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  • 2013.06.11

「女を売る」ことで得たもの?『夜ひらく』(後編)

 前編に続き、『夜ひらく』のヒロイン・実羽の魅力に迫ります。

【大泉りか・官能小説から読み解く、ファムファタールのススメ】
第8回:草凪優・著『夜ひらく』(後編)

夜ひらく 祥伝社文庫 草凪優 大泉りか 大泉りか
by jorgemejia

 つい先日、週刊文春の『女が嫌いな女』という企画で、ペニオク詐欺に加担した某グラビアアイドルについて、コメントを求められました。

「年齢詐称、デキ婚だったことを隠したりと、嘘だらけ。おそらくおっぱいも偽。あげく詐欺だなんて許せん!」
という世間の声を代弁したのですが、はて。
本当にわたしはこの女に騙されていたことを怒っているのでしょうか。

 答えは否です。
ただなんとなく腹だたしい存在であると思っていたところに、叩くための正義が見つかった、
というのが正しいところ。
そして、おそらくはわたしだけではなく、世間様もまた同じなのではないかと……思います。

 では、なぜ彼女を見ていると腹がたつのかというと、
それはやはり『女を売りにしている』ところがあけすけだからでしょう。
『女を売りにしていること』がバレバレなのに、ちやほやされているのが気に食わなかったということです。

 が、しかし。一方で、わたし自身『女を売り』にしたことがないか、というとそれもまたないとは言えません。
権力者を目の前にして、盛った胸の谷間を見せつけたり、きゃぴった声で腕を組んだり、カラオケで腰に手をまわされながらデュエットしたり……と仕事や人間関係をスムーズに進めるため、
また、何かしらの欲しいものを得るために、女を売ったことはいくらでもあります。
そんな後ろめたさが、わたしを引き裂き、『女を売りにしてるくせに、それがバレてないと信じて堂々としている女』に対して苛立ちを覚えるのです。

 『夜ひらく』(草凪優著:祥伝社文庫)のヒロイン実羽もまた、『女を売る』ことを与儀なくされます。
一発逆転のチャンスである老舗ファッション誌『リッシュ』の専属モデルオーディションに着ていく服を探しに立ち寄った青山の街で、実羽は新進の事業家・平松と出会い、そして、オーディションに着ていく服と交換に、自らの体を与えることとなるのです。

「あの『アトワム』のCMのカワイ子ちゃんも、やっぱり女なんだねえ。発情のフェロモンがぷんぷん漂ってくる」
 実羽は泣き出してしまいそうだった。これほどの恥辱にまみれるくらいなら、お金も仕事も愛する男も失ってしまってかまわない。本気でそう思った。体にからみついてくる平松を振りほどけなかったのは、単純に力で敵わなかったからだ。あるいは、この愚劣な営みを続けようとする平松の意思が、行為を中断したいという実羽の意思よりずっと強かったからだ。

 指がシーツの中に入ってくる。いやいやと身をよじる女を手なずけようと、的確に性感のポイントを探り当ててくる。繊毛を掻き分けて、肉の合わせ目にある女の急所をいじりたててくる。

 実羽の神経もまた、次第にそこに集中していった。快感がそうさせたのではない。この恥辱から逃れるためなら、愉悦に溺れて正気を失ってしまったほうがまだいい、と思ったからである。 (『夜ひらく』P157 L6-P158 L2)

 こうして自分を売り渡した実羽は、平松の手を借り、やがてスターダムへとのし上がっていきます。
と、同時に、熟練したテクニックを持つ平松により開発され、ウブだった肉体も淫らに開花。
愛などなくてもセックスで感じ、絶頂に達することを知った実羽。
心を裏切った肉体を追いかけるように、その精神もまた変化を遂げていきます。

 愛のないセックスを行うのは人間ではない。けだものだ。
あるいは、ただ欲情に駆られたマシーンだ。ならば、と実羽は思った。
もう我慢している必要はない。欲望の翼をひろげ、思うがままに振る舞ってしまえばいい。
実羽は平松のものを舐めるのをやめ、上体を起こした。
「おい、どうした」
虚を突かれている野崎に抱きつき、押し倒してしまう。
「わたし、もう我慢できません」

 長い黒髪を振り乱して、でっぷり太った野崎にまたがっていく。和式トイレにしゃがむ要領で両足をM字に開き、そそり勃つ肉塊を女の花にあてがった。先ほどのフェラチオで塗り付けた唾液はとっくに乾いていたけれど、問題はなかった。実羽のほうが、濡れすぎるほど濡れている。 (『夜ひらく』P206 L9-P207 L6)

 しかし、よくよく考えてみれば、『女を売った』後に感じるのは、後ろめたさだけではありませんでした。
自らの体を自由に使えるという解放感や、自分の強さへの恍惚といった、一種の快感を覚えることもあるのです。
それを知ったことが、わたしが『女を売った』ことで手に入れたものかもしれません。
では、本書のヒロイン実羽は『女を売って』何を手に入れたのか……は、本編でお楽しみくださいませ。

夜ひらく 祥伝社文庫 草凪優 大泉りか

書名:『夜ひらく
著者: 草凪優
発行: 祥伝社文庫 
価格:670円

 次回は、美男と醜女を繋ぐ、金とセックス『そして僕は途方に暮れる』をお届けします。

Text/大泉りか

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ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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