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  • 2016.05.27

クドカン節炸裂!会いたい人に会えない地獄『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』

好きな子にキスもしてないのに死んでしまった! 未練を残して命を落とした高校生男子が地獄でロックバンドを結成し、あの世から現世へ想いを馳せる——。宮藤官九郎監督が長瀬智也×神木隆之介で描く異色の青春コメディ。

「死んだらどうなる?」この想像をもう何度したのだろう。
死はいつでもどこでも入り口がある。こんなにも身近なのに、その先に何があるか誰も知らない。

 未練を残して死にたくない。好きな人にきちんと気持ちを伝えてから死にたい。と、死について語るとシリアスになりがち。

 でも、この映画はそうさせない。真剣に考えるのが恥ずかしくなるくらい笑い飛ばしてくれる。
それも地獄の底から、ロックバンドの爆音とともに!

たけうちんぐ 映画 『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』 宮藤官九郎 長瀬智也 神木隆之介
© 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation

 NHKの朝ドラ『あまちゃん』や現在放映中の『ゆとりですがなにか』など、数多くの人気テレビドラマの脚本を手掛ける宮藤官九郎監督の最新作。
長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、森川葵、桐谷健太、古田新太といったバラエティに富んだ出演陣を“クドカンワールド”に引きずり込む。

 テレビ以上にスピード感溢れる台詞回しと自由度の高い演出で、恐ろしいイメージの“地獄”がシュールで笑いに満ちた世界に生まれ変わる。
この中に一度入ってしまったら、もう二度と現世に帰って来れなくなる。
ある意味、笑いの地獄です。

輪廻転生で現世とあの世を行き来する!
前代未聞のアドベンチャー

たけうちんぐ 映画 『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』 宮藤官九郎 長瀬智也 神木隆之介
© 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation

 針の山を歩かされる。閻魔様に舌を抜かれる。灼熱の釜で焼かれる。……地獄は恐ろしいイメージばかり。
でも、この地獄は違う。
バンドが演奏してるし。モッシュとかダイブしてるし。終わったら物販してるし。
こんなに楽しい地獄があっていいのでしょうか。

 舞台は地獄に限らず、輪廻転生することで現世とあの世を行き来する。
閻魔様に“畜生”のハンコを押されることで大助(神木隆之介)は様々な動物に生まれ変わり、何度も現世に舞い戻ってくる。
その動物のバリエーションと大助の声の吹き替えがなんとも可愛らしく、ソフトバンク犬のような、はたまたディズニーアニメのような。

 映画の形式にとらわれず、時折コントにもバラエティにも音楽番組にも変身する作風でクドカン節が猛炸裂する。それもCGを使わず、すべて一つのセットで撮影されたからこそ。
演劇のような生々しい空気感が現実離れした世界観とあいまって、一切制約のない演出の自由度が楽しくてしょうがない。

 小ネタに次ぐ小ネタで、125分間ノンストップで笑わせ続ける。
最初は正直、地獄のノリについていけなかった。大助の視点に寄り添うように、突如としてやって来た地獄に場慣れするのに時間がかかる。
それでも、ロックバンド“地獄図(ヘルズ)”の赤鬼・キラーK(長瀬智也)の現世での過去が明るみになると「あ、そっか全員死んでるんだ」って事実を目の当たりにし、登場人物に親近感を抱くことで作品の根底に潜む切ないテーマに気付く

 大助のひろ美への恋心と、キラーKの元恋人との思い出。物語は二人の未練が軸となる
この二つが音楽によってシンクロすることで、次第に笑いから涙に切り替わってくるのです。

「あなたがいれば そこは天国
あなたがいない そこは地獄」

たけうちんぐ 映画 『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』 宮藤官九郎 長瀬智也 神木隆之介
© 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation

 死ぬのは誰だって怖い。
どこに行き着くのか分からないし、天国や地獄だって本当にあるのか誰も知らない。
と、“死”にはシリアスな感情が付き物だが、ここまで笑い飛ばしてくれると残された人や、これからあの世に行く人にとって気持ちが少し和らぐのかもしれない。

 天国も地獄もその概念は場所を指すのではなく、会いたい人に会えるかどうかだ。
本作のテーマソング『天国』の歌詞が胸を打つ。

「あなたがいれば そこは天国 あなたがいない そこは地獄」

 大助とキラーKが地獄という場所に苦しむ描写はなく、それよりもひろ美と元恋人に会えないことが何よりも辛いことだと描いている。

 地獄のディテールにリアリティを追求するのではなく、人と人との繋がりに笑いを交えて描くのが宮藤官九郎らしい。
彼が脚本を手がけたドラマ『木更津キャッツアイ』も主人公が余命半年という“死”が根底にあるにもかかわらず、照れ隠しのように終始笑いに包まれている。
クドカン作品は感動のゴリ押しを一切しない。どこかで笑いを取ろうとするスタイルが逆に泣かせてくる。
家族や友人や恋人との関係性を重点的に描くことの核心は、人生賛歌のような気がしてならない

 いくら天国や地獄が楽しくても、もう二度と会えない人がいる。その事実を目の当たりにした時、多くの人は今生きている実感をする。
会いたい人に会える、それ以上の天国はないだろう。
映画を観終わった帰り道、ふと好きな人に会いたくなってしまいます。

 天国とは何か、地獄とは何か。大助とキラーKを見ていると、その答えが少しずつ分かってくる。
大切な人がいる限り、この世だって天国にも地獄にも変わる。

 本心を隠してかっこつけたり、恥ずかしがってる場合じゃない。死んだら全部おしまいなのだ
会いたい人に会えるうちに、伝えたいことをちゃんと伝えたい。
この“地獄”を観た後は、悔いのないように日々を過ごしたくなることでしょう。

ストーリー

 大助(神木隆之介)は片想いしている同級生のひろ美(森川葵)に想いを告げようと、修学旅行に全力を注いでいた。
だが、彼らを乗せたバスが事故に遭ってしまって命を落とす。
ふと目が覚めると、辺り一面炎が渦巻く中で人々が苦しめられている光景が。
そこはなんと地獄だった。

 ひろ美への未練を残した大助の前に、地獄農業高校の軽音楽部顧問にしてロックバンド“地獄図(ヘルズ)”の赤鬼・キラーK(長瀬智也)が現れる。
やがて大助はひろ美ともう一度会うために、キラーKの厳しい特訓のもと地獄めぐりを始めることに――。

6月25日(土)全国ロードショー

監督・脚本:宮藤官九郎
キャスト:長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、森川葵
配給:東宝=アスミック・エース
2016年/日本映画/125分
URL:『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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たけうちんぐ
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