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  • 2014.04.18

無償の愛は法律に打ち勝つのか?ゲイカップルとダウン症の少年との愛を描いた感動の実話『チョコレートドーナツ』

 愛があれば何でもできると思っていた。
多くの人は愛に満たされた物に目を向ける。愛を描いた感動の実話に全米が泣き、愛を歌った曲がヒットチャートを独占する。愛はいつだってメジャーな存在で、世間から歓迎されるもの。
だからそこに愛があれば、誰もが認めるものだと思ってた。

 でも、1970年代のアメリカ・ブルックリンで愛は完全に見放された。
世界の片隅で育まれた、世代も、血の繋がりも、性別も超えた無償の愛。それを世間は阻み、法律は許さなかったのです。
ゲイカップルとダウン症の少年との愛を。

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© 2012 FAMLEEFILM, LLC

 トライベッカ、シアトル、そしてサンダンスなど数々の映画祭で拍手喝采を浴びた本作。
舞台『キャバレー』でトニー賞を受賞し、演技だけでなく歌唱シーンで心を揺さぶるのはアラン・カミング。本作で幾つもの主演男優賞を受賞したのも納得の存在感で、愛に溢れたゲイの主人公・ルディを演じます。

 彼と愛し合い正義感に溢れた弁護士・ポールを演じるのはギャレット・ディラハント。二人が無償の愛を注ぎ、笑顔の日々を取り戻していくダウン症の少年・マルコ役をアイザック・レイヴァが演じます。
そしてトラヴィス・ファイン監督の手により、魂のレベルで通い合う人と人との繋がりが温かく描かれています。


世間からの冷たい視線に愛がなす術は?

 【簡単なあらすじ】
 1979年、カリフォルニア。歌手を目指しているショーダンサーのルディ(アラン・カミング)は弁護士のポール(ギャレット・ディラハント)と知り合い、共にゲイである二人はカップルになる。彼らはルディの住むアパートの隣に住むダウン症の少年・マルコ(アイザック・レイヴァ)が母親に見捨てられたことを知る。やがて彼を保護し、共同生活をする中で家族のような愛情が芽生えていく。
しかし、ゲイであることが好奇の目に晒され、法と世間が三人の幸せな暮らしを阻んでいく。やがて家庭局がマルコを連れていき、ルディとポールはマルコの将来のために裁判で戦う事になる——。

ルディ、ポール、マルコの愛は世界を変えられるのか?

 マルコにとってルディとポールは母親と父親です。どちらが母か父かは観る人の感性に委ねるとしまして…。
シンガーと弁護士という豪華な“両親”と出会ったマルコ。彼が失われた愛を取り戻していく日々はあまりにも美しい。愛して止まないチョコレートドーナツも、笑い声も、すべてが愛おしい。
そこに幸せな将来が待ち構えている事しか想像できない分、厳しい現実が忍び寄ることへの悲しさが増大する。

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 これは人としての正義と、法としての正義の戦いです。
ルディとポールは、マルコにとって幸せな人生を願うだけ。それなのにゲイであること、血が繋がっていないことがマルコの輝かしい将来を掻き消す。
揚げ足を取るような裁判。私たちは傍聴席でただ聞き入ることしかできないし、ルディの落胆した背中を見つめることしかできない。

「法律を学び、世界を変えようとこの街へ来た」というポールが皮肉にも、世界に運命を変えられる現実。
この愛の行く末を、どう受け止めればいいのでしょうか。


観る者の心の奥底に潜む偏見をあぶり出し、それをあっけなく変えてしまう

 終盤、ルディの歌唱シーンは魂を揺さぶる。もはや泣かずにはいられない。
でも正直、ルディの印象が最初と全然違う。
だって、登場した時はいきなり顔が濃くて脇毛ボーボーで女装しているんだもの。偏見云々関係なく、ビジュアルインパクトでまず「うわっ……」と思ってしまう。
でも、彼がいかに自分の人生に誇りを持ち、愛すべき人を愛しているかを知っていくと、「ありだわ……」と気持ちが変化していく。

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 これは映画で描かれる“世間”の目と同じなのかもしれない。
世間はルディとポールが戦った裁判をしらない。新聞の小さな片隅で描かれる事件なんて流し読みする。興味がなければ、映画のように彼らの内面を探っていかない。

 最初は若干の嫌悪すら抱いていたのに、最後は愛に満ち溢れている。
この変化こそが映画の為せる技であり、特権でしょう。映画で描かれることで初めて、その愛を感じ取れる。そして心の奥底に潜む偏見にハッと気付かされるのです。

 観終わった後、ボブ・ディランの名曲『I Shall Be Released』が耳に残り続ける。精神の自由を歌った曲が流れると同時に、映画の冒頭で街を一人彷徨うマルコの姿が思い浮かんでしまいます。

世界を変えるのは、愛か法律か?

 愛が世界を変えるのか、それとも、法律が愛を変えるのか。
マルコが愛するチョコレートドーナツの真ん中に空いた空洞は、心にぽっかりと空いた穴なのかもしれません。
それを埋めるのはいつの時代だって、やはり愛であってほしい。三人が目指した輝かしい未来を作るために、人としての正義と愛を今一度考え直すことが必要なのでしょう。


4月19日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

監督:トラヴィス・ファイン
キャスト:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイバ、フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー
配給:ビターズ・エンド
原題:ANY DAY NOW/2012年/アメリカ映画/97分
URL:映画『チョコレートドーナツ』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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