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  • 2013.06.01

名声さえあれば、モテも欲しいままに? 『ローマでアモーレ』

「有名人になってみたい」って思ったこと、一度くらいはあるでしょう。
せっかくの人生なんだから、ちょっとはちやほやされてみたいもん。街を歩けば誰もが振り返るとか、Twitterのフォロワーが何万人いるとか、そのアカウント名の横に認証済みのアカウントのチェックマークが付いてるとか。
テレビや新聞にちょっと載っただけで友達に知らせるし、Twitterで有名人にリプライもらったら思わずリツイートしちゃう。

ローマでアモーレ ウディ・アレン アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス ジュディ・デイビス ジェシー・アイゼンバーグ エレン・ペイジ ロングライド
©GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo by Philippe Antonello

 この映画に出てくる人々は有名人に笑い、有名人に泣く。
前作『ミッドナイト・イン・パリ』でパリの魅惑でワクワクな夜を鮮やかに描いたウディ・アレン監督。今度はローマを舞台に“名声”をテーマにした群像劇で、いわゆる“ローマ中がアイ・ラブ・ユー”状態。
アレンは一体どんなラブストーリーを見せてくれるのでしょうか。

 今回の目玉は、なんといっても豪華出演陣。ハリウッドのベテラン俳優アレック・ボールドウィンをはじめ、『ライフ・イズ・ビューティフル』でアカデミー賞を賑わせたロベルト・ベニーニ、『それでも恋するバルセロナ』に続き、アレン作品二度目の出演となるペネロペ・クルス、『ソーシャル・ネットワーク』で一躍有名となったジェシー・アイゼンバーグ、『ジュノ』のエレン・ペイジ……。
もうっ、多すぎて書ききれない! スターの名前を見るだけで十分お腹いっぱいになる、なんともスペシャルなキャスティングなのです。

ストーリー

 イケメン弁護士と婚約した娘に会いに、元オペラ演出家の父ジェリー(ウディ・アレン)は妻フィリス(ジュディ・デイヴィス)とローマにやって来る。そこでジェリーは娘の婚約相手の父ジャンカルロ(ファビオ・アルミリアート)の歌の才能に気付き、彼とともにオペラ界への復帰を企てるが、彼はシャワー中でしか美声を発揮できないことが発覚して…。
ピュアな新婚カップルのアントニオ(アレッサンドロ・ティベリ)とミリー(アレッサンドラ・マストロナル)。ミリーが外出中、アントニオのもとに人違いで派遣されてきたコールガールのアンナ(ペネロペ・クルス)が……。一方、ミリーは映画撮影中のスター俳優サルタ(アントニオ・アルバネーゼ)に色目を使われ、食事に誘われる。
 建築士志望の青年ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)は恋人と一緒に暮らしている。しかし、恋人の親友である売れない女優モニカ(エレン・ペイジ)の小悪魔っぷりに負け、恋に落ちてしまい…。
平凡な中年男レオポルド(ロベルト・ベニーニ)は、優しい妻と二人の子どもと穏やかに暮らしていた。だが、ある朝をきっかけになぜか大勢のパパラッチが彼を取り囲み、一躍大スターに。どこに行ってもカメラに狙われ、サインをねだられ、美女に近寄られるはめに。

 以上、4つの群像劇がローマ中を駆け巡る。
それぞれの人生には、一体どのような展開が待ち構えているのでしょうか。


ローマの美しい観光地が、ウディ・アレン流のシニカルな笑いに侵食される

ローマでアモーレ ウディ・アレン アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス ジュディ・デイビス ジェシー・アイゼンバーグ エレン・ペイジ ロングライド
©GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo by Philippe Antonello

 お決まりの作風で毎回異なる刺激を与えてくれるアレン作品。今回は何も考えずにずっと笑えるコメディ要素に徹している。
突然有名になったレオポルドがマスコミに「今日の朝食は?」と尋ねられ、「トーストふた切れ」って平凡に答えたらテレビで『トーストふた切れ!』って大々的に取り上げられる。
たしかに大袈裟な報道なんてテレビでは日常茶飯事。笑いながらハッとさせられることが多いのです。

 そして注目して欲しいのが、ローマの美しい風景の数々。ポポロ広場、コロッセオ、トレヴィの泉、ボルゲーゼ公園などローマのロケーションを存分に発揮。
でもなんか最近、アレン作品はバルセロナとかロンドンとかパリとか海外が多く、この人ただ老後の旅がしたいだけじゃないの? 職権乱用? とも思われそうだけどご安心ください。しっかりと面白い映画作ってます。

 まず、キャスティングのセンスが面白い。ジェシー・アイゼンバーグにずっと寄り添うアレック・ボールドウィンなんて誰が思いつくのか。渋さの無駄遣いです。
さらに、ジャンカルロを演じるのが音楽界で最も有名なテノール歌手、ファビオ・アルミリアートなんだから贅沢!
なのに、本格的なテノールの美声がシャワーの「ジャーー」に混じって美声が轟くんだからシュール極まりない。でもその一方で、ほんの些細な日常こそが幸せであることを教えてくれたりもするのです。

 アレン本人も『タロットカード殺人事件』以来6年ぶりに自ら出演。
頭でっかちで神経質なキャラクターがいつまで経っても変わらないのは、往年の映画ファンにとっても安心できるのでは。

名声なんていらねえよ、ローマ

ローマでアモーレ ウディ・アレン アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス ジュディ・デイビス ジェシー・アイゼンバーグ エレン・ペイジ ロングライド
©GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo by Philippe Antonello

 この映画で描かれるのは、あらゆる“名声”とそれに運命を左右される人々です。
分かりやすいのは、レオポルドの生活の変わり様。これまで十分幸せに暮らしていたのに、有名人になった途端、プライバシーは侵害され、ストレスが溜まる日々に。
でも、美女には喜んでしまうのが男の悲しい性。で、人気が無くなったらあっけなく忘れ去られちゃうんです。

 終盤、小悪魔女子モニカがあっけなく名声にすがりつく姿。これにはジャックだけでなく、観る人すべての開いた口が塞がらないでしょう。でもその口は大きく開いたまま、絶え間なく笑い声を吐き出す。情けなくも“名声”に翻弄される人々に吹き出してしまうんです。
“名声”が提供する人生はあっけない。
サラッと注目されてコロッと忘れ去る。残酷なくらい、人々は次の話題に移り変わる。
ここでアレンの観察眼が鋭く光る。恋も人生も、“名声”でいとも簡単に変わってしまうことのおかしさをラブコメディに盛り込んでいる。

 有名人なんて気軽に外に出歩けない。そんな自由が利かない生活で、恋と人生を謳歌できるのか。
週刊誌には男友達と二人で歩いているだけなのに『不倫』だとか、夜食買うために化粧せずにコンビニ行っただけで『劣化』だとか。ほんと煩わしいったらありゃしない。有名人が決していいものとは限らないのです。

 4つの物語で起きる数々のスキャンダルを、まるで週刊誌のページをパラパラとめくるように小刻みに見せてくれる。
ボーッとしていたら横からわき腹を突いてくる。くすぐられるように笑わされる。
そして、その週刊誌のページの末尾に書かれているのはハッピーエンドなのだろうか。
それは映画のラストシーンで確認してください。

 ウディ・アレンは分かってる。人間、名声も地位もそれほど必要ないってことを。
あ、でもやっぱり注目されたいけどさ、ってことも。うん、でもやっぱりイケメンや美女に囲まれたいな、ってことも。
って結局どっちなんだよ、ってことも。
この映画に笑えるなら、あなたも大体分かってる。本当の幸せとは何たるかを。
ジャンカルロみたいにシャワー中にフフフ~ン♪と優雅に歌ってることこそが、何よりも幸せであることを。

ローマでアモーレ ウディ・アレン アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス ジュディ・デイビス ジェシー・アイゼンバーグ エレン・ペイジ ロングライド
©GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo by Philippe Antonello


6月8日(土)より、新宿ピカデリー&Bunkamuraル・シネマ他にて全国ロードショー!

監督:ウディ・アレン
キャスト:ウディ・アレン、アレック・ボールドウィン、ロベルト・ベニーニ、ペネロペ・クルス、ジュディ・デイビス、ジェシー・アイゼンバーグ、エレン・ペイジ
配給:ロングライド
原題:To Rome with Love/2012年/アメリカ・イタリア・スペイン合作映画/101分
URL:映画『ローマでアモーレ』公式サイト


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たけうちんぐ
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