そこじゃなくて本来の場所に入れて…/驚愕の体験『楽園の罠』(4)/AM官能小説

幻冬舎×AMが特別コラボ!危険な官能小説をお届けします。

第1回 ミステリアスな滞在者
第2回 危険な香りに誘われて
第3回 欲望の部屋へようこそ

【あらすじ】
夫との南の島への旅行で彩夏は同じホテルに滞在する駿に出会う。ミステリアスな駿に惹かれた彩夏は、駿の部屋を訪れ、ベッドに押し倒された。夫とは違う駿の激しい愛撫にひどく興奮してしまった彩夏は、バスローブの紐で両手首をきつく縛られても、抵抗することができなかった。

幻冬舎 楽園の罠 真野朋子 AM 小説

第4回 驚愕の体験

 駿の行動は予想外のことが多く、次に何をするのか想像がつかない。何年もの間、夫とルーティンワークのような性行為を繰り返してきた彩夏には、いささか刺激が強かった。だが同時にぞくぞくするほど興奮していることも確かだった。

 両手を縛ったままでするのだろうか。それが彼の嗜好なのか、それとも言葉通りただの遊びなのか、よくわからないが抵抗はしなかった。
「ほら、ちゃんと口を開けて」

 見ると彼は仰向けになった彩夏の顔の前に跨がり、自らの逸物を突き立ててきた。彩夏は驚いて思わず顔をそむけてしまったのだが、彼は容赦しなかった。無言のまま顎を掴んで向き直らせたのだ。

 観念して固く目をつぶり、うっすらと唇を開けてみた。するとその隙間にすかさずスティックがねじこまれた。生あたたかいが鉄の棍棒のような固さで、それがするすると喉の奥まで入っていく。

 うぐっ……と、むせそうになったが必死でこらえた。先ほどのお返しで奉仕しなければという思いがあったので拒否はできない。ゆっくりと挿したり引いたりが繰り返された。嵩が張って口いっぱいに広がり、深く突かれると息をするのも苦しかった。顔はすっかり紅潮して、額にはうっすら汗もにじんでいた。

 ああ、早く終わってほしい。そこじゃなくて本来の場所に入れてほしいのよ……

 彩夏は祈るような気持ちで固く目を閉じていたが、なかなか行為は終わらなかった。次第にスピードがアップし、彼のピストンが速くなっていく。彩夏は苦しくて顔を歪めた。唇から唾液がひとすじ流れ落ちていった。彼の息づかいも荒くなっているのが感じられた。

 すると唐突に、口いっぱい押しこめられていたモノがあっけなく抜けた。彼が体を引いて抜き取ったのだ。彩夏が薄目を開けてみると、今度は噴射が始まった。

 二度三度と白い樹液が勢いよく発射され、飛沫は彩夏の顔に落ちた。べっとりと濃い液が顎と頬と胸にまで飛んできた。
「ううう……」

 彩夏は言葉にならない呻き声をあげた。一連の行為が、まさかこんな形で終結を迎えるとは思ってもみなかったのだ。
「はぁ、出ちゃった……あ、この部屋にはティッシュがないんだよ。ちょっと待ってて」

 彩夏の両手は胸の下あたりで縛られているので拭うこともできない。彼が部屋から出て行くのをただ見ているしかなかった。

 前代未聞のひどい体験だ。彩夏はなかば放心状態だった。

 早く服を着て部屋を出て行きたいのだが、彼はなかなか戻ってこなかった。のんびりシャワーでも浴びているのだろうか。彩夏は全裸のまま手首をきつく縛られ、しかも顔は汚されたままで放置されていた。男のエキスは、いったん体外に排出されてしまったらただの汚物でしかない。生臭いような臭いも鼻についてきた。
「ごめんね、さあ」

 ティッシュの箱を抱えて彼がようやく戻ってきた。そして液が飛び散った箇所を丁寧に拭った。
「これをほどいて」
「ああ、そうだったね」

 彼は固い結び目をゆっくりと解いた。
「縛ったりするのが好きなんですか?」
「……ちょっとした遊びだよ。特に意味なんかない」

 広いベッドルームの隅には赤い大型のスーツケースが置かれていた。彼の妻の物だろうか。黒のピンヒールのミュールも近くにあった。クローゼットの中の服も見てみたい気がしたが、とりあえず自分が服を着る方が先だ。
「私のワンピースと下着は?」
「ええっと、どこへ置いたかな。なにしろ部屋が広いもんで」
「もう、いや……もう待てないわ」
 彩夏は床に脱ぎ捨ててあったバスローブを拾い上げると、裸の上にさっと羽織った。腰のヒモを結びながら部屋を出て、来た時にはいていたサンダルに足を入れると部屋から飛び出した。

 ホテルのプライベートビーチに面したヴィラと彩夏が滞在しているタワー棟までは少し距離がある。途中で何人もの従業員に会ったが、まさか彩夏のバスローブの下が全裸とは思っていないだろう。どんなに小さくてもビキニの水着ぐらいは着用しているのが普通だ。

 自分の部屋に戻るとすぐにシャワーを浴び、丁寧に顔を洗った。それでもまだあのぬめった感触が残っているような気がして、手で触って確かめてみたりした。

 全裸でのプール、部屋からの締め出し、なりゆきでのベッドイン、縛り、そして屈辱的な行為……ひとつひとつ反芻し思い出してみた。偶然を装ってはいたが、すべて彼が意図して行ったことではないのか。彩夏はすっかり彼の思うツボにはまったのかもしれない。

 ヴィラを見てみたいと言った時から、彩夏は安い女と思われたのだろうか。あまりにも侮辱した行為の数々だ。腹だたしいのを通り越して怒りさえ湧き起こってくる。昼をとっくに過ぎているのに空腹も感じなかった。

 その時、ドアをノックする音が低く響いた。ドアスコープから覗いてみると、ヴィラで助けてもらった浅黒い肌の若い従業員が立っていた。

 彩夏がドアを開けると、彼は白い歯を見せてにっこり笑って紙袋を差し出した。中には彩夏のワンピースがたたんで入っていた。持って行くように頼まれたのだろう。
「サンキュー、ロイ」

 名札にROYと書かれていたので名を呼ぶと静かに微笑んだ。いくらかのチップを渡すと、両手を合わせてうやうやしく礼のポーズをしてみせた。裸を見られてしまった恥ずかしさはもうなくなっていた。

【つづく】

Text/真野朋子
幻冬舎×AM特別ページ