• love
  • 2014.01.22

山田洋次監督最新作は直木賞作品!おばあちゃんが60年秘密にしていた“恋愛事件”とは?『小さいおうち』

 誰にだって秘密はある。
好きになってはいけない人を好きになってしまう事もある。一人だととても抱え込めない葛藤。今の時代だと、口の堅い友人に相談する事はできる。だけど、昭和の戦時中はあらゆる贅沢が戒められ、 そのような恋愛をすれば、不謹慎な非国民扱いをされていた。

 “秘密”を抱えた二人の女性が、混沌とした時代で何を思い、どのような生き方をしたのか。 一人の青年が手にしたノートから、それを紐解いていきましょう。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと  山田洋次 松たか子 黒木華 片岡孝太郎 吉岡秀隆 妻夫木聡 倍賞千恵子 松竹株式会社 小さいおうち 戦時 不倫 家族 秘密 昭和 平成 女中 片想い
©2014「小さいおうち」製作委員会

 第143回直木賞に輝いた中島京子の同名ベストセラー小説を、長きに渡り“家族”を描き続けてきた名匠・山田洋次監督が映画化。家族の絆に焦点を合わせてきた山田洋次監督が今回ターゲットを絞るのは、ある裕福な家庭に女中として仕えた女の“秘密”。家族というものを客観的に見つめ直します。

 主演は『告白』『夢売るふたり』などの松たか子。そして、彼女を慕う女中を『草原の椅子』『舟を編む』など近年活躍に注目が集まる若手女優の黒木華が演じます。おしとやかで繊細なキャラクターがピッタリ。その古風な雰囲気には、本当に昭和の時代を生きていたかのような魅力が詰まっています。
片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子が名を連ね、昭和と平成を行き交う二つの恋の真実が語られます。


誰にも言えない秘密を60年抱えた理由は…?

 【簡単なあらすじ】
 東北の田舎から出てきた純真な娘・タキ(黒木華)は、東京郊外に建つモダンな作りの“小さなおうち”で女中として働き始める。玩具会社に勤める夫と一人の息子を支える妻・時子(松たか子)を慕い、一家3人+女中で楽しい日々を過ごしていた。
しかし、玩具会社のデザイン部の社員・板倉(吉岡秀隆)が家を訪ねてから一変する。戦争の話題に明け暮れる夫とは違い、息子に優しく接してくれる繊細な板倉の性格に惹かれ、時子の心が揺らぎ始める。

 その様子を見守っていたタキは60年後に自叙伝を綴り、平成を生きる青年・健史(妻夫木聡)の手によって彼女の秘められていた想いが打ち明けられていく。二人の女が胸に抱いた、“恋愛事件”の真実とは——。

恋愛が戒められる時代があった

 時子は愛する夫と息子がいながら、心優しい板倉に心が奪われていく。
しかし、戦時中で男が駆り出される時代。家を守り、夫を支えなくてはならない状況が、彼女に強い罪悪感を抱かせ、「こんなことが許されるはずがないのよ」と独り言をつぶやく。
不意に訪れた突然の感情に、容姿端麗で落ち着いた雰囲気の一人の婦人が焦燥と動揺を一気に抱いてしまいます。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと  山田洋次 松たか子 黒木華 片岡孝太郎 吉岡秀隆 妻夫木聡 倍賞千恵子 松竹株式会社 小さいおうち 戦時 不倫 家族 秘密 昭和 平成 女中 片想い
©2014「小さいおうち」製作委員会

 不倫は今の時代でも十分咎められる行為ですが、時代は昭和。それも戦争中。バレてしまったら大変な事になる。やがて板倉といる姿を目撃されるようになり、その幸せな日々が危険に晒される。

 同じ頃、日本はアメリカと全面戦争を始める。「為す術がない」という意味では、恋愛と戦争は同じくらい危険なもので、どちらも容赦なく襲いかかるものとして描かれています。

 誰にも言えなかった秘密を60年間胸に抱き続けたタキの葛藤は、考えるだけでも意識が遠のく。彼女の想像を絶する胸の痛みは、自叙伝を綴るために握った鉛筆の震えに描かれている。


おばあちゃん・タキが涙する時、60年間秘めた想いが……

 幸せな家庭が恋愛事件と戦争で脅かされていく様子を、タキはどのような気持ちで見守っていたのでしょうか。
親切で気品に溢れ、タキが将来結婚して幸せな暮らしを送ることを応援してくれていた時子。タキもそんな彼女を慕い、逆らう事なんて一切なくずっと献身的に仕えていた。 それでも唯一、時子に気持ちをぶつける場面がある。それは時子だけでなく、誰かのことを強く想うがゆえの言葉だった。

 恋心が二人の女性の感情をあぶり出す。それと同時に、自叙伝を書く60年後のタキの“秘密”が涙となってこぼれ落ちる。それは彼女にとって、雷鳴が轟くように、耳を塞ぎ、目を瞑りたい自分でも認めたくない事実だったのかもしれない。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと  山田洋次 松たか子 黒木華 片岡孝太郎 吉岡秀隆 妻夫木聡 倍賞千恵子 松竹株式会社 小さいおうち 戦時 不倫 家族 秘密 昭和 平成 女中 片想い
©2014「小さいおうち」製作委員会

 おばあちゃんの涙は重みが違う。その涙の深さを、重さを、震える後ろ姿を、平成に生きる健史は受け取る。それは映画を観ている我々も同じ。健史とともに、その涙の意味を噛み締め、かつて焼け野原だった東京の地を歩き続けるしかない。

「長く生きすぎた……」

 涙ながらに吐き出されたセリフが、ずっと耳に残ってしまう。
タキが60年間ずっと遺していた物が開かれた時、ようやく彼女の書きかけの自叙伝が完成するのです。こんなに優しい片想いは他にあるのでしょうか。

60年間秘めつづけた想いは?

 女中という仕事を全うし、秘めた感情を抱いてきた一人の女の人生。映画を観終わった後は、まるで一つの人生を体験したような気分になります。
私たちの今の恋愛を、暮らしを、60年後の孫たちはどう思うのか。それは60年後も変わらずに生き続ける恋愛なのでしょうか。

 私たちも自叙伝に綴るエピソードを、今は作り続けている最中なのかもしれません。
オープンシェアが求められる昨今ですが、そこには、“秘密”が一個くらいあってもいいんじゃないでしょうか。


1月25日(土)、全国ロードショー

監督:山田洋次
キャスト:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子
配給:松竹株式会社
2013年/日本映画/136分
URL:映画『小さいおうち』公式サイト

Text/たけうちんぐ

AMをiPhoneアプリで読みませんか?

お気に入りのライターや連載を登録すると、プッシュ通知でお知らせすることや、お気に入り記事を保存できるので、AM読者は必携です!
ダウンロードはこちらから。


Twitter、FacebookでAMのこぼれ話をチェック!

あわせて読みたい

新作映画
映画3選まとめ

関連キーワード

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

今月の特集

AMのこぼれ話

アンケート

読者アンケート

AMではより楽しく役に立つサイトを目指すため、読者アンケートを実施しております。 本アンケートにご協力お願いします。

アンケートはこちら