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  • 2013.11.09

ペネロペ・クルスが学生時代~母親を熱演!最愛の人が遺した“真実”を巡る旅『ある愛へと続く旅』

 誰にだって忘れられない恋はある。しかし、今、そこで起きている恋は10年、20年経っても覚えているのか?駅の改札前でイチャつくカップルを見るたびそう思う。
独り身だから悔しくてそう思うのか、この映画を観たからそう思うのか。どちらもか。

“真実の愛”なんてそう簡単には見つからない。
だけど、ヨーロッパ史に残る悲惨な紛争の最中、戦火のサラエボで出会う男女の恋は何十年経っても終わることはありません。二人の愛を巡るこの旅には、恐るべき“真実”が待ち構えているのです。

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©Alien Produzioni / Picomedia /Telecinco Cinema/ Mod Producciones 2012

『赤いアモーレ』で世界的な評価を受けたペネロペ・クルス×セルジオ・カステリット監督が二度目のタッグ。原作は監督の妻でもあるマーガレット・マッツァンティーニによる小説で、この二人の息子がなんとペネロペ・クルスの息子役で出演しています。
主演のペネロペ・クルスは凛とした学生時代から高校生の息子を持つ母親まで、女性としての長い年月を熱演。皺があっても色っぽい彼女の魅力と、観る者に訴えかける切実な眼光。少女から母親になるまで、女性の強さを全身で体現しています。


ストーリー

 16歳の一人息子との関係に悩むジェンマ(ペネロペ・クルス)は、青春時代をともに過ごしたサラエボの友人から誘いの電話を受ける。ジェンマは息子とともにサラエボに飛び、最愛の人との過去と向き合うことになる。

 若き日のジェンマは留学生としてサラエボを訪れ、そこでアメリカ人のディエゴ(エミール・ハーシュ)と出会う。恋に落ち、やがて結婚する二人だが、彼らの間には子どもができない。代理母候補を見つけ、無事に子どもを授かったジェンマは民族紛争の真っ只中のサラエボを無事に逃れる。しかし、父親であるディエゴは一人その地に残り、命を落としてしまった。ジェンマは長い月日が経った後、ディエゴが遺した“真実”を知る――。

過去と現在が平行して描かれるラブストーリー

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©Alien Produzioni / Picomedia /Telecinco Cinema/ Mod Producciones 2012

 一人の女性の青春時代と現在。かつての初々しい留学生の女の子が、一人の息子を持つ母親になるまでの過程と、そこに至るまでの恐るべき真実が平行して描かれている。

 なぜ、夫・ディエゴはサラエボに留まったのか?そして、息子・ピエトロはどのようにして生まれたのか?

 これらの“?”が“!”に変わる瞬間がある。ピエトロの出生の真実に辿り着くまでが非常にスリリング。すべてが点と点で繋がり、線となって胸に飛び込んでくる衝撃といったら。ピエトロが背負うギターにだって、観終わった頃にはちょっとした伏線だと感じてしまうでしょう。

 ヒントはカート・コバーン。1990年前後の時代を切り取ると、そこにはサラエボの民族紛争とロックバンド・ニルヴァーナが浮かび上がってくる。これらは世界を揺るがし、その時代に生きた人の記憶に強烈な爪痕を残した二つです。

 そしてオープニングが印象的。まるで現在と過去を横に並べたかのように、俯瞰撮影で映される船と海。画が止まっている船が現在で、激しく波しぶきが立っている海が過去。停滞する現在が、荒々しく稼動する過去に流されていく。そんな詩的な映像にも読み取れるのです。


悲惨な紛争の最中、暴力は愛に勝てるのか?

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©Alien Produzioni / Picomedia /Telecinco Cinema/ Mod Producciones 2012

 兵士の暴力によって作られた傷跡を、ディエゴがタトゥーでバラの模様に変えるシーンがある。ディエゴが撮ったそのタトゥーの写真は映画の冒頭で登場し、強烈な印象を残す。
この“サラエボのバラ”は映画のみならず、実際にサラエボ市内全域に今も存在するといいます。紛争で生まれた暴力が美しいバラに描き変えられるという希望は、この映画自体にも言えることです。

 ジェンマが負った心の傷と、ピエトロの出生の秘密。拭いきれない悲しい過去を、美しく描き変えるのはディエゴが遺した愛の真実です。
果たして、暴力は愛に勝てるのか?その答えをジェンマが知るとき、映画は深い感動に包まれます。

 戦場の残虐な行為をするのも人間だし、バラに描き変えるのも人間。
汚さと美しさ。過去と現在。対比で描かれるジェンマの回想が、ディエゴの想いを辿る旅に繋がるときこそ泣けてくるのです。

     

 原作を書いたのが妻で、監督をしたのが夫。そして、息子役を演じたのが実の息子。この映画自体の絆が繋がれていくような関係性にも、意味を感じてしまいます。

 停滞した現在の船を進めるのは、激情に溢れた海のような過去なのでしょうか。
詩のように投げかけてくる映像の数々。ジェンマの逞しい女としての生き様と、ディエゴの深い慈愛。二人を1990年代のベストカップルに認定したいくらいです。
その恋は10年後、20年後も色褪せない。これこそ、“恋愛”と呼びたいです。

   

11月1日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

監督:セルジオ・カステリット
キャスト:ペネロペ・クルス、エミール・ハーシュ、アドナン・ハスコヴィッチ、サーデット・アクソイ、ピエトロ・カステリット、ジェーン・バーキン
配給:コムストック・グループ
原題:VENUTO AL MONDO /2012年/イタリア・スペイン/129分
URL:映画『ある愛へと続く旅』公式サイト


Text/たけうちんぐ

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