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  • 2013.10.23

「君は僕が守る。ハエだけど。」前代未聞のラブストーリー『マッキー』

 生まれ変わったら何になりたいですか?ネコ、イヌ、イルカなど、可愛い動物を挙げるとキリがありません。
たとえば自分でなくても、秘かに思い続けていたあの人が死んだら、風に生まれ変わって私の髪を揺らしてほしい。星になって、夜空から私を見つめ続けてほしい。
でもそんなロマンチック、この映画には皆無です。ただのハエですからね!

 愛する人が生まれ変わったのは、ハエ。終始プ~~ンと鳴っている恋愛映画なんて観たことない。しかし、これが傑作なんだから恐ろしい。
ときめきと笑いと迫力に満ちた、ぶっ飛び映画量産国インド発・前代未聞のミュージカル×アクション×ラブストーリーです。

オマッキー 映画 ハエ インド ラブストーリー S・S・ラージャマウリ ナーニ スディープ サマンサ アンプラグド たけうちんぐ
©2012 Varahi Chalana Chitram. All rights reserved.

 ハエが主人公という映画史上最大の賭けに挑んだのは、インドのテルグ映画界のヒットメーカー、S・S・ラージャマウリ。彼の父親の「ハエが人間に復讐をする話はどうだ」というジョークから映画の発想を得て、現実化してしまいました。
こんな冗談みたいな映画に出演するのは、カンナダ映画界ではトップ5に入る人気俳優・スディープ。チョイ悪イケメンの彼が真剣にハエに悩まされる姿には笑いが止まらない。
彼がオトそうと企んでいる美女をサマンサ・ルス・プラブ、彼女を想い続ける青年をナーニが演じ、まさかの人間×ハエのラブストーリーが誕生しました。


ストーリー

 建設会社の社長・スディープ(スディープ)は、気に入らない奴は殺し、気に入った女は必ずオトす。そんな彼のもとに、美女・ビンドゥ(サマンサ・ルス・プラブ)がやってくる。慈善活動を行なうNGOメンバーの彼女は寄付を募ろうとするが、彼の耳にはビンドゥの話は一切入っていない。彼が考えているのは「この女をどうやってオトそうか」だけ。
ビンドゥを想い続ける青年・ジャニ(ナーニ)は、今日も彼女に好意をアピールし続けていた。興味をそそられないフリをするビンドゥだが、実は秘かにジャニを想っている。それを知ったスディープは、ビンドゥに近づくために、ジャニを殺害する。 死んだジャニは生まれ変わる。その姿はなんと、ハエ!
愛するビンドゥを魔の手から救うため、ハエになったジャニの壮絶な復讐劇が始まる――。

ハエだからといってナメてはいけない!容赦なき復讐劇

マッキー 映画 ハエ インド ラブストーリー S・S・ラージャマウリ ナーニ スディープ サマンサ アンプラグド たけうちんぐ
©2012 Varahi Chalana Chitram. All rights reserved.

 終始、プ~~ンと鳴っている。
これがどうロマンチックになるんだよ。そう疑問に思うのも仕方ありません。
でも、ときめくのです。ジャニの一途な恋心と、たとえ小さな身体でも愛する人を守り抜く姿に。だけど、やっぱりハエです。

 とはいえ、ただのハエじゃない。ハエがジャニであることを知ったビンドゥは彼の復讐に加担し、マイクロアートの才能を使ってハエの身体に“装備”を与える。いわばスーパーハエ。
何から何までバカバカしいのに、なぜか熱いこの復讐劇が、たまらなく面白いのです。

 とにかく、その復讐の手段がアイデアに満ち溢れている。夜にスディープの耳元で飛び回って不眠にさせる。散髪屋にヒゲを剃ってもらっている最中に飛び回ってケガをさせる。車の運転中に目の中に飛び込んで事故を起こす。全部がいちいち陰湿すぎて笑えるのです。

 スディープがハエの正体がジャニであることに気付いても「ハエが俺に復讐しに来る」と言ったら周囲からノイローゼ扱い。しまいには、コワモテのボディーガード全員にハエ叩きを持たせるシーンは壮観。
思わずスディープに同情してしまうくらい、容赦ない復讐の連続に恐れおののいてしまいます。


驚異の“ハエ視点”のVFXとインド映画の魅力が全開

マッキー 映画 ハエ インド ラブストーリー S・S・ラージャマウリ ナーニ スディープ サマンサ アンプラグド たけうちんぐ
©2012 Varahi Chalana Chitram. All rights reserved.

 インド映画は、1995年制作『ムトゥ 踊るマハラジャ』で底抜けに楽しいスタイルを全世界に知らしめた後、近年では『ロボット』でまたトンデモ映画的魅力を見せ付けました。
その最大の特徴はやはり、歌と踊り。

 ジャニがビンドゥに想いを伝えるシーンはミュージカル。これは分かります。彼女の近くでラブソングを歌う姿は当然ロマンチックです。
が、ハエになってもミュージカル。これは何なんですか。ハエが歌って踊るって何ですか。もはや「リアリティがない」なんて言葉はこの映画には通用しません。それでも「これはラブストーリーですから!」と強引に突き進む。
細部までVFXの技術が行き届いているからこそ、映画の持つ圧倒的なパワーが爽快なのです。

 ジャニが生まれ変わってしばらくは“ハエ視点”の映像が続く。少しの水が洪水に、小さな子どもは巨人に。ハエが感じ取る世界では人間のセリフがない。
このサイレント映画的手法がユニークで、後に最大の敵・スディープが現れると人間視点に切り替わり、いかにジャニが小さな存在であるかを痛感する。そして、ビンドゥがいかに美しくて心優しいのかがよく分かる。
ぶっ飛んだ設定の映画でも、凝りに凝った演出があるからこそ心に残るのです。

 ジャニとビンドゥの恋の行方は一体どうなるのか。人間とハエの恋に未来はあるのでしょうか。
輪廻転生をここまでミュージカルとアクションとラブストーリーに落としこめるのは、やはりインド映画あってのこと。観終わった後の異常な爽快感をぜひ味わってみてほしいです。

 あなたの周りを飛び回っている鬱陶しいハエは、実は愛する人の生まれ変わりかも?
……そんなことはないですね。パチンと始末しましょう!

10月26日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開!

監督・脚本・監督:S・S・ラージャマウリ
キャスト:ナーニ、スディープ、サマンサ
配給:アンプラグド
2012年/インド映画/125分
URL:映画『マッキー』公式サイト


Text/たけうちんぐ

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