フランス産ジブリ最新作!漂流した島で出会った女性…彼女は誰?『レッドタートル ある島の物語』

たけうちんぐ レッドタートル ある島の物語 スタジオジブリ マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット 鈴木敏夫 高畑勲 東宝

 いくら不自由に感じても、コンビニのない無人島に足元にも及ばない。
いくら孤独を感じても、この男には敵わない。

 ある日、救世主が現れる。無人島に漂流した孤独な男を唯一救い出す、その存在とは?
生まれて死ぬまで、人はどこから来て、どこに辿りつくのか。男女が出会い、子どもを産み、命が絶えるまで。
“人生”という深遠なるテーマの答えがここで垣間見れるかもしれない。

 オランダのアニメーション監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが、8年の歳月をかけて完成させた初の長編作品。スタジオジブリが初となる海外作家の映画製作に参加し、本作は第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で特別賞を受賞。
全編セリフを排除。感情豊かなキャラクターは一切いない。ジブリの挑戦的な作風に思わず唸る。

究極の普遍性をもたらす“正体不明の男”

たけうちんぐ レッドタートル ある島の物語 スタジオジブリ マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット 鈴木敏夫 高畑勲 東宝

 この男は一体何なのか、どこから来たのか。そもそも誰なのか。どこの国から来て、どうして漂流しているのか。物語が進むにつれて明かされることもなく、人物設定の“5W1H”を完全に失くしている。
このようにプロフィールが全く説明されないことで、究極の普遍性をもたらす。

 無人島に辿り着いた男に及ばずとも、救いの手がなくて孤独を感じる夜を過ごした人はいるだろう。昼はカラー、夜はモノクロ。失くした色彩が男の心象風景のように感じる。何度も夢を見て、その夢に誘われるように無人島からの脱出を何度も試みる。そして何度も失敗する。それでも挫けずに立ち向かう。

 言葉は無くても、この男の置かれた状況にただ応援してしまう。どこか見覚えがあるからだ。一人でもがき苦しむ姿に自己投影し、ようやく現れた“救世主”を心から讃えてしまう。