• love
  • 2013.10.09

【大人の事情に疲れた人向け】女の子が薄汚れた大人社会を救う映画まとめ

 子どもの頃、あなたはどんな女の子でしたか?
あの頃、“恋愛”なんて程遠いものだったかもしれない。だからこそ男女間の友情は成立していたし、大人の面倒くさい駆け引きも必要なかった。 いつから、こんな大人になってしまったのか……。

 少女の頃は夢を語ったり、希望を胸に抱いたり、妄想に耽っていた。
でも次第に、夢も希望も妄想も敵わないことを知り、現実的な人間になっていく。そして、いつの間にか少女じゃなくなってしまう。だからといって、「あの頃はよかった」止まりの懐古厨はもってのほか。
「そうだ、女の子はこんなに強いんだ」と眠っていた初期衝動を呼び覚まし、明日に向かえる三本を紹介します。


おてんば女子とクール男子の“約束”とは
『マイマイ新子と千年の魔法』

 一本目に紹介するのは、芥川賞作家・高樹のぶ子が自らの幼少期をつづった自伝的小説のアニメ映画化。
空想好きのおてんば少女・新子が、生と死が入り乱れる田舎街で頑張ります。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

ストーリー

 昭和30年、山口県。田舎町で暮らす新子(声:福田麻由子)は転校生の貴伊子(声:水沢奈子)と仲良くなり、同級生の男の子たちを巻き込んで一緒にダム池を造る。そこで“ひづる”と名付けた金魚を飼い、遊びに溢れた楽しい日々を送っていた。しかし、何不自由なく平和に暮らしていた新子たちに、ある悲しい事件が立ちはだかる――。


何も考えずに遊んでいた少女が、“死”の存在を知る

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

 昭和、田舎、おてんば少女。このキーワードには平和しか思い浮かばない。
空想が好きな新子には目に見えないものが見える。透明なものを追いかける。思えば、子どもの頃はそうだった。いないはずの誰かと話したくなったり、突然走り出したくもなったりした。
ファンタジーってジャンルを掲げなくても、子どもの世界自体がファンタジー。

 お金持ちの家の娘の貴伊子は、田舎町の学校のクラスメイトと上手く馴染めない。それでも、新子のある意味空気を読まない性格のおかげで打ち解けていく。二人がウィスキー入りのチョコレートを一緒に食べて、「にっが!」と悲鳴を上げながらもベロベロに酔っ払う姿は可愛らしい。
思えば、自分にもこんな頃があったっけ。あの頃は少しのアルコールで相手と打ち解けられた。今みたいにオールなんて必要なかったんだ……。

 と、子どもの世界はユートピアとして描かれている。だけど、この映画はそれで終わらない。
突如として不倫、自殺といったキーワードに踏み込み、現実が襲ってくる。子どもには理解できない大人の悩みに振り回され、怒ったり、泣いたりするしかできない。
この世界はファンタジーではないことに気付く瞬間こそが、大人への第一歩なのかもしれない。人は傷つき、いつかこの世界から消える。これを理解できてしまう大人になった自分自身に、この映画は“生と死”を静かに問いかけてくるのです。


約束をすることで、少年少女は明日に向かう

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

 約束って、最近いつしたんだろう。
一人で生きていたら約束なんてできない。また会いたいと思える誰かがいることで、約束ができる。

 大人の愛と性が、クールな男子・タツヨシの運命を変えてしまった。絶望を知った友人の彼に、新子が投げかけた言葉が印象的なのです。

「また一生懸命遊ぼうや!」

 このセリフには目に涙を溜めずにはいられない。
子どもは遊ぶのが仕事とはよく言ったもの。一生懸命遊ぶなんて、最近いつしたんだろう。そうか、彼らは遊ぶことに無我夢中だった。このセリフで初めて思い知らされるのです。
約束というのは、次につなげる行為だとつくづく思う。「生きろ」などと誰かに促されるかのように焦って生き続けるより、あの人とまた会いたいと思い、また会うことを約束するほうが、日々をつないでいる気がする。タツヨシは、新子と一生懸命に遊ぶ日が来るまで生き続ける予感しかしません。

 思春期前の男女間の友情は成立する。でも、新子とタツヨシだっていつかは大人になる。
女と男になった二人が再会する姿を妄想し、二人の物語を想像することが、大人に許されたファンタジーなのかもしれません。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画

『マイマイ新子と千年の魔法』DVD
価格:6,090円(税込み)
発売元:エイベックス・エンタテインメント株式会社
販売元:エイベックス・マーケティング株式会社

児童養護施設に入れられた9才の少女は
飛べない鳥を見て何を想うのか『冬の小鳥』


 次に紹介するのは、ウニー・ルコント監督が養女として過ごした幼少期の体験を基にした韓国映画『冬の小鳥』。
『オアシス』『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドン監督がプロデュースしたことでも話題になった、孤独な少女が頑張るお話です。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©2009 DCG Plus & NOW Films, GLORIA Films. All Rights Reserved.

ストーリー

 1975年のソウル。9才のジニ(キム・セロン)は大好きな父親に連れられて、高い鉄格子に囲まれた施設に入る。状況が理解できないまま、ジニは父親が去っていく姿を見てしまう。やがてここが、孤児が集まる児童養護施設であることを知り、絶望する。次々と養女になっていく子どもたち。それでも、ジニはいつか父親が連れて帰ってくることを祈り、待ち続ける――。


死んだ小鳥は少女の気持ちを知っている

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©2009 DCG Plus & NOW Films, GLORIA Films. All Rights Reserved.

 孤児として育っていく悲しい物語で、描かれるエピソードの一つ一つが切ない。それなのに、見終わった後には妙な爽快感すら味わってしまいます。

「いつかお父さんが来てくれる」

 これがジニの生きるための唯一の希望。どんなに辛くても希望さえあれば頑張れる。そんなジニがどうして鳥を拾い、死ぬまで介抱しようとしたのか。そして、まるで鏡を見つめるように、なぜ鳥に感情移入してしまったのでしょう。

 死んだ鳥と同じように土の中に入り、自ら土に覆いかぶさるシーンがある。それは「死にたい」とはまた別の意識のように思える。少女はもはや自分が死んでいることを自覚している。父親に見捨てられた以上、ジニはジニじゃない。それを自覚してしまった彼女の死より深い死。
それでも、土は苦しい。すぐに土の中から出ていく滑稽さが辛い。子ども特有の感性だからこそ、余計に心を打たれてしまいます。


     

少女の笑顔に、素直に喜んでいいのだろうか

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©2009 DCG Plus & NOW Films, GLORIA Films. All Rights Reserved.

 養護施設に入る直前まで、ジニは父親の隣で満面の笑みを浮かべていた。
父親に歌を歌ってあげたり、父親の背中で目を閉じたり、様々な表情を見せていた。つまり、“子ども”をしていた。だけど、施設に入ってからはほぼ無表情。笑わなくなった。“子ども”をやめてしまったのです。
それでも、9才は子ども。簡単にはやめられない。その苦しさが、ジニの終始一貫する表情に込められているように思えます。

 外国人の養女になっていく子どもたちに手を振るたびに、ジニは何を思ったのか。その先に幸せが待っているかは分からない。でも、幸せそうに去っていく仲間たち。
子どもは、子どもをやらなきゃならない。嘘でもいいから、幸せにならなきゃならない。

 終盤、ついにジニの笑顔が戻る瞬間がある。その瞬間、まるで自分がこの子の親になったかのような幸福感に包まれてしまう。しかし、それは素直に喜べるものかは分からない。
「父親はもう帰ってこない」という事実を完全に受け入れたからこそ、ジニは笑う。その力強さはハッピーエンド一色に収まらず、その先の未来、ジニの葛藤すら想像する。
彼女の幸せを願うことこそが、大人の役割なのでしょう。その笑顔が、嘘でないことを祈りたいです。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画

『冬の小鳥』DVD
価格:3,990円(税込)
価格:3,990円(税込)
発売元:IMAGICA TV
販売元:紀伊國屋書店

少女という身分は何でも許される。いわゆる“人類最強”?
『ロッタちゃん はじめてのおつかい』


 最後に紹介するのは、スウェーデンの国民的作家A・リンドグレーンの人気童話を実写映画化した『ロッタちゃん はじめてのおつかい』。愛らしい女の子が家族、そして何よりも自分ために頑張ります。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©1993 AB Svensk Filmindustri

ストーリー

 5才のロッタちゃん(グレテ・ハヴネショルド)はパパとママとお兄ちゃんとお姉ちゃんの5人家族。気分屋でマイペースのロッタちゃんは、お母さんが用意した服が気に入らないと隣に住むおばちゃんの家で“一人暮らし”を始めるが、お化けが出そうなのですぐに帰る。
やがてクリスマスなのにクリスマスツリーがないことに嘆くお兄ちゃんとお姉ちゃんに、ロッタちゃんが奇跡を巻き起こす――。


ロッタちゃんを最強にさせるのは、大人の優しさ

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©1993 AB Svensk Filmindustri

 子どもは最強なのかもしれません。
だって、寂しそうな目をしていたら近所の人たちが救いの手を差し伸べてくれるわけだし、甘えても許されるという特権があるのだから。

 その証拠に、お気に入りのお菓子屋さんの優しさ。お菓子屋さんはもう閉店するのに、泣き出したロッタちゃんに売れ残ったお菓子をいっぱいお土産にくれる。それのおかげで、ロッタちゃん一家に奇跡が巻き起こるのだから、ある意味彼女は魔法使い。
計算しない愛くるしさが、周りの人の優しさを生んでしまうのです。

 これがちょっぴり羨ましくも、妬ましくは思えない。だって、大人がこれをやってしまったら単にイタイし、病院送りにされるかもしれない。ロッタちゃんがクリスマスの夜に起こす奇跡も、子どもだからこそ生まれるファンタジー。
「子どもには夢を見させなきゃ」という大人たちの気持ちが、ロッタちゃんを最強にさせるのです。


想像する間が全くナシ!逐一報告されるロッタちゃんの心情

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画
©1993 AB Svensk Filmindustri

 ロッタちゃんが何を思っているのかは、すべて彼女が話してくれる。
一人でいるときもバムセと名付けられた豚のぬいぐるみに話しかけるように、「嬉しい!」「悲しい……」「今、怒ってる!」と喜怒哀楽を逐一リアルタイムでこちらに投げてくる。ある意味Twitter的実況が、この映画の最大の特徴です。

「これって映画としてどうなの?」と首を傾げる人もいると思います。主人公が自分の気持ちをその場で全部伝えるなんて。でも、これが“子ども”の映画。映画自体も子どものように、大人の優しさでカバーされてしまう。

 この映画にはとてもじゃないけど怒れない。愛らしいロッタちゃんに優しくしてしまうように、映画にも優しくしてしまうはず。いちいち指摘するほうがバカらしくなるほど、平和なムードに包まれている。その原因はロッタちゃん。純粋な欲望と行動に満ち溢れた主人公が、映画すら無敵にしている。観ている我々こそが、バムセになった気分です。
つまり、何も言えないまま、ロッタちゃんに付き合わされるってことです……。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画

『ロッタちゃん はじめてのおつかい』DVD
価格:1,280円(税込)
発売:アスミック・エース
販売元:KADOKAWA 角川書店


 今回は、『小さな女の子が頑張る』をテーマに作品を選んでいたのですが、 “頑張ってる”って思うのはそれを見ている他人なのかもしれません。
この子たちは抗えない現実に直面し、それと向き合っているだけ。自分が頑張ったなんて思っていないでしょう。

 それでもその姿は誰かの勇気になる。特に、面倒くさい大人の事情に雁字搦めな我々の。
新子と、ジニと、ロッタちゃん。彼女たちは特別な能力が備え付けられた女の子でもない。どこにでもいる、普通の女の子だからこそ勇気付けられるのです。

 思えば全員、おかっぱ頭なんですね。
これはもう、大人の皆さんもおかっぱ頭にするしか方法はありませんね。そんなことはないですね。


Text/たけうちんぐ

Twitter、FacebookでAMのこぼれ話をチェック!

読者アンケート

AMではより楽しく役に立つサイトを目指すため、読者アンケートを実施しております。
本アンケートにご協力お願いします。
アンケートはこちら

あわせて読みたい

新作映画
映画3選まとめ

関連キーワード

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

今月の特集

AMのこぼれ話