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  • 2012.07.31

家で別れる、別れないが決まる!?

 恋する2人が同じ空間で暮らす。そんな当たり前のことが、長い長い不況と先の震災を経て、価値を高めつつあります。でも、実は一緒に生活をする部屋の間取りが、2人の関係をよりいいものにも、壊したりもするとしたら……? 新企画「恋する住まい」では、あったかいカップルの実際のお部屋を紹介していくことで、“恋ができる間取り”の理想形を探っていきます。  初回は特別ゲストに、長年住宅商品企画に携わり、今再びブームの「無印良品」にて住宅設計や大々的なカップルの部屋の調査を続けてきた無印良品「くらしの良品研究所」研究員・土谷貞雄さんを迎えて、「AM」だけにこっそり2人の恋愛をより継続させるのに有効な「別れない間取り」を提案してもらいました。 これからお部屋探しをするカップルにも、すでに暮らしているカップルにも絶対に役立つ、間取り選びやリノベのコツが満載です!

土谷貞雄さんインタビュー ― 別れるマドリ、別れないマドリ


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AM 多くの住宅設計に携わってこられた土谷さんですが、住み始めた人たちの追跡調査によるデータをたくさんお持ちです。恋愛にキク住まいに必要なことは何ですか?
土谷貞雄さん(以下「土谷」敬称略) 「生活の感度」を上げることだと思います。最近バリに行ってきたのですが、そこで見てきた空間では窓ギリギリにベッドが配置され、寝転んだ時に同じ目線に緑がある。自然など有機的なものが常に視線に入ってくるんです。
ベッドの上にお盆を持ち込んで、そこで朝食を食べたり、お茶を飲んだりする。寝転んだりくつろいだり、食べたり緑を眺めたり……。
AM 窓から入ってくる風を感じたり、花が咲いているのを知ったり、味わったりと五感を鍛えるというか、官能的ですね。
土谷 このお盆が結構便利で、ごろんと寝転がったその場所を食卓にしたり、物を書く場所にしたりできる。2人でゆるっとずるっと過ごす時間を作ることは、「生活の感度」を上げることだと思うんです。

当たり前にある「LDK」を考え直す

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AM 感度が強くなれば、2人の関係もより充実しそうですね。

土谷 日本の住宅に多くある「LDK」、つまりくつろぐリビングと、食べるところとキッチンが一緒になっているお部屋は、お客さんが来た時に人を招くところと、食べたりくつろいだりするところが一つにまとまっている。だからいつもキレイにしておかなくてはいけないと思って頑張る。でも、実は(人が呼べるように)いつもキレイにできている人って、10人に1人くらいしかいないんです。しかも、年に2回自分の部屋にお客を呼ぶカップルは調べたところ、たった50%。
AM 年に2回で50%? ということは3回以上呼ぶ人はもっと少なくなるということですね。
土谷 そうです。
AM たった数回のためだけに、いつもキレイにしておく労力は確かにムダ……。常時部屋がキレイな人が1割しかいない理由がわかる気がします。
土谷 「リビング=Living」とはその名の通り、「生活」し「くつろぐ」所。そこで過ごすのは、カップルであって、家にいつくるかわからないお客さんではない。だからこそ、ある意味“自己中心的”に考える必要があると思います。
AM 家に来た他人にどう見られるかではなく、2人にとって何が心地よいかをまず考えるということですね。どんな考え方が必要ですか?
土谷 大事なのは「美しく汚す」ことだと思っています。まずはキチッとしすぎるより、ゆるっとずるっとすること。暮らしをラフにして余力を作れば、お互いを見つめる余裕ができますよね。
私は何か自分たちの好きな機能を2つ作ってしまう「W●●」を提案しているのですが、部屋にリビングを2つ作る「Wリビング」がいいんじゃないかと思っています。「片方のリビングはいつみられてもいい部屋。もう片方は散らかしておいてもいい自分たち専用」みたいな(笑)。
AM 確かにそれはいいですね。でも、相当広い部屋じゃないと無理かも(笑)。

別れてしまう間取り                     

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AM 逆に2人の関係が危うくなりそうなNG間取りなどありますか?
土谷 別れる要素はいくつかあると思いますが、恋愛に必要なのは2人の間の距離と、逃げ場を作ることだと思います。監視したり、追いかけたり、プライバシーの排除によってどちらかの居心地がとても悪くなってしまう。全部が可視化されて、透明化されてしまったら居心地が悪いし、第一面白くない。
AM おっしゃる通りすべてが相手に見られる部屋を想像すると、1人になれる空間をどうしても求めてしまいそうですね。
土谷 LDKが一つになっているとそういう部分でも別れる要因になるんじゃないかと思うのは、大抵のLDKは段差も隙間も目隠しも何もない。視線が常に合ってしまい、お互いが監視し監視される状態。その上寝室も一緒だったら、2人の関係に「余力」がなくなってしまう。
気配は感じられて、部屋にいるのはわかるんだけれど、でも見えない。同じ空間にいるけれども、視線は合わない。そのくらいが恋愛にはちょうどいい。とすると、部屋に上下の段差がついていたり、ちょっとした仕切りがあったりすることがいいんじゃないかと。

自分たちに一番大切なものを強調する

土谷 「2人の生活」にとって一番大事にしたいものが何かを考えることも効果的ですよね。料理が大事なら、キッチンを部屋の中心にしたり、バスタイムが大事なら、極端な話お風呂を部屋の真ん中に置いてもいい。
AM お部屋の中心にお風呂!? リノベーションしていいお部屋ならできると思いますが、それもまた難しいかもしれません(笑)。でも、賃貸のお部屋探しでも、路線や土地で選ぶより、何が大事なのかを最優先に考えることもカップルには必要なのかも……。間取りも昔の画一的なものではなく、面白いもの、ユニークなものなどバリエーションも増えていますし。
土谷 最近はリノベーション可の賃貸マンションも増えていますよ。「恋をすること」は、「暮らすこと」。生活は他人に委ねてはいけない。それは2人の、そして自分の生活であり人生だから。2人がどうやって毎日を暮らしていくかを一緒に考えられてこそ、恋も生活もあるのだと思います。

土谷さんが提案する、これからの「恋するマドリ」     


恋する間取り ― 自分の暮らしを自分で考える 土谷貞雄

 恋人と一緒に過ごしたい、そんな時、その想いを家のしつらえや間取りに表現したいもの。照明を少し暗くして、キャンドルをたてて、もちものを整理して、家の中をきれいにしたいと思うものです。

 少し手の込んだ料理をしたり、ベランダで食事をしたりと、いつもと違う日常を演出したいと思うのです。

 恋する間取りとは、恋する気持ちをもちつづけること、それをしつらえに表現する事です。時がたってもこうした気持ちを忘れないようにすることが大事ですね。それは自分で自分の暮らしを表現する事を学ぶ最初のときかも知れません。自分で自分の暮らしを考えることの始まりです。

 恋する間取りで、特に重要な2つのことがあります。それは、ひとつは風呂、もうひとつはベッドルームです。風呂を部屋の中におくというのはどうでしょうか。風呂にはいりながら恋人と過ごす時間、心を解放してお風呂でゆったりして過ごす時間、この絵は風呂を2つおいています、リビングルームの風呂には花びらを浮かべてゆっくりはいります。

 もうひとつはベッドルームです。
夜寝る以外に昼間過ごすベッド、デイベッドというのがあります。できれば窓をあけて外の音を聞きながら過ごしたいものです。外の緑や鳥の声、風や光を感じてベッドで過ごす、本を読んだり、時には食事をしたり、ベッドで昼間の時間を過ごすのは贅沢なものです。

 さてこうした熱烈な恋の時期はいつまでも続かないかも知れません。
そのときは、それぞれの時間を過ごす空間を家の中にもつのもいいでしょう。
個室になってなくてもちょっとしたコーナーやカウンターがあることで、気配を感じながらもそれぞれ別の事に集中できる、そんな空間も恋をながくするための工夫かも知れません。

 恋する間取り、それは魔法のようなものでなく、自分の、また自分達の暮らしを自ら考える事なのです。こうしたらパートナーが喜ぶ、居心地がいいだろう、そんな空間を考えだす事、そして恋の時代ごとに間取りやしつらえを変える事ができると素敵ですね

もちろん、こうした間取りの変更までできる家に住んでいる人は少ないかもしれません。そのときはベランダで食事をしてみる。ベッドの位置を変えて、部屋の真ん中に置いてみる。小さな事や、できることを丁寧にしてみることが大切です。

そしてテーブルには一輪の花を忘れずに。

お部屋選び&リノベに役立つ! 恋するマドリ提案


ベースはありがちな3Kマドリ

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基本のマドリはコレ。40㎡というリアルな広さの部屋。
「昔の公団の間取りです。
50年近くの前のものですが、
賃貸のスタンダードとして今回これをベースに間取りの変更案を考えてみました。
約40平米の大きさの賃貸物件です」(土谷さん)

毎日が刺激的? 官能的な「バスタブ中心」マドリ

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小さな部屋をいくつも作るより、40㎡を大きく分けた方が気持ちよさそう。お風呂を可視化させて生活の一部に取り入れてしまえば、その分お部屋が広く見えて開放感が……。ちょっと恥ずかしいかもしれないけれど、こういう生活の中の刺激は必要かも?
「お風呂を思い切って改修しています。
ガラス張りのお風呂です。
リビングからもお風呂が一体となっています。
ガラスの仕切りもできれば開放的にして
お風呂に入りながら暮らす。
リビングと一体となって過ごすというのはどうでしょうか」(土谷さん)

食べることが好きな2人に「ダイニング中心」なマドリ

間取り 画像

料理好きの2人にはたまらないプラン。食事は毎日するものだし、週末は一緒に食べるのなら、絶対「食」のスペースを充実して損はなし。
「ダイニングをしっかりとってみました。
2人暮らしですが、食事を楽しむことにウェイトを置いています。
ダイニングとリビングの間にワークスペースをおいて仕事もできるように考えました。
二人の時間も大切ですが、仕事の時間も確保することが、お互いのストレスをなくすことかもしれません」(土谷さん)

「左の間取りの応用です。キッチンとダイニングをカウンターでつなげてみました 料理をしながらの会話も弾みます。一体となることで空間も広く使えるようにしました」(土谷さん)

仕事が大切な2人に「ワークスペース中心」なマドリ

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リビングとワークスペース。作業できる場所が2つあると、同時に仕事をしつつも、邪魔にならない。2人とも仕事に一生懸命なカップルには嬉しい距離感が作れそう。
「大きなダイニングテーブルをつくり、ワークスペースと兼用にしてみました。
壁一面に本棚を配置し、快適なワークスペースをつくっています。
恋も大事ですが、仕事や一人で行う作業も大事です。
お互いの気配を感じながらも、自分の時間を持つことも大切です」(土谷さん)












Text/Keiichi Koyam

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プロフィール
土谷貞雄 Sadao Tsuchiya

1960年 東京生まれ
1989年 日本大学理工学部修士課程修了
1989年 イタリア政府給費留学生
1994年 帰国、その後ゼネコンにて現場から設計営業を学ぶ
1997年 住宅の商品開発開始
2001年 独立しコンサルタントして住宅系の営業支援業務を行う
2004年 無印良品で家の商品開発と全国展開を行うために良品計画のグループ会社ムジネットに入社
2007年 ムジネット取締役に就任
2008年 住宅系の商品開発およびWEBコミュニケーションの企画立案を主として独立
http://tsuchiya-sadao.com