グザヴィエ・ドラン最新作!「もうすぐ死ぬ」と告げる主人公と家族『たかが世界の終わり』

たけうちんぐ 映画 たかが世界の終わり グザヴィエ・ドラン マリオン・コティヤール レア・セドゥー ヴァンサン・カッセル Shayne Laverdière, Sons of Manual

 悲しみ、喜び、怒り、歓び。日々ニュースで人を殺めたり、人を楽しませる感情の源はどこにあるのか。その答えが分かっていながらも、愛すべき人を愛することができず、またその愛を上手く伝えられなかったりする。
本作の主人公・ルイの家族もその例外ではなく、不器用な愛で次男を迎え入れ、その答えを有耶無耶にしていく。

『Mommy マミー』『わたしはロランス』などで世界中の映画ファンを次々と騒がし続けるグザヴィエ・ドラン監督の最新作。
『エディット・ピアフ 愛の賛歌』のマリオン・コティヤール、『アデル、ブルーは熱い色』のレア・セドゥー、『美女と野獣』のヴァンサン・カッセルなど実力派を揃えた今作が映し出すのは、愛し愛されることにおいてのディスコミュニケーション。つまり、“修羅場”がここに描かれ描かれている。

ワン・シチュエーション劇の閉塞感から逃れられない

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「もうすぐ死ぬ」なんて言われたら、誰もが見向き、誰もが振り返らずにはいられない。だが、ルイは全くそれが切り出せない。饒舌な家族をただ無口で見つめる。口元を緩めたり、歪めたり、時に力んだり。
ルイに憧れる妹・シュザンヌ、敬語で話しかけてくる兄嫁・カトリーヌ、とにかく不器用な母・マルティーヌ、ルイに面倒臭い劣等感を抱く兄アントワーヌ。それぞれのクローズアップが息苦しく映り、窒息死に至りそうなほどルイの口数を減らす。

 なんてことはない他愛の会話でも、グザヴィエ・ドランはそこが地獄であるように演出する。重苦しい重低音と無音を繰り返す様は、まるで本当に世界が終わるかのようだ。ルイはただ存在しているだけの空虚なアイコンとして、家族が掻き回していく。

 ほとんどが実家の中で繰り広げられるワン・シチュエーション劇の閉塞感。全員が確実に愛を持っているはずなのに、すれ違いが続く。そのやるせなさに逃げ場がなく、続いていく修羅場に息を飲む。