• love
  • 2013.09.18

ホラー映画の常識を覆す!イケメンゾンビが人間に恋しちゃった?『ウォーム・ボディーズ』

 彼は音楽好き。ちょっと顔色が悪くて不健康。
女の子の前では「うー……」とか「あー……」しか言えないようなコミュ障で、好きな子に話しかけるたびに自問自答するくらい恋愛に奥手。でも、とことん優しくて純粋。

 あー。いるいる。よくいる草食系男子でしょ?いやいや、全然いないです。
なぜなら彼は、ゾンビ系男子!!
荒廃した近未来を舞台にした、恐怖と恋愛がイイ感じに入り乱れた新感覚の“ロマンチック・ゾンビ・ラブコメ”のヒーローなのです。

ウォーム・ボディーズ ジョナサン・レヴィン ニコラス・ホルト テリーサ・パーマー ジョン・マルコヴィッチ アスミック・エース ゾンビ ラブコメディ たけうちんぐ
© 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 繊細なゾンビ系男子(というかゾンビ)を演じるのはニコラス・ホルト。『アバウト・ア・ボーイ』でヒュー・グラントと共演した可愛らしい子役時代の面影を忘れるほど、『X-Men:ファースト・ジェネレーション』『ジャックと天空の巨人』などで大活躍する彼はイケメンに育っています。
その相手役にはテリーサ・パーマー。ゾンビ系男子とは正反対の、強気でパワフルなニンゲン女子を演じています。 『50/50 フィフティ・フィフティ』を大ヒットさせた新星、ジョナサン・レヴィン監督がありそうでなかった新感覚の“ゾンビラブコメ”を誕生させました。
ゾンビ映画約50年以上の歴史を、ゾンビ男子とパワフル女子がロマンチックに塗り替えます。


ストーリー

 荒廃した近未来。謎のウィルスによって人類の大半が死滅し、かつてはニンゲンだったゾンビたちが街に溢れかえっていた。
そんな中、自分の名前を忘れてしまった青年のゾンビ“R”(ニコラス・ホルト)は今日も食料を求めてニンゲンに襲い掛かる。しかし、そこで恋をしてしまう。彼女の名はジュリー(テリーサ・パーマー)。ゾンビ駆逐作戦を担う軍のリーダーの父を持つ、ニンゲンの女の子だ。
Rはジュリーを自らの住まいに匿い、ゾンビから助ける。自分もゾンビなのに。
最初は怖がっていたジュリーは、次第に彼の純粋な愛情を感じ始めていく。そしてRもまた、彼女を想うと体が温まっていくことに気付いていく――。

こんなイケメンゾンビ、見たことありません!

ウォーム・ボディーズ ジョナサン・レヴィン ニコラス・ホルト テリーサ・パーマー ジョン・マルコヴィッチ アスミック・エース ゾンビ ラブコメディ たけうちんぐ
© 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 ゾンビは怖いでしょう。でも大丈夫。このゾンビはだいぶイケメンです。
危険に晒される女の子を何度も助けてかっこいいので安心です。
でも、やっぱりゾンビです。人を食べます。一応怖いです。
……どっちだよ!

 この映画は従来のゾンビ映画の概念を覆している。
まず、ゾンビがナレーションをしている。しかも葛藤をするのです。

「自分はなぜ人と接することができない?」
「うわ、アイツ、自分の皮と肉食ってる。ああいう風にはなりたくない……」
「この先、俺には何が待っているんだろう」

 その葛藤は割と人間の若者と変わりない(皮と肉の部分以外)。かつて人間だったからこそ、主人公・Rは自分がゾンビであることを嘆いている。心の中でもがき苦しんでいる。それも、恋をしてしまったから余計に。

 好きな子を前にして「あー」とか「うー」しか声が出ないし、自分の名前さえ忘れている。
彼のやるせなさは、なんだか『ロミオとジュリエット』で描かれる葛藤に近い。身分の違いで恋愛ができない。
二人はゾンビとニンゲンだからこそ引き裂かれ、離れ離れになってしまう。

 失恋に落ち込む彼の姿になぜかキュンとしてしまったなら、ジュリーの気持ちが分かるはず。彼女もまた、ニンゲンの心を完全に忘れ切っていないRに惹かれていく様が切ないのです。って、ゾンビ映画なのに何なんでしょう、この感覚は。Rが自分の気持ちを言葉で伝えることができず、レコードに針を通して音楽で伝えようとするシーンはゾンビ映画とは思えません。


ただのラブコメじゃない。これは人類の成長のお話

ウォーム・ボディーズ ジョナサン・レヴィン ニコラス・ホルト テリーサ・パーマー ジョン・マルコヴィッチ アスミック・エース ゾンビ ラブコメディ たけうちんぐ
© 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 ジェリーに恋心を抱くにつれ、Rは自分の心が温まっていくことに気付く。そして彼の姿を見た他のゾンビたちにも、異変が起きていく。その変化に気付いた“ゾンビのなれの果て”の姿であるガイコツたちが、ニンゲンの心を取り戻しつつあるゾンビたちに襲い掛かる後半はスリル満点です。

 Rの悶々とした語りは、どこか生活に疲れ、未来の展望がない若者の心情にも思える。そして行く宛てもなくフラフラと彷徨い続けるゾンビたちが、現代に生きる人々の姿と被る。彼らが誰かに恋をして、もしくは誰かの恋する姿を見たことで、ニンゲンであった過去の記憶が呼び起こされる。
その劇的な様は、ホラー映画の皮を被った人間ドラマのワンシーンに見えるのです。

 これは、人類の成長のお話なのかもしれない。
恋をすることで個人が生きる希望を得て、さらに人類全体の希望すら見出してしまう、お話。

「ゾンビなら問答無用に撃ち殺す」と決め付けていた人間たちの心も変わっていく。
ゾンビ=悪ではない。優しい心を持ったゾンビもいる。これは今までのゾンビ映画では描かれていなかった。一人一人が相手の気持ちを想像することで、新しい時代を築く。そんな人種差別にも通じるテーマが本作にはある。
ゾンビの街とニンゲンの街を隔てる巨大な壁は、ベルリンの壁にも思えてしまう。
最終的には壮大なスケールの愛が描かれていき、予想外にポジティブな展開がラブコメを盛り上げるのです。

ホラー映画の常識を覆す!爽快ラブコメディ

ウォーム・ボディーズ ジョナサン・レヴィン ニコラス・ホルト テリーサ・パーマー ジョン・マルコヴィッチ アスミック・エース ゾンビ ラブコメディ たけうちんぐ
© 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

「ウォーム・ボディーズ」――この言葉は複数形。恋をした身体(ゾンビ)が冷え切った世界を温めていく。それも一人じゃない。たくさんの“温まった体”によって、ホラー映画の世界を打ち壊していく様が痛快で、しかもラブコメに必要不可欠な結末がちゃんと待っているのです。

 ゾンビ同士の会話のシーンや、Rがジェリーを前に悩むくだり。すごくシュールです。笑いつつも、ちょっぴり切ない。で、ほんのり怖い。いちいち感情が忙しく、98分があっという間です。

 フラフラと彷徨い歩くゾンビ系男子。
現実にもそれに近い、顔色がちょっと悪くて、繊細で、恋愛に奥手な男子はたくさんいるはず。

 彼らは草食系男子に近いけど、本当は女子に恋したい肉食系男子です。
食べたくても食べられない彼らに代わって、むしろ食べてしまってくださいね。

     

9月21日(土)シネクイント他全国ロードショー

監督・脚本:ジョナサン・レヴィン
キャスト:ニコラス・ホルト、テリーサ・パーマー、ジョン・マルコヴィッチ
配給:アスミック・エース
2013年/アメリカ映画/98分
URL:映画『ウォーム・ボディーズ』公式サイト


Text/たけうちんぐ

あわせて読みたい

新作映画
映画3選まとめ

関連キーワード

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

今月の特集

AMのこぼれ話