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  • 2016.04.22

昼と夜に分かれた近未来…あなたはどちら側の人間ですか?『太陽』

ウィルスにより人類の大半が死滅した近未来。人類は太陽の下で貧しく暮らすキュリオ(旧人類)と、太陽の光に弱く夜にしか生きられないノクス(新人類)に分かれてしまう——様々な演劇賞を受賞した傑作SF舞台を神木隆之介×門脇麦で映画化!

たけうちんぐ 映画 太陽 入江悠 前川知大 神木隆之介 劇団イキウメ
©2015「太陽」製作委員会

 貧しい暮らしだが、太陽がある。裕福に暮らせるが、太陽がない。この2つから選択するとしたら、どちらにする?

 正直、私なら後者を選んでしまう。(大体普段から昼夜逆転してるし…)なんて個人的な事情は置いといて、お金に困ることなく生きるための環境が整った暮らしがあれば、太陽なんて要らない。

 だけど、本作はそうさせない。太陽とそう簡単に縁を切れない。そこに人と人との絆がある限り、真の豊かさとは何かを訴えかけてくる。

 原作は2011年に劇団イキウメによって上演された劇作家・演出家の前川知大による同名舞台。この普遍的なテーマに内包された斬新さと面白さに惚れ込み、映画化を熱望したのは『SR サイタマノラッパー』シリーズや『ジョーカー・ゲーム』で知られる入江悠監督。

『桐島、部活やめるってよ』『バクマン。』など話題作の出演が続く神木隆之介、『愛の渦』で一躍注目を浴びた期待の実力派女優の門脇麦が太陽の下で暮らすキュリオを演じ、古川雄輝、古館寛治、綾田俊樹、水田航生、村上淳といった個性豊かな面々が名を連ねている。

       

荒唐無稽のようで“人間らしさ”に満ち溢れた世界観

       
たけうちんぐ 映画 太陽 入江悠 前川知大 神木隆之介 劇団イキウメ
©2015「太陽」製作委員会

 人類が昼と夜で分けられるなんて。トンデモSF設定を荒唐無稽に思うかもしれないが、これは紛れもなく“人間らしさ”を描いた作品。土の臭いや人肌の温もりから、ファンタジーとはかけ離れた生々しさで攻めてくる。

 旧人類・キュリオは太陽の下でいわゆる“人間らしい”生活を送っているが、新人類・ノクスもまたエネルギーに頼って暮らす現代に生きる我々の写し鏡のようになっている。
現実味がないようで、どちらも今我々が生きているこの世界を真正面から描いているような感触に気づく。

 その感触をより強めるのは、作品で描かれる2つの関係性だ。それは草一と結の「父と娘」の物語、鉄彦と森繁の「キュリオとノクス」の物語

 草一は不器用ながらも結に愛情を注ごうとする。娘の幸せを願うがあまり、結がキュリオで居続けることに激しく葛藤する。それはまるで子離れできない父のように、はたまた嫁がせる父のようにさえ見える。
一方で、鉄彦と森繁は友情を育み、ともに日本中を旅する計画を立てる。分断されていたキュリオとノクス同士が心を通わせることに、不明瞭な未来に希望を見出させてくれる。

 それぞれの関係性は、血の通う人間なら誰もが無視できない。彼らを軸として、家族の物語と青春ドラマを何度も行き来する。その2つが交わり昼と夜が一つになる時に、物語は急速に変化していく。

 

キュリオは太陽でノクスは月?
現代版おとぎ話が問いかけるもの

たけうちんぐ 映画 太陽 入江悠 前川知大 神木隆之介 劇団イキウメ
©2015「太陽」製作委員会

たけうちんぐ 映画 太陽 入江悠 前川知大 神木隆之介 劇団イキウメ
©2015「太陽」製作委員会

 舞台版は抽象的な描写で通用しても、映画版は具体化しなければ説得力がない。が、その第一ハードルは余裕で飛び越えている。たとえば、日の出を知らせるサイレンや、まるで国境のように厳重なゲートもそのディテールがシュールにも恐怖にも見え、独特な世界観にズブズブと入り込んでしまう。

 観ていると、自分がキュリオとノクスのどちら側の人間として生きているか考えてしまう。深遠なテーマがずっと根底に流れているから、現代のおとぎ話のように思えてくる。

 キュリオとノクスの関係性が意味するもの。それは、田舎と都会、貧困層と富裕層、過去と未来…と、その対比はあらゆるものに置き換えられ、我々が普段から慣れ親しんでいるものの隠喩にさえ感じられる。
自給自足で田んぼを耕して暮らすキュリオは、自ら光を生み出す太陽。一方、常に科学や文明に頼っているノクスは、自ら光を発さない、常に照らされている月に思えてくる。

 ただ、そこで重要なのは人と人の繋がりだ。
草一と結、鉄彦と森繁のように、太陽が月に裏返ったとしても変わらない関係性こそが、太陽と月の下で暮らす我々に生きることとは何か、“人間らしさ”とは何かを問いかけてくる。

 太陽は当たり前のように存在する。が、その“当たり前”が脅かされる可能性は、自然災害やテロなど、現代にはいくつも潜んでいる。
ある日時、昼と夜の2つに分かれてしまうような“当たり前”がひっくり返る事態に直面した時に、誰の顔を思い浮かべるでしょうか。
人と人とを繋ぐその関係性が『太陽』に全部描かれています。

       

ストーリー

       

 21世紀初頭、ウィルスの感染で人口は激減し、生き残った人類は二つに分断されることになった。ウィルスを克服し心身ともに進化しながらも、太陽の下で生きられない新人類=ノクス。もう片方は、太陽の下で自由に生きられるものの、ノクスに管理されながら貧しい暮らしを余儀なくされる旧人類=キュリオ

 ある日、村でノクスの駐在員をキュリオの男が惨殺する事件により、経済制裁を受けることになる。その10年後、村の若者・鉄彦(神木隆之介)は生活に息苦しさを感じながら鬱屈とした日々を送っていた。
一方、幼馴染の結(門脇麦)は自分と父・草一(古館寛治)を捨ててノクスへと転換手術した母を憎みながら、キュリオの復権を祈っていた。

 鉄彦はノクスの駐在員・森繁(古川雄輝)と仲良くなり、再開されたノクスへの転換手術に応募したことで豊かな生活を夢見ていた。だが、そんな中で10年前に事件を起こし逃亡していた鉄彦の叔父・克哉(村上淳)が村に帰ってくる。
村は不穏な空気に包まれ、鉄彦と結はある深刻な事態に直面する――。

4月23日(土)、角川シネマ新宿ほか全国ロードショー

監督:入江悠
原作:前川知大「太陽」
キャスト:神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、綾田俊樹、水田航生、高橋和也、森口瑤子
配給:KADOKAWA
2016年/日本映画/129分
公式サイト:『太陽』


Text/たけうちんぐ

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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