自己啓発本を月40冊読む女

light and books  slightly By everything light and books slightly By everything

「自己啓発本の女」[ジコケイハツ・ボン・ノ・オンナ] jiko・keihatʃu・bɔn・no・onna
生息地:大手町や丸の内の企業で働く。休日に代官山や自由が丘で栄養を補給しに来る姿が見られるが、最後は結局書店で1人で過ごす。
特徴:能力が高く、上昇志向があるものの、努力の方向性がとんちんかん。監督する側や支配者側の人間に従順すぎるほど従順。

 「月に40冊は本を読むことにしてるの」
 よくこういう上昇志向の企業女子っているけど、一瞬褒めていいのか迷うの。
1日一冊以上読むことが、自慢になってるとは思わないから。

 よくありがちなのが、その書籍がほとんど「自己啓発本」だったりする場合。
手におえない。

 大抵そのテの本て「こうした方がいい」「こうするべき」「こうしたらこうなります」みたいな内容。
「こうすれば仕事の効率がアップします」「効率よく勉強するためにはこの能力をアップさせましょう」「off●ceを使いこなせば、人生がかわる!」……などなど。 やれば利益が得られるメリットがあり、高付加価値の人間になれるという謳い文句は素晴らしいけれど、それをたくさん読んでいる自分は人にアピールできるという勘違いはいかがなものかしら。
それって、雑誌読んで「ここに行けばLOVE運がアップする!」って書かれていたらパワースポットを訪れたり、「今日のおとめ座さんは、お金使いに気を付けて!」的占いアドバイスを聞いて、500円ランチにしたりするのと発想は同じ。
でも、読んでいるのが曲がりなりにも“書籍”だから、あたかも自分はそんな女子とは違う知的な人間ですって、堂々と言えるわけ。
「有益なものを書籍から学んでます」的なアピールされても、それって結局「リコメンドされていることにトライして自分を磨く」という点で一緒なのに……。
 そういうのをアタシは“情報の真性M気質”って呼んでるんだけど

 そうやって他人に推薦・命令されたことを忠実に実施すれば何か利益があるんだと考える女って、自分の頭で考えていない。
忠実に実施するまでいかなくても、そういう何かの“教え”を動機にするしかない人は、受け身で規範から外れることができないから、何をするにも「想像力」も「創造力」もないの。
自分で考えて行動するんじゃなくて、「こうすべき!」と人に命令してほしいの。

 以前そんなバリバリのキャリアウーマンに招かれて、彼女のおウチに行ったら、本が数冊しかない。
(例の大量の)ご本はどうなさってるのかと尋ねたら、「読み終わったら即ブック●フ。散らかるから」ですって。
小説を後から読み返したり、ふと思いついてあの一節を読み直したい、とかないのね、きっと。
「本=情報」なのね。インプットしたら用無し。だから売りさばく。

 夕食にをごちそうしてくれるって言うから待っていたら、ワインと通販の冷凍食品とコンビニの乾きものを目の前で開封されて食事。
全然、おいしいからいいんだけど、オトナの女性の“おもてなし”としては寂しい。
効率重視の“おもてなし”だってわかるから。

 確かに家に呼ばれての食事に関しての自己啓発本なんかないし、こうしなさいってルールはないし、誰も指摘したりしない。
大体食事のアドバイスなんてことが書いてあるのは、彼女たちが読まないような主婦向けのものばかりだし。
でも、命令されたり指示されたりしなければ、相手が温かいと感じる心遣いができないのは、システムで動く人間としては素晴らしいかもしれないけど、生活を営む人間としては物足りない気がする。

 さらに結婚する時、そういう女子は“高価値”とされる人を恋愛相手に選んで、彼に驚くほど従順なの。
旦那が「こうしろ」「これじゃないとダメ」って言うとその通りにする。

仕事を持って、もしかしたら子どもも産んで、母親にもなるかもしれないのに、そのたびに情報にも旦那の命令にも育児本にも従ってたら身が持たないわよ。
 自己啓発をする前に、自分の頭で考えて、自分が一番快適に人生を送れる「マイ・オウン・ウェイ」を見つけてほしいと願うばかり。

advice

自己啓発本は、読み過ぎによるカツマー化に注意。恋愛小説も同時に読むくらいのバランスで、自分の中のスマートじゃない部分も大切に。