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  • 2012.06.13

第1回:山口智子はなぜ『ロンバケ』で連ドラクイーンから降りたのか(前編)

恋愛ドラマはつまらなくなった?

hdia da thaisa (e do gui) By Amanda Truss clas
©dia da thaisa (e do gui) By Amanda Truss clash

みんな、どう? 最近、恋愛ドラマ見てる?

こんにちは、モテ系リア充ライターの福田フクスケです!
ズズッ…バカンスで訪れたフィジーの浜辺で、菜々緒似のモデル風美女と偶然出会い付き合いはじめてから早2年、ズッズッ…毎日彼女にバドガールのコスプレをさせては、ズビビ…“夜のビールかけ”を楽しんでいますよー! ズズズーッ!
さて、私が本当に「モテ系リア充ライター」かどうかは、さっきから文章の合間に涙と鼻水をすすっているところから敏感に察してくださいね(死んだダボハゼのような目つきで)!

それはさておき、冒頭でいきなりぶしつけな質問をしてしまったのには、ワケがあります。
「ドラマ冬の時代」と言われる昨今、テレビドラマは視聴率不振に苦しみ、とくに恋愛ドラマは、90年代のようにみんなが熱狂するヒット作がほとんど出てきていません。
私たちはどうして、かつてのように恋愛ドラマにハマれなくなってしまったのでしょうか……?

そこでこのコラムでは、名作といわれる往年の恋愛ドラマを今あえて見直してみることで、現代女性の恋愛観や生き方の変化を読み解くうえでのヒントを、勝手に深読みしてみようと思います。
深読みに根拠はありませんので、みなさん、怒りに震えて編集部にカミソリの刃を送りつけたりしないでくださいね!

現在の男女観・恋愛観を先取っていた瀬名と南のビミョーな関係

さて、初回のテーマは、1996年4~6月に放送された月9ドラマ『ロングバケーション』。 「月曜の夜は街からOLが消える」と言われ、俗にいう“ロンバケ現象”を巻き起こした、まさにキング・オブ・恋愛ドラマです。
脚本は“恋愛の神様”とうたわれた北川悦吏子、主演は木村拓哉に山口智子という、まるでテレビドラマがもっともキラキラ輝いていた時代を象徴するような豪華メンバー!

物語は、結婚式当日に花婿に逃げられた葉山南(山口智子)が、白無垢姿で街を疾走する有名なシーンから始まります。
結婚相手のルームメイトだったピアニストの瀬名秀俊(木村拓哉)の部屋に転がり込み、奇妙な同居生活を始めるまでの展開が、ワインやスーパーボールなどの粋な小道具や、軽妙なやりとりによって巧みに描かれていくさまは、今見てもおしゃれ!

しかも見ていて気が付くのが、90年代半ばの時点で、現在につながる男女関係や恋愛観の変化を先取るような描写が、すでに取り入れられているということ。

たとえば、若さを武器にモデルとしてちやほやされていた時代が終わり、気が付けば31歳になってしまった南の焦りは、キャリア志向でバリバリ働いていたら、いつのまにか「負け犬」「おひとりさま」と呼ばれるようになってしまった現代のアラフォー女性に通じるものがあります。

また、7歳も年下の瀬名との友情が、やがて愛情に変わっていくビミョーな共同生活は、のちの『君はペット』や『セカンドバージン』などで描かれたような“男を飼う/愛でる”女尊男卑時代の先駆けともいえるでしょう。

しかも、物語序盤の瀬名は、想いを寄せる後輩の涼子(松たか子)との仲を縮めることができず一喜一憂。
いちいち南に相談してはクヨクヨするという“草食系男子”として描かれているんです。
なんか意外でしょ?

今見てもやっぱりおもしろい『ロンバケ』。
なかでも注目したいのが、ヒロインの南を演じた山口智子という女優の、特異なキャラクターと魅力についてです。


山口智子は“ナチュラル”と“バリキャリ”を両立した90年代最強女優

La belle By celynek
©La belle By celynek

『ロンバケ』の南は、96年の放送当時、おそらくもっとも“最先端”な生き方をしていた女性だったと思います。

モデル(のちにカメラマンのアシスタント)として自立した女を目指し、男勝りで負けん気が強いサバサバした彼女の性格は、まさに現在の<バリキャリ系女子>の元祖。

その一方、「モデル」という職業が象徴しているように、南は若さという女の武器を資本に、稼ぎのいい旦那を見つけて専業主婦になりたいという、バブル景気の頃のうわついた“シンデレラ願望”を引きずった世代の女性でもありました。
男性に守られて暮らしたい“シンデレラ系女子”は、のちにシロガネーゼとかニコタマダムと呼ばれるような、旅と紅茶とガーデニングが趣味の、言ってみれば“渡辺満里奈”みたいな自然体の生活を目指す<ナチュラル系女子>へと進化していくことになります。

キャリアアップ=<バリキャリ系女子>としてのハッピーと、素敵な恋愛・結婚=<ナチュラル系女子>としてのハッピーを、自然な形で両立させる。
これが、90年代の女性の生き方の理想であり、当時の恋愛ドラマが繰り返し描いた幸せの形でした。

そんな時代にマッチするかのように、山口智子は数々のドラマでバリキャリタイプの女性を演じながらも、自然体な演技に定評がある“ナチュラル系女優”の代表格として、同世代の女性から圧倒的支持を集める連ドラクイーンの地位を確立したわけです。

ところが、実はこの『ロンバケ』、山口智子の(現時点で)最後の連ドラ出演作品なんです。
なぜ彼女は人気絶頂のタイミングで、連ドラクイーンの座から降りてしまったのでしょうか。
私はこの時期、彼女が『ロンバケ』の南とまったく同じ悩みとジレンマを抱えていたんじゃないだろうか、と想像しています。
そこに、恋愛ドラマが徐々に勢いを失っていった理由のヒントも隠されていると思うのですが、その深読みはまた来週。

山口智子と、彼女の演じた役が、いまのドラマのヒロインと何が違うのか。
みなさんも、来週までぜひ考えてみてくださいね!

Text/Fukusuke Fukuda

ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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