女性向けAVの3Pと「欲望の三角形」――密やかに現れるホモソーシャル

男から見た3Pの嘘くささ

東大院生のポルノグラフィ研究ノート 服部恵典 東大 院生 東大院生 ポルノグラフィ 研究 David Gasparean

 この連載は、男性の私が女性向けポルノを視聴していて「こんなん見たことないわ」と思ったシーンを分析することが一つのテーマになっていると、初回で書いた。
初回ではハメ撮りを取り上げたわけだが、今回はSILK LABOの「Triangular」シリーズ、すなわち女性向けAVの3Pについて述べたい

 このシリーズを視聴していてまず不思議だなと思ったのは、ふつうの人ならば一生に一度体験するかどうかも怪しい3Pという非現実的なプレイにすら、ストーリー的な裏付けがあることだ。
「同級生と久々の再会で、隣に友達が寝てるのに元カレに押し倒されて…」(『Suddenly Triangular』)だとか、「以前勤めていた会社の上司と同僚とカラオケボックスで…」(『Addictive Triangular』)だとかである。

 私としては、3Pやハメ撮りはAV用のプレイなのだから無理やり整合性を取ろうとすると逆にストーリーの現実感のなさが目立つのではないか、そこは割り切ってサクッと始めてしまえばいいじゃないか、と思う。
女優の両サイドから突然ぬっと2人男優が現れた方が、私はかえって「演技ではないな、ノンフィクションだな」と感じるのだが、女性視聴者にとってはどうもそうではないらしい。

 仮説にすぎないが、AVを視聴する女性の多くは「急に3Pなんて嘘くさい」と感じ、男性は「こんなストーリーは嘘くさい」と思っているのだろう。
つまり、男性向けAVも女性向けAVもそれぞれ質の違う嘘くささをはらんでいるのだが、どの部分を「フィクションだから仕方ない」「嘘だけどリアリティがある」と思うのかについては、どうもジェンダー差があるようである。

 まあ、この点については、またいつか掘り下げられたらと思う。
今回、より詳しく書きたいのは「Triangular」シリーズを視聴していて困惑した別の部分、すなわち、2人の男優の親密性である。