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  • 2013.01.11

“愛されたい”から“愛したい”へシフト『やわらかバスト』(後半)

大泉りか 官能小説 やわらかバスト 内藤みか
by Misterwasuu

 母性が持つ“『与えたい』”という欲望はいったいどういうものなのか――。前回に引き続きご紹介するのは、女流官能作家の内藤みかさんの短編集やわらかバスト(悦の森文庫)の一編『母乳ぴゅぴゅ』。

 小さな広告代理店勤めで、日中は子供を保育所に預けて働くワーキングマザーのカナエ。以前は満足していた夫のセックスに、産後になって突然、不満を覚えたその理由はというと……。


 セックススタイルさえも、出産してからは微妙に変化してきていた。私のほうが夫に尽くしたくなってきてしまったのである。特に息子が一人歩きできるようになってからは、その傾向に拍車がかかっていた。とにかく誰かを可愛がりたくて、誰かを抱きしめたくてしかたがないのだ。(『やわらかバスト』P.176 L4~7)

 が、成長しつつある息子は、抱っこしていたくても以前にように腕の中でじっとしていてはくれない。淋しくなったぬくもりを夫に向けて抱擁しようとも、ありがたみを感じることもなく振り払ってしまう。

 不意に、彼らは私なんかいなくてもいいのではないか、という気持ちに私は駆られた。私は誰かに愛を与えなければ生きていけない、とその時強く感じていたが、家族たちは皆、精神的に独立しているのではないか、と。
(『やわらかバスト』P.179 L14~16)

 そんな、愛の与えどころに困ったカナエが選択したのはテレクラ。そこで母乳専門ダイヤルを発見し、そこで母乳マニアのヒロシと出会うのです。

「最高に張ってるよ」
 もう何人ものママのおっぱいを吸っているという彼は、手のひらで乳房をくるみ、ミルクを吸いだすしぐさも慣れている。勢いよく栓を捻られた乳首は、どッ、と白い液を唇の中へと流し込んだ。
(中略)
「あ、あぁん、あッ……あ」
 自然と声が漏れてくる。初対面の男の前なのに、私はナチュラルでいられた。妊娠前までは、異性と寝る時、自分を良く見せようと高めの声を出したり、ワザと感じているフリをしたりもしてきた。だが、そんなことをする気は、今は全然なかった。自分が取り繕ってきたのは、男にたくさん愛してもらいたかったからなのだ。愛してあげたい今は、ただ素のままでいたかった。ここまで変わっていた自分に私自身驚いたが、こちらのほうが、気持ちはひどく、ラクだった。(『やわらかバスト』P.191 L9~P192 L4)

『愛すること』を覚えると、素の自分を曝け出すことさえもできるようになる。愛を乞うために取り繕うことをやめた先には、自己の開放があるのです。
2013年、『愛されたい』から『愛したい』へ欲望をスライドさせてみてはいかがでしょうか

大泉りか 官能小説 やわらかバスト 内藤みか

書名:『やわらかバスト
著者:内藤みか
発行:祥伝社文庫
価格:¥630(+税)


 マニアックに思える『母乳プレイ』ですが、女性の心理描写がしっかりしているため、ぐいぐいと引きこまれてしまいます。

次回は、「『ツンデレ』の進化形態、『ツンマゾ!』に迫る(前半)」をお届けします。

Text/大泉りか

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ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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