ビッグで炭酸水をしこたま買う中年夫婦にカワイイは必要か「相手を守ってあげたくなった瞬間」

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今回のテーマは「相手を守ってあげたくなった瞬間」である。

そういう質問は伊勢丹とかで彼氏が凄まじい量の荷物を持たされているカップルにでもした方が良い答えがいただけるような気がする。
ザ・ビッグで炭酸水をしこたま買っている中年夫婦に聞いてもあまりカワイイ答えは得られないし最悪舌打ちが飛んでくるのだが、それは聞いた方が悪い。

今の世の中、他人に守ってもらおうという発想がナンセンス、という考え方もあるだろう。
「男に守ってもらえる女になろう」などというモテ記事はもはや炎上案件なのではと思ったが、令和になってもそういう記事は普通にヒットするし燃えてもない。

タンを吐くのは待ってほしい、地球が汚れる。
果たして、守ってあげたくなるタイプは、他者依存的で現代に相応しくない生き方なのだろうか。

「守ってあげたくなる」とは何かと言うと、一言でいえば「かわいげ」である。
守ってあげたくなる女の条件を見て見ると、頑張り屋とか、ドジとか、小柄とか、とにかくかわいい要素満載なのだ。
果てには「ふわふわしている」などと言う、文字通り雲をつかむような話が出てくる始末である。
どこのケセラン・パサランとつきあおうとしているのか。

逆に「守ってあげたくなる男の条件」というのもある、いわゆる「母性本能をくすぐるタイプ」というやつだ。

守ってあげたくなる男とは、まず「年下」だそうだ。
本当にそんなに簡単でいいのか、30過ぎたら、ムスカや銭形警部、アナゴさんも年下なのだぞ。
アナゴさんは母性本能をくすぐられるだろ、いい加減にしろ!という議論は来世でするとして、他には「ちょっとダメ男」「頼りない」「甘えん坊」など、怖い単語が続々登場し、ここで再び「ふわふわしている」が出てくる。

ここでもケセラン・パサランがモテてしまっている。
つまり、守ってあげたくなるタイプは決して優秀なタイプではないが、そこに「かわいげ」あるため「守ってあげたい」になるのだ。
かわいいがなければただの「使えない奴」である。
この「かわいげ」を使って、守ってもらうどころか、人間の奴隷化に成功しているのがご存じ「おキャット様」である。

おキャット様のなさることなら正しいに決まっている、ただ人間如きがおキャット様の真似事をしようというのが間違っているだけだ。
他にも赤ん坊がカワイイのも、ちゃんと育ててもらうため、とも言われている。

年賀状に他人の赤子の写真が載っていると謎の怒りを覚えるという習性をもった人間もいるので「自分の赤子に限る」かもしれないが、赤子が異臭を放つ肉の塊だったら今ごろ人間は絶滅していたかもしれない。

つまり「守ってあげたい」と他人の庇護欲を刺激することは、生物的には正しいと言える。
「ふわふわしている」もおキャット様をイメージしているなら納得だ。