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  • 2013.05.22

【女は外見ですべてが決まる?】ブスが恋する映画まとめ

 映画の中で愛し合うのは美男と美女。現実ではいつも鏡の前で溜息をつく。
「もうちょっと顔が良かったら、人生が変わっていたんじゃないか……?」
あーもう、鏡を叩き割りたい! その破片をバランスよく繋ぎ合わせて、美人に生まれ変われたら……。
顔に泣いて顔に笑う、そんなあなた必見! “女の顔にまつわる”映画3本を紹介します。

面食い男が体重136kgのブスに恋をした
『愛しのローズマリー』

 まず一本目は、『メリーに首ったけ』『ふたりにクギづけ』など過激なコメディで知られるファレリー兄弟監督のラブストーリー。
面食い男がブスに恋するお話です。

愛しのローズマリー
©2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

ストーリー

 「絶世の美女をモノにしろ」という父親の遺言によって美女しか恋愛対象にできないでいるハル(ジャック・ブラック)は、精神治療医に催眠術をかけられて“女の内面の美が見える”ようになる。

ある日、スタイル抜群の絶世の美女ローズマリー(グウィネス・パルトロウ)に出会う。しかし実際は彼女、体重136kgのブスだった……。

ブス描写が容赦ない!

 ハルの目に、ローズマリーは色気漂うスレンダー美女に見える。だけどプールに飛び込むと水がバシャーーン! 脱ぐと巨大なパンツがファッサーーン! そんな周囲の真実の目とのギャップがいちいち笑いを誘います。
でも、彼女にとっては全然笑えない。座っただけでイスを壊すのも、別に笑わそうとは思っていないから。

 ファレリー兄弟監督が繰り出すネタの数々は、ブスにとにかく失礼。世間から“醜い”とされている人の現状を残酷なまでにリアルに切り取り、これがブスに定められた運命なのだと、容赦なく叩き付けてきます。
だからこそ、生まれて初めて男性に色目を使ってもらえたローズマリーがハルに感謝するシーンに、彼女の切実さを感じ、胸にジーンと響くのです。

美は、見る人の目に宿る?

 本作で最もユーモラスに描かれているのは、周囲がハルを狂人扱いするところ。彼らはローズマリーに直接“ブス”なんて言葉は投げかけないけど、ハルに「頭がおかしくなったのか?」と尋ねる時点で“ブス”以上に失礼なのです。
でも、本人に美しく見えたら別にいいんじゃないでしょうか?

 人の目を気にして恋愛をする必要なんてない。
普段私たちは他人の恋愛を見るときに金、地位、外見などどれほど色眼鏡が入っているのでしょう。そりゃあすべて重要な要素だけど、自分にとって本当に必要な人がその眼鏡のせいで曇って見えたら勿体ないです。
ローズマリーは心優しい女性。ハルは彼女を必死に追いかけます。これほどまでの純愛はありません。
美の価値観なんて誰が決めた? この映画を観ると本当に“醜い”ものが何なのかが分かるかも。

愛しのローズマリー

『愛しのローズマリー』ブルーレイ
2012年2月3日発売(発売中)
2012年4月4日レンタル開始(レンタル中)
価格:税込¥2,500
社名:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

冴えなくてモテないブスは整形で大成功?
『カンナさん大成功です!』

 こちらは体重95kg。でも舞台は“整形大国”韓国のショウビズ界だからもっと面倒くさい。
日本の同名人気コミックを映画化し、韓国で空前の大ヒットを記録したラブコメディです。

カンナさん大成功です!
©2007 KM Culture co, ltd All Rights Reserved/KM

ストーリー

 歌手のカンナ(キム・アジュン)は誰もが聞き惚れる歌の才能があるのに、体重が95kgのブス。音楽プロデューサーのサンジュン(チュ・ジンモ)への恋も、想いを伝えられず殻に閉じ篭る日々。
そんなある日、思い切って全身を整形する。誰もが振り返る美女に生まれ変わったカンナは、自分を偽り“ジェニー”という名でサンジュンの目の前に現れ、歌手として成功していくが……。

誰だって好きな人に好かれたい…!

 カンナはイケメンプロデューサー・サンジュンをいつもこっそり観察し、ちょっと優しくされただけで天にも昇る幸せを感じる。そんなピュアな恋心が、まさかの全身整形を駆り立ててしまう……。
美女に変身したカンナが見る景色は、整形前と一変する。これが痛快です。 交通事故を起こしても優しくされ、駆けつけた警察すら親切。そして歌手としても大きく羽ばたいていく……。

 外見ってやっぱり重要なんだ! と思わずにはいられない世界の変動。それがあまりにも分かりやすくて笑っちゃいます。しかし、だからといって恋も上手くいくとは限らない。ただ好きな人に好かれたいだけなのに……。
“美しい=幸せ”とはならない運命が、カンナを待ち構えているのです。

「美しい女はブランド品。普通の女は既製品。あんたは……返品よ」

 これはブス時代、カンナが友人に投げかけられた言葉。やがて“ブランド品”になるカンナですが、“ブランド品”が必ず買われる保障はどこにもない。
この映画で問題視されているのは整形ではありません。他人にウソをつくことなのです。
名前を偽り、自分を捨て、更には痴呆症の父親の存在を隠して生きることが、カンナ自身を苦しめます。人の気持ちは騙せても、自分を騙すことはできないのです。
この「自分らしく」という普遍的なテーマは誰の心にも留まるはず。自分を失った人は、たとえ成功しても、それが自分の成功にはならないのです。

 クライマックスで、人気スターとなったカンナが多くの聴衆の前で独白するシーンには心をえぐられます。顔がウソでもその涙がホントだから、こちらもホントの涙を流してしまうのです。
“返品”にだって大成功の可能性はある。そんな希望を抱かせる作品です。

カンナさん大成功です!

『カンナさん大成功です!』特別版(2枚組)DVD
価格:¥3,980(税込)
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ

美とプライドに執着した女の最終地点はあまりにも惨たらしい
『ヘルター・スケルター』

 最後に紹介するのは、もはや誰もがご存知であろう本作。
岡崎京子の同名コミックを蜷川実花監督が圧倒的な極彩色で映画化した、このテーマには絶対に欠かせないグロテスクで繊細な物語です。

ヘルタースケルター
©2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会 ©岡崎京子/祥伝社

ストーリー

 トップモデルのりりこ(沢尻エリカ)は若者のカリスマ。“今、なりたい顔ナンバーワン”として雑誌やテレビに引っ張りだこの彼女だが、その正体は全身整形。つぎはぎだらけの身体は蝕み始め、ライバルのモデルが出現したことから彼女の精神が歪んでいく。
幻覚に苦しみ、それでも美に執着するりりこの運命とは――。

その身体の成分、100%がプライド

 人気を保つために、カリスマであるために、身を滅ぼしてまで美にこだわるりりこはとにかく痛々しくて、見ていられない。
若さが時限爆弾であるかのように、りりこの秒針はカチコチと早まってていく。それでも欲望に従順なりりこになぜか惹かれてしまうのは、時折少女のように泣き崩れる姿に彼女の本性が見えてくるからなのかも知れない。
蜷川実花特有の美しい極彩色がこの惨たらしい物語をフォローしてくれるかと思いきや、なぜかより一層生々しくグロテスクに映ります。

 りりこが好む、流血のような赤色は、まさに彼女に流れる血そのもの。彼女はウソを隠すために、唯一のホンモノである体内の血に似た赤色をまとうのです。
終盤に流れる、見事なまでに鮮やかなホンモノの血には、思わず言葉を無くしました。その鮮烈な赤い映像は、まるで自分の血を見ているかのような錯覚を起こさせたのです。

誰もが“美”にこだわって生きている

 誰だって女に生まれた以上は愛されたい。人に見られたい。自分よりちやほやされている女がいたら悔しい。
自分の存在が希薄になるにつれ、気が狂ったように人に怒りをぶつけるりりこ。でも、実はそれほどおかしい女じゃないかもしれない。
幾度となく挿入される渋谷の女子高生たちのカット。流行の雑誌に群がり、噂話に花を咲かせ、プリクラを撮る。毎日のアイメイク。つけまつげ。プリクラの目デカ効果。その大きくなりすぎた目だって、りりこと同じ肥大したプライドだ、というのは言いすぎでしょうか。

 りりこが死ぬ気で追い求めた“美”はあっという間に忘れ去られ、いつしかみんな新しい美に興味を移らせる。流行は残酷。そんなものに執着するのはバカげていると思っても、りりこの姿はどこにでもいる美にこだわりが強い女たちを映す映鏡になっているのです。
崩壊していくりりこの姿を笑える女性は、きっと一人もいないのではないでしょうか。

ヘルタースケルター

『ヘルタースケルター』 スペシャル・エディション(2枚組)
価格 4,095円 (税込)
販売元:ハピネット

 以上、女の顔にまつわる映画三本を紹介しました。
「超冷たいけどイケメンの人か、ブサイクだけど超優しい人。付き合うならどっち?」
友達とよく、こういった究極の二択を出し合ったりすることがあると思います。
人間はその2択だけじゃないからこそ、これらの映画は何択にも広がる価値観と美を提示します。
その一部はちょっとした美談に思えるかも知れない。顔が良いほうが得するに決まっています。
だけど、その“得”の先の先を描いてくれる映画はさすがです。人生では、その先の先を今のところ見せてくれませんから。

 それを見届けたところで、「女は顔が命なのか?」という問題に改めてあなたらしい答えを出していただければ幸いです。

Text/たけうちんぐ

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ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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