女性向けAVのパロディと「AV OPEN」の勝機――『兄カノ。』に見る男性向けメーカーの思惑

『兄カノ。』の3つのポイント

 どうしてもSILK LABOの話が多くなってしまうこの連載だが、今回は、メインを他メーカーの作品に据えよう。
今回扱うのは、『兄カノ。~禁断の恋 さくらゆら』というAVだ。

  この作品の興味深い点は大きく分けて3点ある。
第一に、同じストーリーを男性側の視点から描いた男性向けAVが直後に発売されたという点。
第二に、普段は男性向けにAVを作っている「kawaii」というメーカーが作った女性向けAVであるという点。
第三に、このAVが、「AV OPEN 2015」のエントリー作品であるという点である。
以下、順番に説明していこう。

『兄カノ。』のストーリー

 内藤みか・冴木ぽてり作のコミックノベルを原作とした、『兄カノ。~禁断の恋 さくらゆら』のストーリーは以下のとおり。
ひなた(さくらゆら)は、恋人の悠人(小田切ジュン)が暮らす家に週末お泊りデートするのがお決まりの流れ。
その家に、悠人の弟である翔太(有馬芳彦)が、芸能人になるため大学をやめて東京に出てきたと言って突然訪れてくる。

 ひなたは、悠人とのセックスの盗撮動画をネタに翔太に脅迫され、フェラチオを強要されたりしつつも、「俺、お姉さんがいいんだ。初めての人はエッチに慣れてる大人の女の人がいいって言うじゃん」というまさかの童貞宣言(童貞が金髪に染めてたまるか)に不意にドキッとしたりする。

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 有馬芳彦 『兄カノ。~禁断の恋 さくらゆら』

 ある雨の日、あわや挿入か、というところで悠人から電話が入り、タイのバンコクに転勤が決まったのでひなたにも付いてきてほしいと告げられる。
2人の男の間で揺らぎつつも悠人と別れたひなたは、その3か月後、翔太と道端で偶然出会い、無事初めてのセックスを果たしてめでたしめでたし。

 ツッコミどころだらけのストーリーはぜひ視聴して確認してほしいが、カメラワークなども含め他メーカーの作品とフォーマットはそれほど大きく違わない。
強いて違いを挙げるなら、タイトルの次の場面が、目が覚めて違和感を覚えたひなたが布団の中を覗くと悠人がクンニしている、という『呪怨』のエロパロみたいなシチュエーションなので、性行為シーンまで「話が早い」ということぐらいか。

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 呪怨 『呪怨―終わりの始まり―』

 さて、この『兄カノ。』の翔太目線ver.として、『兄貴の超かわいい彼女を童貞の僕が寝取ってヤった。 さくらゆら』という男性向けAVも作られている、というのが興味深いポイントの1点目である。

 男性向けAVが女性向けに編集される場合については、「GIRL’S CH」を例に第2回で説明したが、今回はその逆だ。
男性向け版では、どこに差異があるだろう。