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  • 2012.08.22

第11回:『最後から2番目の恋』が教える“あえて恋愛する”大切さ

“もう恋愛に縁がない”大人のための恋愛ドラマ!?

By MJTR
©coupling By zoetnet

  みんな、どう? 最近、酸いも甘いも噛み分けた大人の恋愛してる?

 こんにちは、酸っぱい恋をしすぎて苦い顔の福田です。
今週も往年の恋愛ドラマをあえて見直し、勝手に深読みしていきましょう。

 今回のテーマは、古都・鎌倉を舞台に、小泉今日子と中井貴一が40~50代の大人の恋愛模様を演じた、『最後から2番目の恋』(2012年)です。

 このドラマは、平均視聴率12.4%(最高視聴率13.7%)と爆発的なヒットはせず、世間的にもさほど話題にはなりませんでした。
しかし、これまで「恋愛ドラマ」であまり描かれることのなかった熟年層のリアルな恋愛感情をときにコミカルに、ときにリリカルに描いたことで、ドラマ通の間では大変評価の高い作品です。

 主人公のひとり、吉野千明(小泉今日子)は45歳・独身。テレビ局に勤めるドラマのプロデューサーで、仕事に熱心なあまり周囲からは少々煙たがられている存在。
老後に寂しさを感じ、鎌倉の古民家に移り住むことにした彼女は、そこで隣家に住む年下の男性・長倉真平(坂口憲二)と出会います。
ワケあって特定の女性とは付き合わないという彼に誘われ、他にも女性がいることを承知で深い仲になる千明。

 そこには、閉経を迎えた動揺から、死ぬまでにあと何回セックスできるのかという恐怖や、自分がまだ女性として求められているという喜びなど、実にシビアで複雑な感情が入り乱れています。

 一方、もうひとりの主人公・長倉和平(中井貴一)は、そんな千明の隣家に住む4人兄弟の長男。
鎌倉市役所の観光推進課に勤める50歳で、妻とは死別して以来、再婚せず独り身のまま。11歳になる娘に手を焼きながら、兄弟の親代わりも務めています。

 そんな彼のもとに、ある日お見合い話がやってきます。そのお相手は、職場の若い部下・大橋知美(佐津川愛美)の母親、秀子(美保純)。 しかし、なんとその娘の知美からも告白されてしまい、彼はあきらめていた恋のチャンスに当惑していきます。

 そう、このドラマは、「自分にはもう恋愛には縁がない」と思っている人の物語なのです。 

ベタな感情を“あえて”楽しむのが大人の恋愛!?

 このドラマがおもしろいのは、歳を重ねて、久しぶりの恋愛で経験した“ベタ”な感情を、登場人物たちがあえて楽しんでいるように見えるところです。

 たとえば、千明は真平が若い女性とイチャついているのを電車の窓から目撃してしまいます。
普通の恋愛ドラマなら、ここで嫉妬に狂ってひと波乱…というのがお決まりですが、千明は違います。
「こういうときに嫉妬できる私って、まだ女なんだな」という可能性を噛みしめ、“恋愛ってこういうもの”というベタを味わっているように見えるのです。

 それは、和平のお見合い相手・秀子も同じです。
和平と食事に出かけた秀子は、ファンシーすぎる店の雰囲気を正直に苦手だと伝えた和平に、こう言います。

秀子「いらないんです、そういうの。(中略)あの、“恋愛っぽい”っていうか、そういうのってもっとドキドキするもんだと思うんですよ。相手が何考えてるかわからない方が…楽しくないですか?」
秀子「私たちは、恋愛っぽいことを楽しんでるわけですから、そういう誠実キャラはいらないんです。キャンセルで!」

“恋愛っぽいこと”でも心のときめきは本物      

By naosuke ii
©By OSU Special Collections & Archives Commons

 彼女たちは、これまでたくさんの恋愛を経験し、酸いも甘いも噛み分けてきました。
恋愛が、たくさんのウソや演技や欺瞞や気まぐれによって成り立っていることも、痛いほど知っています。
でも、そんな恋愛を一度は経験し尽くしてしまった彼女たちだからこそ、“恋愛っぽいこと”をあえて楽しんでみたいのです。
本当の“恋愛”はどこにもなくても、“恋愛っぽいこと”をしている瞬間の心のときめきは本物だからです。

 恋愛は、しなければいけないものではない。
ただ、したほうが楽しいからするのです。
それがたとえ恋愛じゃなかったとしても、“恋愛であるかのように振る舞う”ことに、きっと人生の充実は存在します。

千明「楽しいかもしれないじゃないですか? まぁ、ひどいことになったとしても、何もないよりはいいですよ。(中略)何もないより、こう、心が動く何かがあった方がずっといいかなって。うん、そう思ってます」


 このドラマは、歳を重ねたからこそわかる、“あえてする”恋愛の境地を教えてくれる深い作品なのです。

Text/Fukusuke Fukuda

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ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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