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  • 2013.06.11

【結婚する前に観ておきたい!】ちょっぴりシビアな結婚映画まとめ

 付き合い始めた頃はよかった。
一緒にいれば大体楽しかったし、思わず口に出してしまったかも知れない。「幸せ!」って。
なのに、結婚生活の蓋を開けてみたら「なんだこれ……」。
うざいし、つらいし、苦しいし。相手に抱く感情が様変わり。
まるで他人になったように、あの頃の恋人はもういない。自分が、それとも相手が変わってしまったのか。

 父と母なんて見たら、将来が不安で仕方ない。
新聞紙で終始顔を隠す父。そんな父に無言で夕飯を差し出す母。会話は無い。この二人がかつて愛し合っていたなんて信じられない!
愛を足しても引いても割っても、イコール幸せにならない。
結婚という難解な方程式に右往左往する男女の悲しき、儚き、切なき物語をとくとご覧あれ!


男と女がすれ違い、過去と現在が交わる
痛すぎる、恋の始まりと愛の終わり
『ブルーバレンタイン』

 はじめに紹介するのは、デレク・シアンフランス監督・脚本の『ブルーバレンタイン』。
カンヌやサンダンスなど数々の映画祭で話題となった、一組の夫婦の破局までを描いた物語です。

ブルーバレンタイン 映画 3選 まとめ
©2010 HAMILTON FILM PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

ストーリー

 ディーン(ライアン・ゴズリング)とシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)の夫婦は、娘とともに三人で暮らしている。資格を取って病院で忙しく働くシンディと、仕事が見つからないままのディーン。
互いに不満を抱えて生活し、かつて愛し合っていた二人の間には信じられないほど大きな溝が出来ていた――。


一つの映画に、幸せと不幸せが容赦なく入り交じる

 この映画は、ディーンとシンディの恋の始まりと愛の終わりを交互に映し出す。それはまるで、異なるジャンルの映画をいっぺんに観させられたような感覚なのです。
片方は、デートムービーにぴったりな恋愛映画。
付き合い始めのカップルがラブラブのディーンとシンディを観て、「こういう恋愛いいよね」って抱き合ってキスしたくなるような内容なんです。ところが、そこにいきなりまるで別の映画のようなシーンが挿入される。

 それは、やさぐれた主婦が一人で観に来るような恋愛サスペンス。
重苦しい空気のディーンとシンディを見て、「そうそう、男ってほんと最低よね」と結婚生活20年目の奥さんが旦那の愚痴大会を開催しそうな映画です。しかも、それがラブラブな本編に入り交じるという、アバンギャルドな手法で映し出されます。

 カップルの結婚前と結婚後。二つのストーリーを交互に見せることで、すれ違う男女の時間の経過と、その残酷さが浮き彫りとなる。
どこか見覚えのある二人の姿に、思わずハッとさせられる。「これ、うちらじゃん」って。そんな普遍的な愛の終わりを描いているのです。


この息苦しさの正体とは

 シンディが元恋人と偶然会ったことを告げるだけで、「なんで俺に言うの?」と執拗に突っかかるディーン。こういった二人が言い争うシーンに、決まって使われる演出があります。それは、二人の顔のクローズアップ。
この手法が意味するのは、もうこの顔から逃れられないということなのだろう。結婚した以上、一生この顔と付き合わなければならない。画面いっぱいに映し出されるディーンの顔に、世の女性は息苦しさを感じるはず。

 一方、世の男性はシンディの顔に窒息死しそうになる。
このような残酷描写が全編に使われることによって、より一層のトラウマレベルで鑑賞者を恋愛の墓場まで連れていってしまう。最終的に、性欲を奪うラブホテルの青い照明が、瀕死の心を完全にノックアウト。愛が息を引き取ります。

 デレク・シアンフランス監督は10年もの歳月をかけて、本作の脚本の改訂に取り組んだという。緻密に構成された過去と現在の物語は、観る人の記憶を刺激します。
素敵な思い出があるからこそ相手を傷つけるし、自分を苦しめる。そして、この映画は真顔で尋ねてくる。

「一生、その人と一緒になるつもり?」と。

結婚はやっぱり恋愛と全然違うんだ、って思い知らされるのです。

ブルーバレンタイン 映画 3選 まとめ

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価格:3,990円(税込)
発売元:バップ

より大きな幸せを渇望する夫婦は、パリへ移住する夢と希望を抱くが……
『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』

 次に紹介するのは、2009年公開のサム・メンデス監督の『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』。
『タイタニック』のレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが11年ぶりに共演を果たし、まさかの夫婦役です。

レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで 映画 3選 まとめ
©2008 DW Studios L.L.C. All Rights Reserved. c 2010 DW Studios L.L.C. All Rights Reserved.

ストーリー

 1950年代半ば、フランク(レオナルド・ディカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウィンスレット)の夫婦は二人の子どもに恵まれ、アメリカの郊外の街で平穏に暮らしていた。
やがて二人はそれぞれの夢の実現を目指し、パリへの移住を目論むが……。


『タイタニック』なんてウソっぱち? 今回、沈むのは船じゃない

 ディカプリオとケイト・ウィンスレット。この二人からは誰もが『タイタニック』を思い浮かべるでしょう。あの超大作で永遠の愛を誓った二人。しかし、本作では恐ろしい剣幕で怒鳴り合っている。
今回、亀裂が入るのは豪華客船ではなくて夫婦の絆なのです。

 誰もが追い求める“幸せ”の先に待ち構えているものとは、一体何なのか。過去にたくさん描かれてきた、アメリカの“ホームドラマ”の狂気の部分を切り取ります。
「レボリューショナリー・ロード」とは閑静な住宅街の名称。そこで夫婦は誰もが夢見る理想の結婚生活を送っているにも関わらず、さらに理想を夢見たことで、日常は残酷な物語に変貌する。
『タイタニック』には程遠い、ラブロマンスの転覆に溺れてしまう。

『タイタニック』で恐らく誰もが胸を熱くさせたカーセックスシーンは、本作でも健在。
が、これが皮肉なことに不倫相手とのカーセックスなのです。これは嫌がらせにもほどがある……。


“幸せ”に終着点はない

 物に溢れて、何不自由なく生活していてもどこか満ち足りない。お金に困っているわけでもなく、愛を失っているわけでもない。
生活の中で空虚を覚えるフランクと、自己を探し求めるエイプリル。より大きな幸せを求めることで、夫婦にこれほどまで溝が出来るとは……。愛し合っている、その事実だけで十分なのに。

エイプリルの幸せへの渇望が狂気に変わる様が凄まじい。
終盤の彼女は、もはやホラー! エイプリルから滴り落ちる血。フランクの真っ赤な形相。
沈むのは豪華客船ではなく、夫婦の夢。
『タイタニック』を観てもノれずにディカプリオとともにそのまま海に沈んでしまった人も、この超現実的恋愛物語にはノれるかも知れません。
そのかわり、もっと深く深―く沈みます。落ち込むってことです。

レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで 映画 3選 まとめ

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子どもを亡くしたことで、妻は心を病んでしまう。
困難にもめげずに生きていく、夫婦の絆とは――
『ぐるりのこと。』

 最後に紹介するのは、橋口亮輔監督の『ぐるりのこと。』。
1990年代初頭から現在まで様々な事件の凶悪犯を描く法廷画家の夫と、子どもを亡くしたことで絶望する妻との絆を描いた感動作です。

 ぐるりのこと。 映画 3選 まとめ
©2008『ぐるりのこと。』プロデューサーズ

ストーリー

 1993年、几帳面な妻・翔子(木村多江)と法廷画家のカナオ(リリー・フランキー)は子どもが産まれる喜びを噛み締めていた。しかし子どもは亡くなってしまい、翔子はその悲しみから心を病む。
二人は支え合い、少しずつ暮らしに平穏を取り戻していく――。


「そのままでいいじゃん」

 夫婦で支え合って生きていくのは、決して楽じゃない。
お金、生活、老後。本作は夫婦間におけるあらゆる問題を描いているが、だからといって全く重苦しくない。

 リリー・フランキー演じるカナオの、ちょっぴり女好きで軽いキャラクターに癒される。
自堕落的でだらしないけど、こういう男は絶対に必要。特に翔子には。その説得力は、激しく感情をぶつける翔子に投げかけるカナオの言葉にある。

「ちゃんとできなくたっていいじゃん。そのままでいいじゃん」

 几帳面であるが故に心を病んでしまった翔子にとって、この言葉がどれほど救いになるのだろう。
お互い、一人では足らない。
几帳面&自堕落的な二人が一緒になったからこそ、支え合って生きていく姿が眩しく見えるのです。


恐ろしい凶悪犯と、美しい景色
時代が変わっても、ずっと変わらないもの

 カナオが法廷画家として足を運ぶ裁判には、誰もが知っている事件をモデルとした犯人が次々と出廷する。
宮崎勤の連続幼女誘拐殺人事件、オウム真理教の地下鉄サリン事件、宅間守の小学校無差別殺傷事件。
これらの凶悪犯を描き続けるカナオの手は、絵画教室では美しい花を描く。それが何よりも救いなのだ。

 時代が移り変わり、その都度恐ろしいものに触れても、常に美しいものに憧れる。
カナオが描いたまだ見ぬ子どもの絵を、翔子はどう感じたのだろう。
イチョウ。木々。青い空。映し出される景色の数々。季節が変わり続けても、筆を握る手、相手を見る目は変わらないと言っているかのように。

 夫婦でいることは大変だけど、それ以上に一緒にいることの喜びを噛み締める。もう、それだけで十分なのだ。翔子には、カナオが必要。
“一生”だとか“永遠”だとか、“幸せ”なんて大袈裟な言葉なんて、この映画には必要ない。
すべてを凌駕するのは、一緒にいる心地よさ。
それを感じられたとき、ぐるり。と周囲を見渡した景色が美しく思えるはずなのです。

ぐるりのこと。 映画 3選 まとめ

『ぐるりのこと。』DVD発売中
価格:5,040円(税込)
発売元:バップ

 以上、結婚する前に観ておきたい映画三本でした。
どんなにイケメンでも美女でも、時が経てば太る。ハゲる。しわしわになる。 “今”は一日ごとに更新する。季節のように一年周期で戻ってはこない。
結婚は恋愛の延長線上にはないのかも知れないし、永遠なんてないに等しいかも知れない。

 だけど、今燃え上がる恋の熱情は否定できない。だからこそこれらの映画を観て、未来永劫愛し合いたい人と結婚における絶望と、恐怖と、哀愁を今のうちに分かち合いたい。
どうか、『ブルーバレンタイン』と『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』の後に、『ぐるりのこと。』をご覧頂きたいです。

 結婚生活の希望はいつだって身近なところにあるっていうオチで、なんとかハッピーエンドで締めてもらいたいのです。


Text/たけうちんぐ

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たけうちんぐ
ライター/映像作家

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