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  • 2013.07.09

【痛い女は卒業!】思い出したくない青春がよみがえる映画まとめ

 眩い太陽の光の中、海辺を裸足で駆け抜け、大好きな恋人と抱き合う。はい、めでたしめでたし。
って、そんな青春ありえなかったよ。青春映画はどれもウソばっか。
みんなリア充で勝ち組でモテ男女の青春で、あの頃のクラスのようにどれも馴染めないものばかり。

 だけど、これらの作品に登場する女の子たちとは仲良くなれるかも。
自意識過剰で、繊細で、不満ばかり。
10代の思春期をこじらせちゃってる系女子は、今の自分とどこかしら繋がってるのかも。
そんなイタくてどうしようもない、少女たちの頭の中を覗いてみましょう。


周りに馴染めないで世間を蔑む少女・イーニドが彷徨い歩く
“ゴースト”のような空虚な世界とは
『ゴーストワールド』

 一本目は、人気オルタナティブコミック作家ダニエル・クロウズのコミックを映画化した作品。
周囲と馴染めない主人公の女の子は、自意識の殻の中で思春期をこじらせちゃっています。

ゴーストワールド 映画 3選 まとめ
©2001 United Artists Films, Inc. All Rights Reserved.

ストーリー

 おしゃれで絵を描くのが大好きなイーニド(ソーラ・バーチ)は、自分よりちょっとモテる幼なじみのレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)と仲良し。
高校を卒業しても進路が定まらないイーニドは、冴えない中年の男シーモア(スティーブ・ブシェミ)をからかいつつも、次第に親しくなっていく。
やがて彼と肉体関係を持つが……。


「私は他の人とは違う!」その自意識が、彼女に涙を流させる

 夢と目標に向かうクラスメイトを鼻で笑うイーニドは、とにかくひねくれている。
マニアックな古いブルースを好み、斬新な色に髪を染め、不評だったらすぐに色を戻す。そして凝り固まった自意識の中、一人の世界に閉じこもっていく。

 世間の誰もが無視するであろうシーモアの相手をすることで「自分は他の人とは違う」と酔いしれるし、手に入れてしまえばあっさりと関係を絶つ。で、相手を傷つけることでますます孤独になる
こういった悪循環を繰り返してしまう彼女は、まるで幸せとはほど遠い世界にいる。

 あまりの寂しさに、強情で意地っ張りのはずのイーニドが号泣するシーンがある。
周囲と馴染み、例えばFacebookの写真にたくさんタグ付けされたりする人には、涙してしまうイーニドの気持ちが分からないかもしれない。
まったくタグ付けされず、素直にいいね!ボタンを押せない人こそ、イーニドと一緒に号泣してしまうのでは?
その素直な涙には、きっと心を打たれてしまうはずです。


“ゴーストワールド”が意味するものとは?

 一見、ホラー映画とも思わせる本作のタイトル。
化物も幽霊も出てこないのに“ゴースト”とは一体何なのか。その意味ははっきりと解説されていない。
ただ、この映画には慢性的な恐怖が根底に流れているのです。

 10代にとって、先行きが見えない青春こそがホラーといえるのでしょう。
生きているのか死んでいるのか、まるではっきりしない自画像。イーニドは絵を描くのは好きでも、自分の姿を描けないでいます。
自己イメージが無色透明で、まるで幽霊のように彷徨い歩く。周囲に馴染めない代わりに、不明瞭な未来とともにこのタイトルがしっくり馴染んでしまうのです。

 終盤、行く宛てもなくバスに乗り込む彼女の切ない後ろ姿から、“ゴーストワールド”の意味を初めて噛み締めることになるでしょう。

ゴーストワールド 映画 3選 まとめ

『ゴーストワールド』DVD発売中
価格:1,890円(税込)
発売:アスミック・エース
販売:角川エンタテインメント

どうして少女たちは“生”を実感できず、死”に憧れてしまうのだろう
『ヴァージン・スーサイズ』

 次に紹介するのは、繊細な少女像と映像美で綴るソフィア・コッポラの初監督作品。
そのタイトルの通り、“処女たちの自殺”を描いた物語です。


ストーリー

 1970年代、敬虔なクリスチャンの家庭で生まれ育った美しい五人姉妹。近所の少年たちは誰もが彼女たちに憧れていた。
ところが、末娘のセシリア(ハンナ・ハル)がある日突然自殺を図り、さらに四女のラックス(キルスティン・ダンスト)がボーイフレンドと過ちを犯したことで、少女たちの運命が揺らぎ始める――。


ヴァージン・スーサイズ 映画 3選 まとめ
by Amy L. Riddle

映像美に埋もれる、少女だった頃の初々しい記憶の数々

 五人の少女が自ら死を遂げるという衝撃的な内容であるにも関わらず、その映像は極めて美しい。
ただ、それは絶望を水で淡く薄まらせるような効果をもたらさない。瑞々しい彼女たちの姿が、より一層その儚さを際立たせているようにも思える。

 しかし、そこに映し出されるのは誰もが経験したであろう記憶の断片。
初めて異性と手を繋いだり、背伸びして大人の階段を上ろうとパーティーに繰り出したり、お酒の味を覚えたり……。
確実に“生”の喜びが描かれているからこそ、その絶望の輪郭がくっきりと現れるのです。

 厳格な母により、外出を禁じられた少女たち。レコードをすべて棄てるように命じられた彼女たちが、受話器越しに音楽を聴くシーンは胸に迫るものがある。
思春期の自由が奪われたとき、新たな自由を得る瞬間はいつだって感動的なのです
ひょっとすると彼女たちにとって“死”とは、自由の最たるものなのでしょうか。


この絶望、男に分かってたまるものか

 本作は回想劇で綴られている。それも近所に住む男の子の、あくまで男性目線で。
男たちには彼女らがなぜ死に至ったのか、大人になっても分からない。
五人姉妹の心情がまるで理解ができないことが大前提で物語が進んでいることが、その死をよりミステリアスな印象にしている。

 誰もが「何も死ぬほどじゃないでしょ」と思ってしまう。
それほど思春期の少女というものは異星人のようで、怪物のようで、幽霊のようで別次元の生き物であると言わんばかりに。
悲しむことはないのに強引に悲しんだり、日常の中で無理矢理絶望を見出す。退屈がそうさせているのか、若さ故か。
かつて少女だった頃のそういった癖を忘れてしまい、彼女たちの心情を理解できないのであれば、もう大人になってしまったということなのかもしれません。

“家族”を疑い続ける少女は家を出て、“レンタル家族”にハマってゆく
『紀子の食卓』

 最後に紹介するのは、日本に留まらず世界中にその鬼才ぶりを認められている園子温監督の“青春”映画。
“”をつけたのは当然、この作品が単なる青春映画ではないからです。

 紀子の食卓 映画 3選 まとめ
©紀子の食卓 製作委員会

ストーリー

 17歳の平凡な高校生、紀子(吹石一恵)は息苦しい家庭と田舎でくすぶっている自分から逃れたい一心でいた。
ある日、、インターネットで“廃墟ドットコム”という女の子の集団のサイトを見つけたことがきっかけで上京する。そこでクミコ(つぐみ)と出会い、彼女が経営する「レンタル家族」に没頭していく。
しかし、紀子に続いて実の妹である次女のユカ(吉高由里子)が突然家を出てから母・妙子が自殺してしまい、父・徹三は紀子とユカの行方を捜し、彼女らが所属する集団の調査を始める――。


「あなたはあなたの関係者ですか?」

 そりゃ、関係者でしょ。自分自身なんだから。なんて即答したいところですが、そうはさせないのがこの映画。
紀子は東京進学を父から反対され、その反動で“廃墟ドットコム”の扉を開いた。やがて単身上京。
彼女の思春期特有の衝動と苛立ちは、身に覚えのある人も多いはず。

 映画の切り口は至って斬新。紀子、ユカ、徹三の三人のそれぞれの視点で物語は進んでいく。
誰もが自分が間違っているなんて思っていない。家族を内から外から見つめ直すという、園子温監督の狂気じみた観察眼が滲み出ている。

そして“廃墟ドットコム”のサイト上に映し出される「あなたはあなたの関係者ですか?」という問い。
心が身体に収まらず、自己イメージが掴めていない者にとって、その言葉は妙に印象的でずっと脳裏に残るはず。
「関係者です!」なんて即答させてくれない疑問が、自分自身にあるのです。


生きるとはつまり、“演じる”ということ

 10代、どれほどのウソをつき続けてきただろう。
周囲と波長を合わせるために、自分のキャラクターを演じることを余儀なくされてきた。それは家族にだって言える。

 生まれたときから、初期設定として“家族”はある。
どんな幸福な家庭にも悲惨な家庭にも、最初から息子/娘といった称号が与えられる。
その役柄に沿い、生きていくことは果たして正しいのでしょうか?  園子温監督は誰もが見過ごしてきた、役柄に沿って生きるという“常識”に首を傾げる。
そこで「レンタル家族」というお互いが演じることで関係を形成する団体を登場させ、現実世界の“常識”を覆そうとする。
思春期から地続きのまま、レンタルでも何でもないのになぜか今でも演じ続けている自分がいる。
だからこそ、息を呑むクライマックスと予想外の着地点に、あの頃の自分が抱いた疑問を突きつけられるのです。

紀子の食卓 映画 3選 まとめ

『紀子の食卓』プレミアム・エディション DVD発売中
価格:4,935円(税込)
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

 大人になると、自意識は社会から抹殺されていき、繊細は言い訳に過ぎず、演じるのが当たり前になっていく。
自意識の高いイーニドも、繊細な五人姉妹も、演じる紀子もいつかは大人になる。
期間限定の“少女”時代にくすぶっていても、こじらせていても、いつか必ず終わりが来る。

 この三本はあの頃のイタイ自分と再会する装置にも、懐かしくて感慨に耽る記憶にもなる。
逆に、全くの新しい世界にも感じられるでしょう。
過去・未来に囚われずに描かれるストーリーのように、自意識の殻を突き破って大胆に、そして自分に正直に生きていきたいとも思わせるかもしれませんし、そうじゃないかもしれない。

 登場人物たちが自分自身の映し鏡かどうかを試される。
その鏡に「あなたはあなたの関係者ですか?」と尋ねられたら、あなたはどう答えるでしょうか?


Text/たけうちんぐ

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たけうちんぐ
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