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  • 2013.12.18

あなたのセックスと愛はかみ合っていますか?『パリ、ただよう花』

 セックス=愛に到達するまでの距離とは一体、何なのでしょう。
そもそも、愛って言葉自体が曖昧でフワフワしている。漂っている。その名の通り、パリでただよう花・ホアは様々な男性の「愛」に彷徨っている。

 カギカッコをつけたのは、もちろん皮肉の意味。だって、出てくる男が痛々しい。愛には程遠い「愛」をホアにぶつけ続けている。これはカギカッコの中から抜け出したい女性の視点から描いた、「愛」の物語です。

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 過激かつ繊細なタッチの作風で、これまで数々の作品を世に送り出してきたロウ・イエ監督が今回初めて「原作モノ」を手がける。主演はコリーヌ・ヤン、その相手役はタハール・ラヒム。暗く繊細なホアと、明るく活発なマチュー。正反対な性格の二人をそれぞれが演じ、幾度となる過激なセックスシーンに挑戦しています。


どんなにセックスを重ねても、愛には届かない

 【簡単なあらすじ】
 北京からパリにやって来た教師・ホア(コリーヌ・ヤン)は、恋人に捨てられて街を彷徨い歩いていると、建設工のマチュー(タハール・ラヒム)と出会う。互いに惹かれ合い、二人はあっという間に身体を重ねあう。
ある日、ホアはマチューの仕事仲間にレイプされる。なんと、マチューが他の男と寝るのか確かめようと持ちかけていたのだった。ホアはマチューに別れを切り出すが、彼は「別れるなら死ぬ」「結婚しよう」などと執着を続ける――。

「愛」のその先にある虚しさとは?

 激しいセックスの後に残るのはコンドームと、虚しさでしかないのか。
ホアとマチューは何度も何度も肌と肌をぶつけ合い、快楽に溺れていく。しかし、その先には幸せや明るい未来が見えてこない。ある意味、動物番組でも見ているかのように“交尾”を続けてしまう。

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 恋愛映画なのにトレンディな要素が一切ないのです。
ジャ・ジャンクー監督の『長江哀歌』などの撮影を手がけるユー・リクウァイによる“揺れるカメラワーク”は、容赦なく二人の情事に近づく。生々しくて荒々しい。吐息が聞こえてきそうなカメラは、映像美なんて言えるもんじゃない。甘いセリフは皆無に等しい。音楽が盛り立てるわけでもない。
ラブ・ストーリーには必要不可欠な要素がない本作が映し出すのは、「愛」のその先にある虚しさ。

 どんなに文明が普及しても結局、人類はまだ「愛」の正体を掴めていない。

「愛は人間にとって日常的な問題です」

 過剰な演出で愛を非現実化しないロウ・イエ監督が語る通り、ホアの目に映る恋愛模様はすべて私たちの日常風景なのです。


     

レイプ、独占欲、かまってちゃん……まるでダメ男のショーケース

 実はこの映画、「こんな彼はイヤだ!」のオンパレードです。
他の男と寝るんじゃないかと疑い、同僚にレイプさせてしまう。自分以外の男と触れ合うと怒り出して、独占欲丸出し。挙げ句の果てに、別れ話を切り出したら「今すぐ死ぬ」と完全にかまってちゃん。

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 なんでマチューと付き合ったの? どこがいいの?
傍から見ると誰だってそう思う。だけど、ホアはその愛情に踏ん切りがつかない。もはや愛が抜けた情に近い感情が、ホアとマチューを結びつけてしまう。

 ホアの仕事に理解がなく、さらに妻子持ちであることを隠していたマチュー。女性なら誰もが歯を食いしばるほど我慢ならない男ですが、その情けなさには妙な憐れみすら感じてしまうでしょう。
破滅に向かう「ラブ」・ストーリーの結末に、残念ながら目をそむけることはできないのです。

愛って一体なんだろう?

 中国人とフランス人、優しさと暴力、愛とセックス――。
これらが噛み合わず、とはいっても身体は絡み合い、その矛盾こそが二人の心を蝕んでいく。
こんなカップルはイヤだ! と誰もが思うでしょうが、ホアとマチューもそう思っている。でも、抜け出せない…。そんな葛藤を一度でも覚えてしまったら、ただよう花のように街を彷徨い歩くしかない。

 あなたのセックスと愛は噛み合っていますか?
愛を「愛」とカギカッコしてしまう、その危険な距離感は、案外誰もが身に覚えのあることなのかもしれません。


12月21日(土)、渋谷アップリンク、新宿K’sシネマにてロードショー

監督:ロウ・イエ
キャスト:コリーヌ・ヤン、タハール・ラヒム
配給:アップリンク
原題:Love and Bruises/2011年/フランス・中国映画/105分
URL:映画『パリ、ただよう花』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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