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  • 2014.05.10

セレブ→貧乏に転落!虚栄に満ちた女の嘘『ブルージャスミン』

 誰だってセレブになりたいもの。シャネル、エルメス、ルイヴィトンで身を包み、お金持ちの旦那と夜な夜なパーティーに繰り出し、高級ワインを飲む。エレガントな生活は誰だって一度は夢を見る。

“ジャスミン”はそれを手にした。そして全てを無くした。残ったのは虚栄たっぷりのプライドだけ。
プライド故の壁、他人を蔑む自尊心、幸せへの欲求。そのすべてを根底から追求した大傑作です。
一人の女の栄光と崩壊の日々を覗いてみましょう。

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Photograph by Jessica Miglio © 2013 Gravier Productions, Inc.

 もはやアカデミー賞の常連であり、一つ作品を発表するたびに話題を独占するウディ・アレン監督。今回、自ら主演せずに監督業に徹して描くのは“ジャスミン”という名前からしてすべて虚栄に満ちた女です。
彼女を演じるケイト・ブランシェットは本作でアカデミー賞主演女優賞を手にし、幸せを追い求めるがあまり精神のバランスが崩れていくキャラクターを悲喜こもごもに体現。
アレック・ボールドウィン、サリー・ホーキンス、ピーター・サースガードといったキャストが脇を固め、ウディ・アレン節“闇”を笑いに落とし込む人間ドラマが繰り広げられます。


虚栄に満ちた女の転落を描いた辛辣なヒューマンドラマ

 【簡単なあらすじ】
 エレガントな女性が一人、サンフランシスコの空港に降り立つ。彼女はかつてセレブリティ界に出入りしていたジャスミン(ケイト・ブランシェット)。裕福な実業家・ハル(アレック・ボールドウィン)との幸せな生活もつかの間、彼の逮捕と自殺によって資産をすべて失ってしまった。
行き場のない彼女は、庶民的なシングルマザーの妹・ジンジャー(サリー・ホーキンス)が住む質素なアパートに身を寄せることになる。

 貧乏になったにも関わらず、セレブ時代のプライドだけが生き残っているジャスミン。過去の栄華に囚われてしまい、慣れない仕事と乏しい生活に疲れ果て、次第に情緒不安定になっていく。
やがて精神が窮地に立たされた頃、エリート外交官の独身男・ドワイト(ピーター・サースガード)と運命の出会いを果たす。
彼女にとって理想の再婚相手のドワイトに好かれようと嘘を並べ、虚栄に満ちた“ジャスミン”を作り上げていくが——。

プライドが嘘を呼び、その嘘が精神を崩壊させていく

 一人の元・金持ち女が狂っていく。その様を容赦なく映し続けているのに、なぜこうも笑えてしまうのでしょう。
本作はジャスミンの過去の裕福な日々と、現在の貧乏で行き詰まった日々を交互に映し出す。
それ故に夫・ハルとの幸せな生活と、歯医者の受付であくせく働くジャスミンとの対比が痛々しく、切なく感じられる。

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Photograph by Merrick Morton © 2013 Gravier Productions, Inc.

 ウディ・アレン、ちょっとこれはイジメに近い描き方です。
描き方によっては全編シリアスなムードになりかねないのに、無職のジャスミンがドワイトと結婚するために「インテリアデザイナー」と身分を偽り、彼からの電話を取る時も「すぐに取ったら待っていたように思われる」「忙しいように見せかけて」と、自らを演出する。

 そもそも“ジャスミン”も偽名。華やかな世界で生きるためのプライドが嘘を作り、その嘘が彼女の首を締めていく様が観ていて辛い。幸せになりたいのはすごくよく分かる。だからこそ、その失敗に笑いながら同情してしまう。
本当は一切笑えない、恐ろしい物語って事を理解しながら。


意地が悪い人が作った、意地の悪い人の物語

 全身ブランドで身を包み、質素な生活をしている人を心の奥底で蔑んでいる。

「自分は周りと違う。ここは自分の居場所じゃない」

 根拠なき自尊心が友情、同情、愛情全部を台無しにする。
ジャスミンはもっと素直になればジンジャーとも、その彼氏とも、周りの人たちとも仲良く生活し、新たな人生を歩むことだってできたはず。こんな人は現実世界でも多くいるのでしょう。
ウディ・アレンはそんな人に恨みでもあるかのごとく、とことんプライドの裏側を追求していきます。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと ウディ・アレン ケイト・ブランシェット サリー・ホーキンス アレック・ボールドウィン ピーター・サースガード ルイス・C・K ロングライド ブルージャスミン プライド セレブリティ 自尊心 虚栄心 アカデミー賞 女 栄光 挫折 Photograph by Merrick Morton © 2013 Gravier Productions, Inc.

 ある人が言っていた。プロフィールの趣味の項目に「人間観察」って書く人は性格が悪いって。
ウディ・アレンの鋭い人物描写は間違いなく人間観察の結果です。だから性格は悪いのでしょう。それでも、ここまで一人の女性の絶望を容赦なく切り取り、その上で妙な愛しさも感じさせるのは性格云々の話じゃない。意地の悪い人が意地の悪い人を描いたらどうなるか?
そういった観点でも一見、いや、二見三見の価値があります。

あなたのプライドが刺激される?

 プライドが光に照らされ、晒された時、人はどうなってしまうのか?
嘘っていうものがいかに自分を苦しめるのか、ある意味道徳的な作品でもあります。 

「こんな女イヤだな」と思いながらも、最終的にはジャスミンを愛おしく思えてしまうかもしれません。それは、誰だって少なからず抱えている虚栄心が反応してしまうから。
笑って観ていても、あなたの中の“ジャスミン”が泣いてしまうのでは?


新宿ピカデリー&Bunkamuraル・シネマ&シネスイッチ銀座&シネ・リーブル池袋ほか全国公開中!

監督:ウディ・アレン
キャスト:ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、アレック・ボールドウィン、ピーター・サースガード、ルイス・C・K
配給:ロングライド
原題:Blue Jasmine/2013年/アメリカ映画/98分
URL:映画『ブルージャスミン』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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