あなたはこれを愛と呼べますか?『私が、生きる肌』

 愛に狂わされた形成外科医と、彼に監禁されて囚われの身の美しきヒロインを描く問題作がついに日本上陸です。
本作は、『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール〈帰郷〉』の“女性賛歌3部作”を始め、バイタリティ豊かな愛の物語を次々と世に送り出しているペドロ・アルモドバル監督の最新作です。
彼と1989年『アタメ』以来のコラボレーションとなるアントニオ・バンデラスが主演を務め、無表情の裏に渦巻く鬼気迫る激情を感じさせ、観る者を終始圧倒します。

 人工皮膚の開発に没頭する天才形成外科医ロベル(アントニオ・バンデラス)は、一人の女性を幽閉していた。
彼女の名はベラ(エレナ・アナヤ)。謎めいた雰囲気を漂わせ、しなやかな肢体に肌色のボディストッキングをまとい、ヨガの瞑想に耽っている。
 ロベルは、かつて非業の死を遂げた最愛の妻を救えるはずだった“完璧な肌”の創造を夢見るあまり、あらゆる良心の呵責を失い、ベラを実験台にする。
なんと、開発中の人工皮膚を移植し、亡き妻そっくりの女性へと創り上げていたのだ。
 果たして、ベラは一体何者で、どのような宿命でロベルと巡り合ったのか。そして、二人の”愛”の結末はいかに――?

 全編、官能的な映像美に酔いしれ、そして本作の最も重要な“肌”を惜しげもなく晒すエレナ・アナヤの美しい身体に見とれてしまいます。
さらに、ある人物を失ってしまった妻そっくりに仕立て上げたロベルの悲しくも深い愛には、誰しもが考えさせられるでしょう。
あなたは愛した人とは別人でも、外見がそっくりであれば愛することはできますか?
まるで、”愛”とは一体何なのか、という難題を突きつけられるようです。
アルモドバル監督の集大成的な作品ともいえる本作。ぜひご自身の目で見届けてください。

5月26日(土)よりTOHOシネマズシャンテ、シネマライズ他、全国順次ロードショー

監督:ペドロ・アルモドバル
キャスト:アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス、ジャン・コルネット、ロベルト・アラモ、ブランカ・スアレス、スシ・サンチェス
配給:ブロードメディア・スタジオ
原題:La piel que habito/2011年/スペイン映画/120分

Text/Michihiro Takeuchi