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  • 2013.08.13

『ツリー・オブ・ライフ』監督最新作!寒くて白々しい“永遠の愛”『トゥ・ザ・ワンダー』

「君と一生」「ずっと一緒に」「あなたと永遠に」
流行のラブソングには使い古された言葉ばかり。巷ではそんなに“永遠”が起きているのだろうか。
歌によると、どうやら愛は死なないらしい。愛は冷凍保存されて、ミイラのように生き続けるらしい。
寒いし、グロいし、白々しい。本当にそういうものなのか?

 伝説の巨匠が問う“永遠”は、もっと肌で感じられる現実の恋愛が描かれていた。

トゥ・ザ・ワンダー テレンス・マリック ベン・アフレック オルガ・キュリレンコ レイチェル・マクアダムス ハビエル・バルデム ロングライド
©2012 REDBUD PICTURES, LLC

『天国の日々』を始め、すべての映画が芸術作品として評価されるテレンス・マリック監督の新作。
自身の映画作家人生に多大な影響を受けたというベン・アフレックが出演を熱望し、今回ついに実現に至りました。
彼の相手役には、近年は注目作への出演が続くオルガ・キュリレンコ。他にもレイチェル・マクアダムス、ハビエル・ダルデムなど巨匠の新作に相応しい豪華出演陣が名を連ねます。


ストーリー

 作家志望のニール(ベン・アフレック)は、10代で結婚して娘をもうけたマリーナ(オルガ・キュリレンコ)と恋に落ちる。マリーナが夫に捨てられて、生きる希望を失いかけていた矢先にニールが優しい手を差し伸べ、彼らは一生の愛を誓ってフランスからアメリカへ渡った。
だが、二人の愛は数年後には冷えかかってしまう。マリーナの娘はフランスに帰りたがり、「パパ気取りはやめて」とニールに言う。二人は争いが絶えず、挙げ句の果てにはニールが幼なじみのジェーン(レイチェル・マクアダムス)に気持ちが移ってしまう。
ニールとマリーナはカトリック教会の神父・クインターナ(ハビエル・ダルデム)に救いを求めるが、クインターナ自身も、神、信仰について葛藤していた――。

恋、信仰、人生――誰もが“永遠”に葛藤を続けている

トゥ・ザ・ワンダー テレンス・マリック ベン・アフレック オルガ・キュリレンコ レイチェル・マクアダムス ハビエル・バルデム ロングライド
©2012 REDBUD PICTURES, LLC

 たとえ“永遠”という言葉が存在するとしても、容易く愛に添えてしまっていいのだろうか。
その愛について、浅くも深くも考え込んでしまう葛藤にこそ添えてあげたい。それはとてつもなく辛い事実で、過酷な現実なのです。

 ニールとマリーナは、愛さえあれば他に何もいらないとすら思っていた。
前夫と正式な離婚手続きをしていなくても、たとえ二人が結婚できなくても。
そんな愛を打ち砕いたのは、浮気でも事故でも災害でもない。時間だったのです。
時間は、人の感情を良くも悪くも変化させてしまう。ニールとマリーもうつろう愛情にとまどいを感じ、その葛藤に永遠と苦しめられる。

 そして、彼らが相談相手として頼りにしている神父・クインターナにも葛藤があった。
神は何なのか。どこにいるのか。どうして姿を現さないのか。その実態を掴めない彼は苦悩する。
本作は途中から彼のナレーションがメインとなり、物語を詩的な言葉で運んでいく。

 恋の終わりと、愛の消滅。
それは神にも解決できない問題であり、ニールとマリーナとクインターナをより深く“永遠”の葛藤へと導いていくのです。


自然の風景に、人間の風景は敵わない

トゥ・ザ・ワンダー テレンス・マリック ベン・アフレック オルガ・キュリレンコ レイチェル・マクアダムス ハビエル・バルデム ロングライド
©2012 REDBUD PICTURES, LLC

 印象的なのは、激怒したニールが運転中の車を停めて、マリーナを荒野に置き去りにするシーン。
程なくして、やりすぎだと思ったのかニールが戻ってきて、無言でマリーナを乗せる。

 この二人、もう別れたほうがいいでしょ。誰もがそう思ってしまう。

 でも、二人はもはや情けでしか付き合えていないからしょうがない。愛情ではなく、“情け”だけで一緒にいる惰性がニールを怒らせ、マリーナを傷つけている。
激しく抱き合い、仲良くじゃれあっていた二人はもう過去でしかない。現在進行形なのは、発狂したようにマリーナが部屋をめちゃくちゃにする光景だけ。

 一方、そんな残酷な日常風景と対比されるシーンが心を打つ。
せせらぐ水。暮れゆく空。自然の風景が映し出されることで、移り行く男女の関係がより切なく感じられる。
水が波打つように、一定の感情は保てない。空が毎日、白と青と赤と黒を繰り返すように永遠なんて存在しない。
どこにでもある男女の恋愛のもつれから、どんどん壮大なテーマに歩み寄る。
同時に、この男女の姿が普遍的なものとして目に映るのです。

“永遠”はあると信じられる?

“愛”という感情は、誰もが一度は疑うものです。
寡作で知られるテレンス・マリックが、あえてこの題材を映画化しようとした理由を想像してみるのも面白いかもしれません。
前作『ツリー・オブ・ライフ』のテーマがあまりにも壮大で「ついていけない!」と悲鳴を上げた人でも、本作は大丈夫かも。なぜなら、多くの人が普段から悲鳴を上げている“恋愛の終焉”がテーマなのだから。
本作を見て、それでも愛に寄り添う“永遠”の存在を信じますか?


8月9日(金)TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開

監督:テレンス・マリック
キャスト:ベン・アフレック、オルガ・キュリレンコ、レイチェル・マクアダムス、ハビエル・バルデム
配給:ロングライド
原題:TO THE WONDER /2012年/アメリカ映画/112分
URL:映画『トゥ・ザ・ワンダー』公式サイト


Text/たけうちんぐ


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たけうちんぐ
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