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  • 2014.05.28

早見あかり主演作!嘘の“恋人ごっこ”から始まる苦しい初恋『百瀬、こっちを向いて。』

 好きな人のためなら何だってやる。
というと、例えば弁当を作ってあげたり、好みの服を着てあげたり、排水溝に溜まった毛を取り除いてあげたり、色々あると思います。

 でも、好きな人のために別の男の子と付き合うって。幾らなんでも限度がある。排水溝の毛以上です。毛以上に溜まり積った汚くて苦い想いが、心の奥底に蓄積していくのです。
本命の人のために、興味のない男子と“恋人ごっこ”をする事になった女の子。
好きであればあるほど、その男子の手を握り続ける。次第に蝕んでいく恋心と、変化していく感情。
“百瀬”の振り向き様で、甘酸っぱい記憶を思い出してみましょう。

百瀬、こっちを向いて。 向井理 早見あかり 中田永一 耶雲哉治
©2014 映画「百瀬、こっちを向いて。」製作委員会

 人気作家の乙一が別名義・中田永一として発表した恋愛小説を、『NO MORE映画泥棒』など多くのCM、PVを手掛ける耶雲哉治監督が映画化。
ももいろクローバーの元メンバーで現在女優として活動する早見あかりが初めて主演を飾り、ロングの髪をショートヘアにしてまで“百瀬”の役に挑みます。
高校時代に彼女と付き合う事になる冴えない男子役を、海外滞在経験があり英検1級の資格を持つ冴えまくりの竹内太郎が演じています。彼の15年後の姿をこれまた冴えてる向井理が演じ、淡い初恋の記憶を巡り故郷に立つその姿がとにかく凛々しいです。

 すべての人の初恋の感情を蘇らせる浮遊感のある映像、そしてメガネ男子好きの需要を兼ね揃えたキャスティングで30才前後のすべての女性の心を鷲掴みにしていますので危険です!

大好きな先輩のために
好きではない人と“恋人ごっこ”をする少女

【簡単なあらすじ】
 新人文学賞を受賞した小説家・相原ノボル(向井理)は、卒業以来15年ぶりに故郷に帰ってきた。初恋の相手・神林徹子と偶然会い、すでに子持ちの彼女と喋っていくうちに当時を思い出す。
屋上には百瀬陽(早見あかり)がいた。彼女と手を繋ぎ、一緒に校門を抜けた。周りからの視線を集めた。「私たち付き合っています」と百瀬が言った。でも、実は付き合っていない。すべては尊敬する先輩・宮崎瞬(工藤阿須加)のためだった。先輩は徹子と付き合っているのに、学校中で百瀬と付き合っている噂が流れて困っていた。命の恩人である先輩の提案により、ノボルは百瀬と付き合っているフリをする。そしてまた百瀬も、大好きな先輩のためにノボルと“恋人ごっこ”をする事になる。
嘘の恋愛関係を続ける中、百瀬の先輩への想いは苦しみに変わっていく。ノボルもまたそんな百瀬を見て、新たな感情が芽生えていく——。

好きな人のためにできる事は限られている

 学校では「一緒に帰ろう!」と愛らしく手を繋ぎ、校門を出た瞬間に「あんたの手って手汗すごい」って冷たく手を離す。なにこのツンデレ恋愛。
恋愛には嘘が散りばめられてるとはいっても、全部嘘で塗り固められた恋愛って一体。好きでもない男の子と手を繋ぐ百瀬の葛藤が次第に曝け出されていき、見ていて苦しくなってくる。

百瀬、こっちを向いて。 向井理 早見あかり 中田永一 耶雲哉治
©2014 映画「百瀬、こっちを向いて。」製作委員会

 あらすじだけ読むと宮崎先輩が超絶極悪人に見えるけど、これがまた爽やかな好青年。ノボルの命を救った過去があり、性格も容姿も最高で、徹子と付き合っていることにも文句のない人。そんな人って高校時代、一人か二人はいた気がする。

“恋人ごっこ”って響きはかわいいけど、大変えげつない。悪い人がいないのに百瀬の心が蝕んでいく。幾ら好きな人のためとはいえ、こんな罰ゲームはないです。
「バカヤロー!大嫌い!でもまだ好きだ!」
早朝の土手で行き場のない苦しみを吐き出そうとする百瀬と、何にもできずに突っ立っているノボル。
好きな人のために行なった遊びは、ここまで過酷なのでしょうか。

百瀬は自分のために生きられるのか?

 人物描写に注目したい。ノボルは人間を“レベル”で判断。容姿、性格等でトータルでクラスメイトを格付けし、自らを“レベル2”と卑下する何ともザ・窓際族。そりゃ、学校一のマドンナの徹子を神格化するし、人気者の宮崎先輩の頼み事は断れない。

 百瀬は年の離れた幼い兄弟たちがいる。その子たちのために家事をする様から“地元から離れられない感”が漂い、人生を自分勝手に生きられない女の子。誰かのために生きてしまうその性格、境遇が、すべて届かない先輩への想いと相俟って彼女を苦しませている。

 こんな二人が手を繋げば当然ドラマが生まれる。ノボルの人間レベルは上がるのか、百瀬は自分のために生きられるのか。好きな人のために生きる事は、彼女に何をもたらすのか。

百瀬、こっちを向いて。 向井理 早見あかり 中田永一 耶雲哉治
©2014 映画「百瀬、こっちを向いて。」製作委員会

 二人の姿はどこかしら高校時代の断片を見ている錯覚に陥る。普遍的でありながら、カメラが繊細に青春の光と影を映し出す。
耶雲哉治監督の描写はまるで『NO MORE映画泥棒』を作った人とは思えない。あのクネクネカメラマンの怪しい動きが一切ない映像と、優しくて淡い光が救いようのない思い出を照らしています。

感情には誰も嘘がつけない

 嘘の恋愛が何を生むのでしょうか。感情には嘘をつけないから、百瀬は泣き、ノボルは彼女の後ろ姿を忘れられない。だから小説にも映画にもなるのでしよう。
ノボルと百瀬の“恋人ごっこ”はいつまで続くのでしょうか。
「百瀬、こっちを向いて。」とノボルが呼びかける時、それは遊びじゃなくなるのです。

監督:耶雲哉治
キャスト:早見あかり、竹内太郎、石橋杏奈、工藤阿須加、ひろみ、向井理
配給:スールキートス
2014年/日本映画/109分
URL:映画『百瀬、こっちを向いて。』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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