SMプレイを嗜む変態たちから学んだ大事なこと

 昔から超変態だと自負しているが、今までほとんどバニラなセックスしかしたことがない。
日本語だとバニラセックス=前戯、もしくは挿入のないセックスと思われがちだが、英語では少し意味が違う。
バニラはアイスクリームの中でも定番中の定番。
一番王道にして、フツーで、平凡で、ちょっと退屈なのがバニラである。
セックスでバニラといえば、スイートで甘いセックスという意味ではなく、ひねりのないキスから挿入に至る一般的なセックスを指す。
SMといったスパイシーなプレイを織り交ぜたセックスはバニラの真逆に当たる。

「君、まるで童貞みたいだね」

 SMプレイのベテランにそれを話すとあまりに未経験なことを驚かれた。
童貞呼ばわりされて逆にこっちがビックリである。
しかし、彼の言いたいこともわかる。
SMプレイは高いリスクを伴うことも多く、真剣に取り組まないと怪我したり、取り返しのつかないことになる。
バニラな経験を積んできた自分も、刺激的なプレイに関してはとことん初心者だ。
一緒に映画観てたらムラムラしてきて、そのまま流れでセックスのような適当なことはできない。

 そういえば、いつか映画を観てからセックスをする仲だったセフレとロープで遊ぶことになった。
マンネリになったから刺激が欲しかったのかもしれない。
しかし、縛りプレイの経験はなかった。
クローゼットの中から見つけた長いロープを持ってきた彼は、慣れない手付きでこっちの首元をぐるぐる巻いてきた。
きっと飼い主とペットごっこをしたかったんだろう。
首にヒモを巻く遊びはするなと子供の頃から注意されていた。
明らかに経験不足な相手を目の前にして嫌な予感しかしなかった。
救急車を呼ぶことになる前に彼の手を止めた。
飼い主が殺人犯になったら笑えない。