶姉妹的な(笑)。

大泉:でも、それってパートナーとのセックスではありえないですよね。

二村:うん、ありえない。

大泉:“パートナーを相手にしためくるめくセックス”という前提で妄想しても、「高級ホテルのスイートルームでシャンパン片手に……」ってこれまたベタで申し訳ないんですが(笑)、考えれば考えるほど、“めくるめくセックス”の迷宮に迷い入っていく気がします。

二村:もうちょっと地に足がついていないといけないですよね。
ようは男と女の欲望の質の違いなんですよ。
男はオナニーしながら、頭の中に“めくるめくセックス”があるんだけど、あまりそれと現実とを重ねていない。まぁ、重ねようとして、目の前の女とセックスをしてるのに肯定できず、ヤリチンになっていく男もいるんだけど。
でも、女の人の場合には、“めくるめくセックス”が本物で、“自分のやってるセックス”のほうが嘘なんじゃないかっていう自己肯定できてなさがあって。

大泉:自分のセックスは、そこに届いてないって思ってるんですよね。

二村:そう。それは、ひょっとして、女の人が“ポルノ”というものに慣れていないからではないかと思うんですよね。
もしかして今回のAMのセックス特集も、まさにそうなるかもしれないけど、女性向けのメディアは、いわゆる官能小説的な“めくるめくセックス”を提示しようとするじゃないですか。
それをフィクションのポルノとして楽しむわけでもなく、かといって、自分の生活に取り入れるわけでもなく「これができていない私って、ダメだ」っていう自己否定感を持ってしまう。そうなってしまったら罪深いことですよね。ますますイケない女が増えていってしまう。

セックスはそもそも何のためにするのか

大泉:そもそも、みんな、イってるんですかね。

二村:オナニーならイケるという女性が多くて、セックスでもイケる人は半分くらいじゃないですかね。
で、そのイケる女の人で「AVに出て初めてイっちゃった、やっぱ男優さんってすごい!」という先ほどの例ですが、それは違うんですよね。それは貴女が彼氏の前で緊張してるからイケないのであって、彼氏とのセックスでイケないのは、彼氏が下手だからじゃない。
彼氏に“自分の一番見せてはいけないと思っているところ”を見せられないからだと。

でも、それを見せるのがセックスだと思うんです。
一番、自分がカッコワルイと思っているところを見せあう行為。イクとかイかないとか、そんなことが目的ではない。

大泉:イクことがセックスの目的ではないとしたら何がセックスの目的なのか、というと。

二村:それは、僕の中では答えが出ています。
セックスの目的は「相手が私にしてくれた行為で私が気持ちよくなった、そのことが相手に伝わること」そして「私に愛撫されたり、私の身体を味わうことで相手が気持ちよくなった、そのことが私に伝わること」つまり、コミュニケーションです。
「私の快感が相手に伝わった」「相手が喜んでいることが私に伝わった」これが無いんだったら、オナニーで充分なわけじゃないですか。
ところが、この男を逃したくないと思ってセックスしてる女の子は「相手は楽しんでくれてるかしら?」て心配ばかりしながら、本人は楽しくないのに無理してフェラチオしたり騎乗位したりしてる。そりゃあ、そんなセックスは楽しくないよね。

大泉:お互いに言葉足らずなんじゃないですかね。褒めあえばいいのに。
セックスじゃないんですが、友達が、旦那がご飯を作ってくれたら、とにかく褒めるって言ってて。たとえ、キャベツの芯に火が通ってなくても「すっごい美味しい!」って。褒めて煽てて、調子にのってもらって、とにかく一回でも多く食事を作ってもらうと(笑)。
それを聞いて以来、私もとにかく褒めるようにしています。
そうすると、男の人ってものすごく喜びますよね。で、結果、セックスは頑張ってくれるし、回数も増えて私は大満足、と。『北風と太陽』の寓話の奥深さをいまさら再認識しました。

二村:素晴らしいね。男のチンコは褒めたほうがいい。

大泉:でも、褒めすぎてたまに調子に乗せすぎちゃうことも。「本当にいいチンコだ!」って毎日褒めていたら逆に「俺のチンコさぁ、どう?」とか聞いてくるようになって、面倒になって「うん、普通にいいよ!」って適当に返したら「えっ、普通に……平均? どういうこと?」って途端にしょんぼりしちゃって……。
その時に思ったのは、男の人って本当に言葉通り受け取るんだなってことで。

二村:男は基本的にバカですからね。「男ってバカなんだ」ってことを知って、それでも、そんな男をバカにせずに愛せる女性が、恋愛やセックスで幸せになれるんじゃないだろうか

セックスを恋愛の餌にしても幸せにはなれない

大泉:持ちあげればいいというと乱暴ですけど。こちらが歩み寄った分だけ、向こうも歩み寄ってくれますよね。

二村:そう。相手の性感帯を探すことと、相手が言われたら嬉しいことを口に出して言うのは同じだと思うんだけど、かといって褒めすぎるとつけあがるから、そのちょうどいいところを探す。

大泉:なるほど、コミュニケーションですね。

二村:お互い自分というものをネタにしての相手と“価値の交換”をすることがコミュニケーションということだと思うんだけど、自己肯定感がないせいで、皆、できなくなっちゃっていて。
一方的に「あの人は好き」になっちゃうか、もしくは「好きになられてウザいけど、結婚したいから妥協しとくか」とか……、非常に良くないですよね。
じゃあ、その自己肯定感が男にはあるかというと、一見あるように見えても、実はそれは男性社会に守られているだけのインチキ自己肯定感。
ところが、それに地位や収入や外見なんかがついてくると、女の人はそれでいいと思っちゃったりもして。そんな状態なのに、“セックス”というものがそこに変わらずあるから、セックスが何のために行われるか、ということがすごく間違っちゃっている。

大泉:間違ったセックスって何ですか?

二村:セックスを“恋愛の餌”にしている人すごくたくさんいるでしょ? 
自分はセックスが好きなわけじゃないんだけど、男性から関心を持たれるためだったり、自分が恋した相手を繋ぎとめるために、自分の快感のためではなく、相手へのエサとして自分の身体を与えちゃっている。そういう人は幸せになれないと思うんです。

大泉:確かに、セックスを何かを得るための道具にしている女性には、気持ち悪さを感じます。
逆に男は男で、何度かセックスした相手にフラれると「風俗だったら○○円かかったから元は取れているな」とか自分を慰めたりとか……。

二村:間違っていますね……。男も女もセックスの使い方を間違っている。そのくせ、こう、肉体や心の芯にぐーっときちゃうものだから、やっかいなんだ。なぜ皆、恋愛とか、その先の結婚や生活に、セックスというものを結びつけるのだろう。

【次回に続く】
 次回は、「セックスと結婚」についてお送りいたします。

Text/大泉りか

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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