家で別れる、別れないが決まる!?

 恋する2人が同じ空間で暮らす。そんな当たり前のことが、長い長い不況と先の震災を経て、価値を高めつつあります。でも、実は一緒に生活をする部屋の間取りが、2人の関係をよりいいものにも、壊したりもするとしたら……? 新企画「恋する住まい」では、あったかいカップルの実際のお部屋を紹介していくことで、“恋ができる間取り”の理想形を探っていきます。  初回は特別ゲストに、長年住宅商品企画に携わり、今再びブームの「無印良品」にて住宅設計や大々的なカップルの部屋の調査を続けてきた無印良品「くらしの良品研究所」研究員・土谷貞雄さんを迎えて、「AM」だけにこっそり2人の恋愛をより継続させるのに有効な「別れない間取り」を提案してもらいました。 これからお部屋探しをするカップルにも、すでに暮らしているカップルにも絶対に役立つ、間取り選びやリノベのコツが満載です!

土谷貞雄さんインタビュー ― 別れるマドリ、別れないマドリ

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AM 多くの住宅設計に携わってこられた土谷さんですが、住み始めた人たちの追跡調査によるデータをたくさんお持ちです。恋愛にキク住まいに必要なことは何ですか?
土谷貞雄さん(以下「土谷」敬称略) 「生活の感度」を上げることだと思います。最近バリに行ってきたのですが、そこで見てきた空間では窓ギリギリにベッドが配置され、寝転んだ時に同じ目線に緑がある。自然など有機的なものが常に視線に入ってくるんです。
ベッドの上にお盆を持ち込んで、そこで朝食を食べたり、お茶を飲んだりする。寝転んだりくつろいだり、食べたり緑を眺めたり……。
AM 窓から入ってくる風を感じたり、花が咲いているのを知ったり、味わったりと五感を鍛えるというか、官能的ですね。
土谷 このお盆が結構便利で、ごろんと寝転がったその場所を食卓にしたり、物を書く場所にしたりできる。2人でゆるっとずるっと過ごす時間を作ることは、「生活の感度」を上げることだと思うんです。

当たり前にある「LDK」を考え直す

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AM 感度が強くなれば、2人の関係もより充実しそうですね。

土谷 日本の住宅に多くある「LDK」、つまりくつろぐリビングと、食べるところとキッチンが一緒になっているお部屋は、お客さんが来た時に人を招くところと、食べたりくつろいだりするところが一つにまとまっている。だからいつもキレイにしておかなくてはいけないと思って頑張る。でも、実は(人が呼べるように)いつもキレイにできている人って、10人に1人くらいしかいないんです。しかも、年に2回自分の部屋にお客を呼ぶカップルは調べたところ、たった50%。
AM 年に2回で50%? ということは3回以上呼ぶ人はもっと少なくなるということですね。
土谷 そうです。
AM たった数回のためだけに、いつもキレイにしておく労力は確かにムダ……。常時部屋がキレイな人が1割しかいない理由がわかる気がします。
土谷 「リビング=Living」とはその名の通り、「生活」し「くつろぐ」所。そこで過ごすのは、カップルであって、家にいつくるかわからないお客さんではない。だからこそ、ある意味“自己中心的”に考える必要があると思います。
AM 家に来た他人にどう見られるかではなく、2人にとって何が心地よいかをまず考えるということですね。どんな考え方が必要ですか?
土谷 大事なのは「美しく汚す」ことだと思っています。まずはキチッとしすぎるより、ゆるっとずるっとすること。暮らしをラフにして余力を作れば、お互いを見つめる余裕ができますよね。
私は何か自分たちの好きな機能を2つ作ってしまう「W●●」を提案しているのですが、部屋にリビングを2つ作る「Wリビング」がいいんじゃないかと思っています。「片方のリビングはいつみられてもいい部屋。もう片方は散らかしておいてもいい自分たち専用」みたいな(笑)。
AM 確かにそれはいいですね。でも、相当広い部屋じゃないと無理かも(笑)。