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  • 2014.02.05

少女マンガとBLが合体?美しき青年を好きになった男と女の奇妙な三角関係『胸騒ぎの恋人』

 友達と同じ人を好きになった。——恐らく、これは全世界の至る所で行われている紛争の一つです。それも目に見えない銃撃戦。透明な弾丸がたった一人のために飛び交い、笑い、泣いているのです。
それが「胸騒ぎ」って表現されるのだから、余計に目に見えない。「三角関係」の三角の尖った部分がすごく痛い。胸を貫く殺傷力の妬みを味わう。

 もちろん、この物語のフランシスとマリーも貫かれた。バン、バンと銃撃を浴びた。
こちらの場合は男と男と女の三人。少女マンガのときめきと、BLマンガのドキドキが合体した関係性。その乙女心と男心をセットでくすぐるおトクなモヤモヤ恋愛模様を、とくとご覧あれ!

 
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©2010 MIFILIFILMS INC

 恐らく世界で最もイケメンな映画監督ではないでしょうか。グザヴィエ・ドラン監督は1989年生まれ。日本でいうと「ゆとり世代」に含まれそうな年齢ですが、監督のみならず脚本、出演、編集、プロデューサー、コスチューム、アートディレクションまでこなす多彩っぷりでゆとりとは無縁。顔面のみならず、中身すらイケメンなのです。

 本作では主人公のゲイの青年役を担当。彼の作品『わたしはロランス』にも出演していたモニア・ショクリが主人公の親友、『マイ・マザー』のニール・シュナイダーが二人を虜にする青年を演じています。


同じ男を好きになった男女の奇妙な三角関係

 【簡単なあらすじ】
 フランシス(グザヴィエ・ドラン)は、美青年・ニコラ(ニール・シュナイダー)の虜になる。幻想と妄想に取り憑かれ、彼と触れ合う一瞬一瞬に永遠を求めている。しかし、彼の親友マリー(モニア・ショクリ)もニコラに思いを寄せている。二人とも心の内を探るためにニコラの悪口を言ったり、ニコラの思わせぶりな行動に困惑している。
男と男と女の複雑な三角関係。苦悩と葛藤の中、激しい嫉妬が次第にフランシスとマリーの心を蝕んでいく——。

マシュマロ系ではなく、本当にマシュマロが落ちてくる

 同じ人を好きになった歯痒さ。お互いにそれを感じながら、妬みをごまかし、恨みを隠しながらニコラにアプローチしていきます。フランシスには乙女心しか感じない。ヒゲと濃いマユゲも関係ない。

 描写がいちいち肉感的。フランシスとニコラのすね毛たっぷりの足が触れ合うカット、言葉を要しないスローモーションのラブシーン。少女マンガの吹き出しのない演出と、BLの凸凸っぷりが一緒になって攻めてくる。
繊細な二人を両脇に抱えて寝るニコラ、なんて罪な男!

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 フランシスとマリーが夢中になるその説得力は、ニコラの金色の髪と通った鼻筋にある。その美形っぷりは、まるでルネサンスの彫刻です。まさに、クラブのフラッシュによって点滅するニコラに、一瞬ダビデ像のカットが挿入されるシーンがある。フランシスの目線として、全裸の像であるからこそエロティックな妄想に感じられる。

 不意をつく一風変わった演出はこれだけではない。『わたしはロランス』では、主人公の感情の揺れを、滝のような水を室内に降らせることで表現していたけど、今度は頭上からマシュマロが落ちてくる。マシュマロ系じゃなくて本当に落ちてくる。なんとも可愛らしく、フランシスの憧れを表現しているのです。


三角関係を言葉でなく、映像で語る

 本作はあらゆる人の、あらゆる恋愛エピソードが語られるインタビューシーンが挿入されている。
冒頭から流れるので、映画を間違えたのか焦る。正直、知らない人の知らない恋愛話を聞いても何一つ面白みを感じない。だけど、このドキュメンタリー風演出は後になってジワジワと効果をもたらしていく。

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 本編で語られるフランシスとマリーとニコラの恋愛も、この中の一つとして捉えられる。ただ、インタビューと違って、やはり三角関係は端から見ていると面白い。数多い恋愛紛争の中の一遍として楽しめ、インタビューの断片の中に監督の意図を探ってしまう。

 繰り返されるスローモーション。幾度となく流れる「バンバン~♪」の曲。胸を貫かれたフランシスとマリーの気持ちが言葉より映像で語られる。インタビューの言葉との対比を感じ、映画というものの強みを21才の映画監督に力説されてしまう。
観終わった後は「バンバン~♪」がやたら耳にこびりついて離れません。まさに銃撃を食らってしまうのです。

三角関係経験者なら、彼らの苦しみがわかる?

 三角関係の経験者なら、フランシスとマリーの苦しさに共感を覚えるはずです。

 恋人をとるか、友人をとるか。

 ニコラの魅力に取り憑かれてしまう二人が無惨な姿になっていくのですから。
三角関係の行く末には瓦礫のようなフランシスと、死体のようなマリーが荒野に佇んでいる。まさに紛争です。


2月1日(土)、渋谷アップリンクにてロードショー

監督・脚本:グザヴィエ・ドラン
キャスト:モニア・シュクリ、ニールス・シュナイダー、グザヴィエ・ドラン
配給:ピクチャーズデプト 提供:鈍牛倶楽部
原題:Les amours imaginaires 原題:HEARTBEATS/2010年/カナダ映画/102分
URL:映画『胸騒ぎの恋人』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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