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  • 2013.09.01

まるでスポ根?タイプライターの才能が花開くとき恋がはじまる!『タイピスト!』

 日々、パソコンを前にカタカタ鳴らしている女性は多いと思います。
一日の大半が、時間に縛られた手をキーボードに伸ばしてカタカタ。家に帰っても再びカタカタとツイッター、フェイスブック、ブログ……
あれ?その手は、タイプするためにあるんだったっけ。もっとこうなんか、好きなタイプの男の人の手を握ったりするためじゃなかったっけ?この“タイプ”違いに日々困惑している人も少なくはないでしょう。

タイピスト レジス・ロワンサル ロマン・デュリス デボラ・フランソワ ベレニス・ベジョ ギャガ株式会社
©2012 – copyright : Les Productions du Trésor – France 3 Cinéma – France 2 Cinéma – Mars Films - Wild Bunch – Panache Productions – La Cie Cinématographique – RTBF (Télévision belge)© Photos - Jaïr Sfez.

 しかし、タイプすればするほど恋が芽生えるというまさかの“インドア”ラブコメが生まれました。それも、恋愛映画の量産国・フランスから。
一体どういうことなのか、今からご説明します。

 本作には『アーティスト』『オーケストラ!』など現代の名作を生み出してきたスタッフが集結し、1950年代のフランスを恋と笑いで華やかに彩ります。
監督・脚本はジェーン・バーキンのPVや音楽ドキュメンタリーを手がけてきたレジス・ロワンサル。
ドジでマヌケ、だけどタイプライターの才能はピカイチなヒロイン・ローズを演じるのは『ある子供』で絶賛されたデボラ・フランソワ。その恋の相手役であり、名タイピストとして厳しく指導する経営者・ルイを演技派俳優ロマン・デュリスが演じ、「タイプするたびに次第に接近する男女」という今までに無いラブコメディを楽しませてくれます。


ストーリー

 故郷の田舎町を飛び出したローズ(デボラ・フランソワ)は、保険会社の経営者・ルイ(ロマン・デュリス)の秘書となる。憧れの仕事に就いて喜ぶのも束の間、ドジで不器用すぎて僅か一週間でクビを言い渡される。
しかし、ローズにはズバ抜けたタイプライターの才能があり、それを見出したルイは彼女にある提案をする。それは、タイプライターの早打ち世界大会で優勝すること。
地方予選、一本の指で打つ癖を矯正、メンタルを鍛えるためにジョギング。様々な試練を乗り越え、ローズは名タイピストとしての階段を上りつめる。
その過程で、次第にルイとの恋が芽生え始める――。

“インドア”ラブコメの正体は、まさかのスポ根映画!?

タイピスト レジス・ロワンサル ロマン・デュリス デボラ・フランソワ ベレニス・ベジョ ギャガ株式会社
©2012 – copyright : Les Productions du Trésor – France 3 Cinéma – France 2 Cinéma – Mars Films - Wild Bunch – Panache Productions – La Cie Cinématographique – RTBF (Télévision belge)© Photos - Jaïr Sfez.

 1950年代のフランスのファッションや髪型、カルチャー。レトロだけどポップに満ち溢れた映画の雰囲気の居心地が良いのです。

 タイプするだけなんて地味だし、暗いし、動かない。カタカタと音が鳴っているだけの映画でしょう?
いやいや、タイトルは『タイピスト!』です。「!」が付いています。
それくらい勢いを感じさせてくれるのは、本作が“インドア”と見せかけたスポ根映画だからです。

 ルイにジョギングまで強行させられるローズは、まさにコーチと選手の関係。タイプライターをボール、ラケット、ゴーグルなどと自由に置き換えることができる。
ルイは厳しく指導する分、ローズをよく見ている。一番の応援者であり、理解者なのがルイなのです。だからこそ、燃え上がる恋の行方にハラハラする。

 最初はそんな気は無かったけど、次第に……なんて下りもなかなかときめかせてくれるので、カタカタがドキドキに変わる瞬間に感動が生まれるのです。
見ていて残念なくらい不器用なローズが、どんどん可愛く見えてくる。これはルイの仕業なのかも知れません。


才能だけでは幸せになれない?

タイピスト レジス・ロワンサル ロマン・デュリス デボラ・フランソワ ベレニス・ベジョ ギャガ株式会社
©2012 – copyright : Les Productions du Trésor – France 3 Cinéma – France 2 Cinéma – Mars Films - Wild Bunch – Panache Productions – La Cie Cinématographique – RTBF (Télévision belge)© Photos - Jaïr Sfez.

 ローズはルイの指導により、ぐんぐんとタイプのスピードを速めて成功していく。 それでも、何か満たされないことにローズは気付く。
ルイが傍にいないこと、恋の才能に気付かせてくれた人の不在に物足りなさを感じたとき、スポ根映画が恋愛映画へと変貌を遂げるのです。

 世界大会で、強豪のアメリカ人タイピストと対峙するローズ。
そこでルイが繰り出す印象的なセリフがある。

「アメリカ人はビジネスを、フランス人は恋をする」

 これはフランス映画の宣戦布告とも言える。その証拠に、ローズとルイの恋がある。
そして、ラブコメとはいえラブシーンが結構エロい。多くの男女の本能を奮い立たせる、完全なる性描写です。
こういった抜け目のない恋愛描写こそ、世界大会で優勝を狙っている「フランス映画」そのものなんじゃないでしょうか。

 いわゆる“恋の力”で這い上がるローズと、恋愛映画の底力を見せ付けるフランス映画が重なる。
それがまたユニークで、この映画自体がまるでローズのように愛らしくてお茶目なところが憎めないのです。

 果たして、ローズは世界大会で優勝するのか。そして、ルイとの恋の行方は?
ローズにとって、一番の幸せとは何か分かるはずです。
カタカタと音を鳴らせば鳴らす分、いつかは恋に発展する? いやいや、現実ではそんなことありえない。そう思う人だっていると思います。
この映画がファンタジーかどうかは、ローズのようにタイプ以外の“才能”に気付くかどうかにかかっているのかもしれません。


8月17日(土)よりヒューマン トラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー!

監督・脚本:レジス・ロワンサル
キャスト:ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ、ベレニス・ベジョ
配給:ギャガ株式会社
2012年/フランス映画/111分
URL:映画『タイピスト!』公式サイト


Text/たけうちんぐ


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たけうちんぐ
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