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  • 2013.06.05

モデルの卵が大人の世界に染まっていく『夜ひらく』(前編)

第8回:草凪優・著『夜ひらく』(前編)


モデルやレースクイーンが所属するバドガールコスのお店!?
下心が渦巻く、夜のギロッポン

夜ひらく 祥伝社文庫 草凪優 大泉りか 官能小説
by Hauptillusionator

 今から十数年前のこと。当時大学生だったわたしたちの間で『バドの店』と呼ばれていた店が、東京・六本木にありました。

『バドの店』とは正しくは『バドガールと呼ばれる、バドワイザーのロゴのプリントされたボディコンワンピ―スを着て接客をするキャバクラ』なのですが、この店は少し変わった雇用システムを採用していました。

 この店にいる女は3種類。
週4日以上出勤の『レギュラーメンバー』、週2~3日の『ヘルプ』、そして『登録』
『登録』とは、事前に面接を受けてキャスト登録をしておけば、働きたいと思った日に電話をかけ、もしもその日に出勤する女の子の枠がまだ埋まってなければ出勤を許されるという完全取っ払いの日雇いシステムです。

東京の中でも最もチャラい六本木という場所柄か、
その店が求めていたのは、いわゆる『プロの女』ではなく『ちょこっと来てみちゃいました!』という好奇心旺盛な素人
そんなギャルを大量に集め、合コンノリで接客するという方針を取っていたのです。

一方、わたしたちにとっても、同伴や指名などのノルマがないという気楽さに加え、ちゃっちゃっと夜10時くらいから始発まで働けば、一万なんぼゲットできるというのは、十分に美味しい条件でした。
なので、暇な週末があると「バドっちゃう?」と友達と申し合わせては、日比谷線に揺られて出稼ぎへと向かったものでした。

 しかし、何度がその『バドの店』に出勤していくうちに気が付いたことがありました。
それは、やたらと綺麗な女性が多く働いていることです。
わたしたちのような『登録』は別として、レギュラーやヘルプの女の子たちの、ルックスのレベルがやたらと高いのです。
「さすがはギロッポン……」
そう感心していたある日のこと。常連だという男のひとことで、その謎は解けました。

「この店、芸能プロダクションが運営してて、所属してるモデルとかレースクイーンを働かせてるんだよ」

 なるほど。女の子たちのレベルに関してはそれで納得できましたが、
しかし、なぜ芸能人様が夜の商売などやっていらっしゃるのか。
ファンとかマスコミとかに見つかったらまずくね? つーか芸能人ってお金持ちなんじゃないの? とまだウブかったわたしを、その常連客は鼻で笑っていいました。
「モデルだレースクイーンだで食えてるのなんて、ごく一部だし、こういう店でコネつけようって考えてる女も多いからね」

 というわけで、前置きが長くなりましたが、今回紹介する一冊は、夜ひらく』(草凪優著:祥伝社文庫)
ヒロインの上原実羽は売れないモデルです。

売れないモデル、上原美羽が再起を望むオーディションのために

夜ひらく 祥伝社文庫 草凪優 大泉りか 官能小説
夜ひらく』/著・草凪優/祥伝社文庫/¥670

 高3の夏、東京に遊びにきたときに原宿でスカウトされ、高校を卒業するのと同時に上京してきた。スカウトされたといっても、あまたの仕事が用意されていたわけではなく、俗にいうモデルの卵だった。人気モデルになろうなどと、大それた野望があったわけではない。 自分ごときがそんなふうになれるはずがないとクールに見極めながらも、「東京でモデル」という甘美な響きにまいってしまった。

 大学にいったと思って四年間好きにさせて欲しい、と大反対する両親を説得した。
成功するための下積み期間、というつもりではなかった。 田舎町で普通に暮らしてたら見ることのできない華やかな世界を、ほんのちょっとだけのぞいてみたかったのだ。 カッコ悪い言い方をすれば、青春の思い出づくりというやつである。
(夜ひらく P16L2)

 が、現実は甘くありません。

 有名コンテストで賞を獲得し、スター街道を約束されてデビューするようなごく少数の例外をのぞけば、モデルが仕事をとるために実力者に体を与えることはこの世界では半ば常識なのだった。
(中略)
さして輝きがあるとも思えない同期が次々にいい仕事をゲットしていく様子を横目で見ている日々が一年も続くと、田舎育ちの鈍な娘でもさすがに勘づいた。(夜ひらく P17L12-P18L1)

 綺麗ごとだけでは渡っていくことのできない芸能界。
そこに馴染めずにいる自分はモデルとしての未来になんの期待ももっていない。
けれど、せめて、青春の“輝かしい思い出”のひとつくらいは欲しい……。
そう思い悩んでいたある日のこと、ヒロインの元に大きなチャンスが訪れます。
二、三十代をターゲットにした雑誌の中でも、最大部数を誇る名門ファッション誌『リッシュ』のモデルオーディションを受けることになったのです。

 名門ゆえ、コネも寝技も通用しないこのオーディション。
一発逆転できるチャンスの到来に「なんとしてでも合格したい」と思う実羽でしたが、同時に悩ましい問題が浮上します。オーディションに臨むにふさわしい洋服を持っていないし、買うお金もない……という悩みです。

【後半へ続く】

Text/大泉りか

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ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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