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  • 2013.06.25

肉体を解放し貪欲に求めた醜女/『そして俺は途方にくれる』(後編)

前回に続き、『そして俺は途方にくれる』のヒロイン・絵里子に迫ります。

第9回:渡辺やよい・著『そして俺は途方にくれる』(後編)

二人が求めているものは一致している

そして俺は途方にくれる 渡辺やよい 双葉社 大泉りか 官能小説
by Tiffany Bailey


 ヤリチン以外にセックスが下手くそだ、と言われる存在、それはイケメンです。
これは、イケメンならば、女が勝手に群がってきて、勝手に求めて、勝手に腰を振って勝手に満足してくれる。だから、技巧に走る必要がない、ということに因しているようです。

 その理論からすればセックスが上手いわけはないイケメンのヤリチンそして俺は途方にくれる』の主人公、靖之。彼のセックスはこんな感じです。

「脱げよ」
 と彼が言ったから、いそいそと裸になったのに、彼はわたしのたるんだ身体をうんざりしたように上から下まで眺めると、「取りあえず自分でしてろよ」なんて言う。

  (中略)

 オナニーしながら、いろいろいろいろ考えているうちに、ふいに今の自分がずいぶんみじめで、ぼろぼろ泣けてしまう。泣くとなんだか気持ちが良くておうおうと声を上げて号泣してしまう。さすがに靖之は、眉をしかめて携帯から顔を上げ、どこもかしこもべとべとに濡れているわたしの姿を見て、よっこいしょっと立ち上がり、ジーパンの前だけど開いて、
「仕方ねぇなァ、入れてやるよ、ケツを出せよ」
 わたしは、しゃくりあげながら、四つん這いになってお尻を靖之の方に高々と突きだし、肩をひくひくさせて、待つ。
(そして僕は途方に暮れる P29L1-P30L7)

 わお。やっぱり最悪……。と思いきや、実はこのセックスに満足している絵里子
なぜかというと、絵里子が求めているのは、靖之の愛情ではないからです。

イケメンに遠慮して気持ちよくなれないだけ

そして俺は途方にくれる 渡辺やよい 双葉社 大泉りか 官能小説
そして俺は途方にくれる』/著・渡辺やよい/双葉社

 靖之に愛も、気持ちよくしてくれる技巧も求めない絵里子
「ただ、そこに身体さえあればいい」とシンプル。
身体だけの関係だったはずなのに、最後にはやっぱり愛して欲しいという女の欲にうんざりしていた靖之にとって、そんな絵里子は醜くとも、居心地のいい存在。
なぜ絵里子は肉体的に貪欲であると同時に精神的に無欲な人間になったのか、また、なぜ靖之は女にこれほどまでに絶望しているのか……は本編でお楽しみいただくとして、『イケメンとヤリチンはセックスが下手くそ説』って嘘、ですよね。

 イケメンがセックスに頑張らない、というのは、美人は化粧しなくても素材のままでイケるということに近いと思うのですが、
美人でも「モテたい」と思っていたり「好きな人に好かれたい……」と思っていれば、ちゃんと身なりに気を使いますよね。イケメンだってそうです。
もしもイケメンとのセックスが「あんまり気持ちよくない……」と思っているのだったら、ただたんにイケメンに遠慮して気持ちよくなれていないあなたが原因です。そしてヤリチンだってそう。
勝手なセックスの後に「もうちょっとちゃんとヤってよね」と文句を言われるほうが面倒くさいから、今まで抱いた大勢の女で覚えたテクニックを使ってちゃっちゃっとイカせてくれるくらいはします。

 そんなエッチは愛がないから嫌だ――そうなんです。
心が満たされていないから、『気持ちよくない』と思ってしまう。
そんなあなたがセックスに求めているのは、純粋な快楽ではなく、愛されているという証拠だったり、抱かれるに価値する女だという自己承認だったりします。
でも、それって本当に『肉体が気持ちのいいセックス』をしていることになるのでしょうか。
とかく精神が重宝されがちな昨今、そろそろ、置いてけぼりの肉体の力を取り戻すことが必要だと思います。
肉体が解放されると精神も解放される。
セックスの時くらいは、ああだこうだと考えすぎる頭を静止して、身体の声に耳を傾けてみませんか。

次回は、「自分で縛ることにハマって…人に言えない性癖の話(前編)」をお届けします。

Text/大泉りか

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ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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