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  • 2013.07.30

赤裸々ゲストークのオンパレード!愛は家族にぶち壊される?『ニューヨーク、恋人たちの2日間』

 恋愛映画は、恋人だけが出てきたらそりゃ終始ハッピーでしょう。
互いを見つめ合い、未来に向かって歩き、キスして抱き合って終わる。

……うっわ。こんなにつまんないものはない。

ニューヨーク、恋人たちの2日間 ジュリー・デルピー クリス・ロック アルベール・デルピー アレクシア・ランドー ダニエル・ブリュール ヴィンセント・ギャロ アルバトロス・フィルム
©Polaris Film Production & Finance, Senator Film, Saga Film, Tempête sous un Crâne Production, Alvy Productions, In Production, TDY Filmproduktion - 2012All rights reserved.

 映画は、出ているのが恋人だけじゃないから面白くなる。
そこに第三者が入り込むことで客観性が生まれ、出来事が起こる。現実だって同じです。
世界は恋人だけじゃないから日々に枷が生まれ、葛藤と向き合えて、愚痴や痴話で盛り上がると思うのです。

 この映画のタイトルをよく見てください。『ニューヨーク、“恋人たち”の2日間』。
おっ、恋人だけじゃない。やったぜ。これは何かが起こるに違いない!

『トリコロール/白の愛』『ビフォア・サンセット』などで知られるフランス女優ジュリー・デルピーは監督業もこなす。
今回は監督・脚本・主演の3セットで自信の前作『パリ、恋人たちの2日間』の続編を手がけます。続編とはいえ、前作を観ていなくても全く問題ありません。

 様々な人種が入り交じるニューヨークを舞台にして、コメディアン出身の人気俳優クリス・ロックを相手役に女の本音と赤裸々トークを盛り込んだロマンチックコメディに仕立て上げています。
あのヴィンセント・ギャロもカメオ出演し、そこらへんにある恋愛映画とは一線を画すブッ飛び様に終始笑いっぱなしです。

ストーリー

 フランス人写真家のマリオン(ジュリー・デルピー)は恋人と別れ、一人息子とニューヨークのアパートに住んでいる。
同居人はボーイフレンドのミンガス(クリス・ロック)。お互いを理解し合って何不自由なく暮らしていたが、パリからマリオンの父、妹、その彼氏がニューヨークを訪れ、2日間滞在することに。
セックス、人種問題、そして仕事にも恋愛にも影響を及ぼす彼らのせいでアパートは大混乱。
突然の “モンスター”たちの破天荒ぶりに、仲の良かったマリオンとミンガスの間に大きな溝が生まれてくる――。


その恋愛は、子どもに見せられる恋愛ですか?

ニューヨーク、恋人たちの2日間 ジュリー・デルピー ジュリー・デルピー クリス・ロック アルベール・デルピー アレクシア・ランドー ダニエル・ブリュール ヴィンセント・ギャロ アルバトロス・フィルム
©Polaris Film Production & Finance, Senator Film, Saga Film, Tempête sous un Crâne Production, Alvy Productions, In Production, TDY Filmproduktion - 2012All rights reserved.

 幸せに過ごすはずの恋人との2日間が、3人の刺客によって完全に荒らされます。
まるで空気を読まない父。セックス及び恋愛の感覚がぶっ飛んでいる妹。こっそりマリファナを注文する妹の彼氏(しかもマリオンの元カレ)。
そこでは心ときめくセリフもシチュエーションもぶち壊され、その欠片が笑いとなって鋭く飛び交ってくる。

 下ネタ交じりの赤裸々トークに笑いつつも、笑っていいのか分からない危険なジョークに困惑するのはマリオンとミンガスだけじゃない。
ミンガスが持つ第3者視点で、観客の私たちも気持ちを共有できる、新感覚の参加型・恋愛映画なのです。

 ジュリー・デルピー監督の作風は、古典的ロマンチックコメディをなぞっていて実に正統派。なのに、どこかが確実に狂っている。言ってしまえば、ウディ・アレンを女にして、凝り固まった頭をお湯に浸からせて、その上からローションをかけてみたような…。
乱暴な表現だけど、その緩さとエロさと狂いっぷりが今までにない恋愛映画を作り出しています。

 冒頭、子ども向けの人形劇が始まる。
「マリオンとミンガスが出会って、付き合って……」などと劇中のストーリーをなぞるが、その後の恋愛は子どもには見せられないものばかり。教育番組とはかけ離れた“恋愛”という行為をシニカルに暗示し、刺激的なのです。
そして、ヴィンセント・ギャロの無駄遣い。
いや、無駄ではないけど、さりげなく大物を登場させる大胆な演出がニクい!

   

恋人だけじゃないから、ただのロマンスだけでは終わらせない

ニューヨーク、恋人たちの2日間 ジュリー・デルピー ジュリー・デルピー クリス・ロック アルベール・デルピー アレクシア・ランドー ダニエル・ブリュール ヴィンセント・ギャロ アルバトロス・フィルム
©Polaris Film Production & Finance, Senator Film, Saga Film, Tempête sous un Crâne Production, Alvy Productions, In Production, TDY Filmproduktion - 2012All rights reserved.

 一つの恋愛は、一組の男女だけで行なうこと。だけど、そこにそれ以外の人々が入り込んできたら?
パリに住む家族がニューヨークにやって来たとき、マリオンの豹変ぶりにミンガスが戸惑ってしまう。
この状況、思い当たる節のある人も少なくはないと思います。

 親と一緒にいる自分、兄弟・姉妹と一緒にいる自分は、恋人に見せる自分とまた違う。
マリオンの場合、親も妹だけじゃなくて元カレすら一斉に押し寄せるのだから、ミンガスの衝撃は計りしれない。
ミンガスはここで、相手を「恋人」という肩書きでしか見ていないかどうか試される。
どれだけの男が、傍にいる人の「恋人」以外の面と真正面から対峙できるでしょうか。

 血が繋がっているはずなのにまるで理解し合えない人々。
人種、言語、文化の違いも入り交じり、とにかく笑わせます。
これが『ニューヨーク、“恋人”の2日間』ならただのロマンスで終わってしまうし、マリオンの本性を知らぬままミンガスは付き合い続けるでしょう。
だけど、“恋人たち”になることで彼女たちを取り巻く環境もひっくるめて、ロマンチックコメディに昇華されているのです。

「うわ、こんな家族ヤだな」とまるで地獄絵図のようにマリオンの家族を見ていても、最終的にはすべてのキャラクターが愛おしく思えてしまう。どうしようもないけど、なんか居心地がいい。
下品も下衆も兼ね揃えたジュリー・デルピーの人間愛は、上映が約80分後に差し迫る頃に「この映画、終わってほしくない!」とすら思わせてくれる。

 マリオン一家は、映画が終わるとまるで嵐が過ぎ去ったように感じさせる。
ただ一つの恋愛に、これだけのトピックが増えたら人生に退屈しない気も。
たった『2日間』とは思えないボリュームに驚いてしまうはずです。



7月27日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷他全国順次公開

監督・脚本:ジュリー・デルピー
キャスト:ジュリー・デルピー、クリス・ロック、アルベール・デルピー、アレクシア・ランドー、ダニエル・ブリュール、ヴィンセント・ギャロ
配給:アルバトロス・フィルム
原題:2 Days in New York/2012年/フランス・ドイツ・ベルギー合作映画/95分
URL:映画『ニューヨーク、恋人たちの2日間』公式サイト


Text/たけうちんぐ


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たけうちんぐ
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