ラストは全員燃え死ぬ!?エロを期待して観たロマンポルノの思い出

 前回までの日活のみなさんへのインタビューとあわせてご覧ください。

1971年生まれのロマンポルノと1971年生まれの私

日活ロマンポルノ ポルノ映画 復活 Donald Tong

 何を隠そう、日活ロマンポルノが誕生した1971年は私が生まれた年。いわば同級生だったりします。
そう話すと、今回インタビューを受けてくださった日活の高木さんは、
「それは運命ですよ! ロマンポルノの魅力にどっぷり浸かってください!」
と明るく言ってくれました。

 でも、実を言うと、これまでロマンポルノにはあまり興味がなかった私。
それは「ロマンポルノはエロくない。ヌケないコンテンツだ」と思っていたからに他なりません。

思春期の頃は「ヌケないエロ」だと思ってた

 私が初めてロマンポルノに触れたのは、思春期の頃。今から30年ほど前でしょうか。
はっきりとは覚えていないけれど、中学から高校にかけての時期でした。
うちの父親というのは、寝室の押し入れの中にいろんなオナネタを隠し持っているむっつりスケベ(私とそっくり!)。ひょんなことからそれを見つけて、ときどきご相伴にあずかっていたのですが、その中に「日活ロマンポルノ」のVHSテープがあったのです。

 洋物の裏ビデオやビニ本(局部が丸見えの写真集)と一緒に隠してあったそれを「すっごいスケベで卑猥でどエロいものに違いない!」と確信した私は、やる気満々でビデオデッキにセット。しかし画面に流れてきたのは、ひたすらバコバコやっている裏ビデオとはまったく別の世界でした。

「なんだこれは!」

 思春期の私にとって、それは一種のトラウマにもなりかねない衝撃映像でありました。
行き場のない性欲を抱えたチンピラたちの集団レイプに、バイオレンスな女狩り。じっとり暗いSMがあったかと思えば、悪ふざけとしか思えないほど明るくコミカルに描いたものもある。AVでは考えられない、ちょっと頭の弱い女性が出てきたり、最後には全員燃えて死んでしまうような不条理なものもありました。
女性の裸こそ出てきているものの、オナニー用のセックスとはまるで違う。
予定調和なんてくそくらえの、わけのわからないこのパワー……こ、怖い……。

 とはいえ、それから後も押し入れの中でVHSを見つけたり、ケーブルテレビで放映があったりすると、私はロマンポルノを観ていました。当時は今のようにネットやスマホで簡単にエロ動画を観られる時代じゃなく、激しくエロに飢えていたからです、

 でもやっぱりそれらは「ヌケないエロ」でしかなく、大人になってAVがたらふく観られるようになると、すすんで手を伸ばそうという気持ちも徐々になくなっていきました。

ロマンポルノはセックスを丸ごと描いた大人の文化

 でも今回の取材で新作ロマンポルノを観て、日活のみなさんの熱い話を聞いているうちに「もう一度ちゃんと観てみようかな」という思いが湧いてきました。
これまで「ヌケないエロ」としか思っていなかったロマンポルノに俄然興味が出てきたんですよね。

 そこで、家に帰って何本か観てみると……何これ、すっごい面白いじゃないですか!(※代表的な作品は、DMMのストリーミング動画を始め、いくつかのサイトで視聴することができます。)
スタッフさんおすすめの『(秘)色情めす市場』『一条さゆり 濡れた欲情』は女の逞しさ・生のパワーに圧倒されるし、相米慎二監督の『ラブホテル』は運命の男と女を描きつつも、どうしようもない男女の違いが滲み出ていて味わい深い。

 中でも『人妻集団暴行致死事件』という作品は(しかし、ポルノで“暴行致死”ってすごいタイトル!)、昔一度観てめちゃくちゃ後味が悪かったのだけれど、勇気を出してもう一度観たらまったく印象が違って驚くことしきり。観終えた後しばらくは、やるせない哀しみにしばらくボーッとしてしまいました。
ああ、これでオナニーしようだなんて、なんとおこがましいことを考えていたことかと!
そういえば当時はカラミシーンだけがお目当てで、それ以外のところは早送りしてたんだよなあ……(遠い目)。

 思えば、セックスってエロいだけのものじゃないんですよね。
哀しかったり、寂しかったり、乾いていたり、滑稽だったり。黒か白かで割り切れないことだってある。(というか、どっちかというと割り切れないことのほうが多いかも……。)
でも、たいした人生経験もなく「セックス=エロ」という目線しか持たなかった思春期の私には、それがわからなかった。

 セックスを、ひいては男と女を丸ごと描いた大人の文化。それがロマンポルノだったんだなと、45年目にしてようやく気づいたのでした。

Text/遠藤遊佐